【異世界しっこく日記】一筋の光はローションカーリングだった【にじさんじ】
私は、温度はなく感覚もない暗闇で、異世界から流れてくる漂流物にまみれながら、ただ浮かんでいる。
漂流物の中から気になったゲームを見つけては遊んでみる。どんな仕組みでインターネットが使えているのかは謎だが、手に入れたパソコンでそちらの世界の情報を集めては、目を閉じる。
異世界のものに触れてみれば、漆黒に染ってしまった私の鎧は元に戻るかもしれない。この暗闇から出られるかもしれない。その望みを胸に、もう何十年……何百年とこの生活を続けている。
最近の話をすると、あまり新しいゲームが流れてこないので、一度は掴みかけた温かな感情を失ってしまっていたが、そんなある日一筋の光が差し込んだ。
プレイしたゲームについて調べていたとき、「YouTube」というもので「ゲーム実況」というものをみられることがわかった。
実況……私の世界でも闘技場で実況する者はいた。しかしゲームで実況とは。自分で動かしながら自分で実況するというのか。異世界人はなぜこうも面白いことを思いつくのだろう。
気がつけば私は「YouTube」というものに手を出していた。
そして出会ってしまったのだ。
VTuber というものに。
暗闇に眩しすぎる彩り
VTuber
バーチャルYouTuberの略称だそうだな。
バーチャルとは、実態を伴わない様を指すらしい。そしてYouTuberとは、「YouTube」という動画のプラットフォームにて自主制作の動画を継続的に公開している者のことを指すそうだ。私の世界ではそのような言葉はなかったので、またひとつ勉強になった。
今そちらの世界では、VTuberという括りの配信者が沢山いると聞いた。
沢山のVTuberの動画を見てみたが、それぞれ違った特色があって面白い。
私のいる空間には色が無いが、彼らを見ていると、私の周りは絵の具で色を足したように華やかに色付いていく。
私が特に興味を持っている「にじさんじ」というVTuberグループは、非常に面白い者たちの集まり。君たちはもちろんにじさんじを知っているのだろうが、異世界文化に触れる私にとって、それぞれ個々の配信やコラボはもちろん、彼らの企画力は尊敬に値する。
全身を使って、ときには体も張り、我々視聴者を笑顔にしてくれるのだ。
暗闇にのまれてから、一度も笑ったことがなかった。
だが、彼らの動画を……特に、ローションカーリングを見た私は、気がつけば大声で笑っていたのだった。
美しすぎるエルフ
まず私が目を奪われたのは、1人のエルフのあまりにも美しすぎる姿である。
1stラウンドの冒頭2秒ほどに一瞬映る、あのエルフの立ち姿を見て欲しい。
あまりにも美しすぎるシルエットである。
かなりタイプだ。幼いころ私の初恋を奪った、村の角に住む散髪屋の娘にそっくりである。
私は一瞬で彼の虜になり、ハートを奪われてしまった。この写真を撮るために、スクリーンショットという技術を身につけたほどである。
短いメイド服から伸びる張りのある足。あえて全ては見せずに薄い茶色のベールで隠されたその足は、きっと多くの人間を虜にしたことだろう。
この瞬間から、私は今後花畑チャイカを応援する日々を送ることを胸に誓ったのだった。
見どころ満載の本編
裏切られたまぐろ舞元
これは、本企画の発案者である舞元啓介が、50点を獲得した叶をローションプールに叩き落すべく旅立つ瞬間である。
チームメイトの想いを背負って旅立つ彼の雄姿には涙を禁じ得ない。
国の軍隊に侵入し勝手に騎士をやっていたころ、舞元のように勇敢な戦士を見た。先陣を切って敵地へ乗り込み、果敢に相手を切り捨てていく。そのとき戦った国は、後に私が政府の役人と偽って入国した国である。その国が残り、前にいた国が降伏したことから、勇敢な彼がその後どうなったかは察してほしい。
舞元のこの表情を見てほしい。
なんと男らしい最期か。ローションの海へ帰ることを恐れず、前に組んだ手は微動だにしない。彼こそ男の中の男と呼ぶにふさわしいだろう。
チームメイトの心動かす、“漢”舞元
叶の裏切りを糧に、地獄から舞い戻った舞元。
チームのために点数を稼ぐべく、驚きの進化を見せる。
人間とは、追い込まれたときこそ人知を超えた力を発揮するもの。
人生で一度だけその瞬間を目にしたことがあるが、こんな形で再び人間の限界突破を見ることができるとは。あのときは戦場で生きることに必死な状態だったが、今回は全く違う。画面の前で笑いながら……全く真逆の状況である。
獣となった舞元はいったいどこまで私を笑わせてくれるのだろうか。
地獄へ一直線に駆け抜けたビースト舞元をチームメイトの二人が追いかけた場面には感動したものだ。
“漢”舞元の後ろ姿が、二人の心を動かしたのである!
かなうことならば、私も彼の背中を追って飛び出していきたい。
ローションの海へ!
魂の4点滑り
愛しのチャイカ、サービスショットである。
チャイカとよく似た私の初恋相手、散髪屋の娘のサービスショットを何度か狙ったことがあった。少し丈の短いスカートをはいている日には、ちょっと強めに風が吹かないものかと願ったりしたものだ。
普通に考えて気持ちが悪いので、よいこの君たちは真似してはいけないぞ。
そんな、かつてパンチラを狙っていた私に、堂々とすべてをさらけ出してくれるチャイカ。
そんな君も好きだ。
思い出のコロロトッコ
私の世界ではコロロトッコと呼ばれる変わった踊りがある。
剣が突き刺さった特殊な靴を履き、その靴で大地を踏み鳴らしながら酒に酔ったような足取りで踊るものだ。コロロとは踊りに使う特殊な靴の名称で、かつて神に仕えた戦士が履いていたものだと言われている。トッコは踊るときのあっちこっちへ行き来する足のことを指し、呪いをかける動きとされた。
コロロトッコは祭りや祝い事で披露された。
さて、なぜ今こんな話をしたかというと、「ジャンプをすれば」といってローション台を滑って行った剣持の足の動きが、まさにコロロトッコそのものだったからである。
動画でよく見てほしい。台から落ちる彼の足の動き、踏みしめる音、上半身の動きまで、すべて完璧なコロロトッコだ。
コロロトッコは、足の動きと上半身の動きどちらも完璧でなければ呪いとして成立しない。彼にはコロロトッコを踊る才能があるようだな。
この世界で漆黒騎士とは闇に落ちたもの全てを指す。
私の鎧が漆黒に染まり、忌み嫌われる漆黒騎士となってしまったとき、「浄化させる」「安らかに眠れ」と、周りに火を焚かれ、燃え盛る炎の中でコロロトッコの音を聞いた。
剣持のローションステップは、私の記憶の片隅にしまってあったコロロトッコを思い出させてくれた。
よく笑った場面
これは余談なのだが、私の世界では同性同士の恋愛結婚も認められている。ただし、条件付きでだ。
同性同士で結婚する際には、神の前で誓わされる。
そちらの世界でいう地獄へ落ちることの了承をさせられるわけだ。
同性同士で結婚した暁には、死んだあとその地獄で、尻の穴に熱して溶かされた鉄を流し込まれる。罰を受ける。
本当かどうかは知らないがね。
何が言いたいかというと、この奇跡の1枚は私の世界で誰かに見られでもしたら、誤解されて2人の尻穴が危ないということだ。おお怖い。
まあ異世界人には関係ない話なので心配するだけ無駄だろうがね。
長らく笑うことを忘れていた私に、笑顔を思い出させてくれたのは「ローションカーリング」という異世界の面白い文化だった。
にじさんじローションカーリング選手権は私の一筋の光となり、この暗闇を照らしてくれた。まだまだ私の周りの色は少ないけれど、異世界の面白い文化に触れ続けていれば、私はいつかこの暗闇を抜け出せるかもしれない。
主催の舞元啓介に感謝の意を示すとともに、この面白さを君たちにも共有し、私の今日の日記を終わりにする。
現在は活動を休止して体を休めているそうだな。ゆっくり休んで、いつかまた帰ってきてほしいと思う。また面白いものを見せてほしい。私の一筋の光なのだから。