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特別連載04 「How」を重視するデザインの学校。そのヒントはライザップにあった!?

Wab Design School 特別連載 第4回(全5回)

ワヴデザインの代表/クリエイティブディレクターの松本龍彦、同インフォメーションアーキテクト/UIデザイナーの渡邉大純が、オンラインスクール「Wab Design School」(以下WDS)開校の背景について語る特別連載。4回目となる今回のテーマは、“デザインジェネラリスト”の育成を掲げるWDSのカリキュラムについて。各コース最大4人までという少人数制グループレッスンによる超実践型プログラムを通じて、デザインの現場で使える“道具”を手に入れることを標榜するWDSのカリキュラムは、意外にもあの「ライザップ」がヒントになったとのこと。果たしてその真意とは?

[聞き手・構成・文]
原田優輝(Qonversations)


現場力を鍛える超実践型プログラム

ーデザインジェネラリストの育成を掲げるWab Design Schoolには、どんなカリキュラムが用意されているのですか?

渡邉:デザインスクールと聞くと、デッサンなどを通して表現力を磨いていくようなカリキュラムを想像される方も少なくないかもしれません。もちろん、WDSでもグラフィックデザインの基礎は押さえますが、美的な表現を追求するのではなく、あくまでも情報をわかりやすく伝えるためのスキルを育むことに主眼を置いています。要件の定義から表層のデザインまでを一気通貫で担うデザインジェネラリストの育成を目指すWDSのベースとなるのは、課題解決に必要な論理的思考や言語化能力を鍛えるプログラムです。心理学や情報整理、コミュニケーションの手法を学ぶ授業などがそれにあたりますが、これらは他のデザインスクールではあまり見られないものかもしれません。

松本:自分たちがブランディングやコンサルティングを手がけるデザインファームだからこそ、現場でいま求められているスキルを習得できるカリキュラムであることを重視しています。よくあるデザインスクールの課題として、架空のポスターのデザインなどがありますが、現代において我々の生活に密接なデザインというのは、ポスターよりもオンスクリーンメディアのアイコンやバナーだったりしますよね。それらを美的な観点から設計するのではなく、要件定義からしっかり行い、改善のために必要なことなどを議論していくような実践的な授業を行っていきます。

渡邉:WDSでは、実務で使える「道具」を手に入れることを目的にしているため、デザインの知識を学ぶ座学以上に、実践を重視したトレーニングをひたすら重ねる「筋トレ」的なプログラムを重視しています。また、座学に関しても単に理論を詰め込むのではなく、能動的に学んでもらう下地をつくることを意識しています。例えば、面白くてためになる池上彰さんのお話のように、関心を持って聞いていたらそれが学びの入り口になり、そこから各々がわからないこと、知りたいことを能動的に掘り下げていくような流れをつくりたいと考えています。


「座学」と「筋トレ」を往復する学び

ー「筋トレ」的なプログラムとは、具体的にはどんなものなのですか?

渡邉:ワヴデザインには、クライアントへのヒアリングをもとにプロジェクトの背景や目的、ターゲットなどの要件を明確にするための「デザイン要件定義書」というものがあるのですが、トレーニングではまずこれを記入することで要件を言語化してもらいます。この言語化の作業によって課題の深堀りができるため、デザインの精度は飛躍的に高まりますし、クライアントの依頼内容にはなかった“打ち手”が見えてくることもあるんですね。逆にこの工程を飛ばして手を動かし始めると、言われたことを形にするオペレーションしかできなくなってしまうんです。

ーまさに「デザインジェネラリスト」のスキルを身につける「筋トレ」ですね。

渡邉:はい。活躍している周囲のデザイナーを見ても、実務を重ねる中で自分なりの方法論を体系化してきた人が断然多いので、WDSでもそうした環境を再現したいと考えています。我々の最大の特徴は、何を教えるか(=「What」)ということ以上に、どう教えるか(=「How」)を重視している点にあって、それが「座学」(=インプット)と「筋トレ」(=アウトプット)を組み合わせた独自のカリキュラムなんです。

ー座学と筋トレを組み合わせることによってどんな効果が得られるのですか?

渡邉:人の成長プロセスには、「知識」「行動」「気づき」「技術」「習慣」という5つの壁があるという考え方があります。座学を通して「頭で覚える」ことによってまずは「知識の壁」を超えるのですが、それをいざ実践しようとすると思うようにできないこともあって、「行動の壁」にぶつかります。これをクリアするために筋トレが必要になるんです。そして、筋トレを重ねていくと、座学で学んだことはあくまでも基礎に過ぎなかったことに気づき、より能動的に学びを深めていくことで「気づきの壁」を超えられる。そこで得た学びを実践に移し、さらに「筋トレ」を続けて身体に覚えさせることで「習得の壁」を超え、さらにそれが身体に染み込んでいる状態、つまり「習慣の壁」の先に到達できるんです。

人の成長プロセスには5つの壁があるという考え方がある。
(仲山進也「楽天大学学長が教える「ビジネス頭」の磨き方」 サンマーク出版. 2010より)


フレームワーク至上主義の危険性

ー「頭で覚えること」と「身体で覚えること」の往復によって、デザインの「知識」が現場で使える「道具」になるわけですね。

松本:はい。WDSでは、固められたメソッドやフレームワークをインストールするのではなく、案件に応じて最適なアプローチを柔軟に選択できる人材を育てたいと考えています。例えば、クライアントへのヒアリングの際に、用意したインタビューシート通りに話を進めても、深い話が聞けないことがあるんですね。そこで必要になるのは、相手の表情やその場の状況に応じて聞き方を変えていくことで、要は理論やメソッドを自分なりに使いこなしていくことが肝なんです。

渡邉:デザインのメソッドやフレームワークというのは、あくまでも手段に過ぎないんですよね。例えば、ユーザーを理解するという目的が先にあって、それを達成するためにさまざまな手法がつくられてきたわけですよね。フレームワーク至上主義に陥らないように、なぜその手法が存在しているのかということをまずは理解してもらいたいと思っています。その上で、さまざまな手法があることを知識として知っておくとともに、実際にそれらを使った経験を持っておくことが、チームで仕事をする時などには活きてくるはずです。

松本:ブランディングやUXデザインなどにもさまざまなメソッドやフレームワークがありますが、これらを使えばすべてが解決できるというわけではないですし、フレームワークを使うこと自体が目的化してしまうようなことがあっては本末転倒です。本来デザイナーというのはルールに縛られず、自由で創造的な発想ができることに強みがあるはずです。WDSでは厳格なマニュアルのようなものではなく、余白のある体系のようなものを多くの人たちに共有していきたいと考えていますし、よく社内でも型にはまり過ぎず、常に新しい方法を模索した方が良いと話しています。


なぜ超少人数制なのか?

ーWDSのプログラムは、ワヴデザインの社内教育にも活用できそうですね。

渡邉:そう考えています。学習の定着率を示す「ラーニングピラミッド」というものがあるのですが、これを見ると学習定着率が最も低いのは「講義」、つまり座学なんです。あくまでも座学というのは能動的な学びのための入り口や下地に過ぎず、これだけでは定着しにくいんです。逆に定着率が高いのはグループ討論や自ら体験すること、そして、「他の人に教える」ことです。これらはいわゆるアクティブラーニングと呼ばれるものですが、例えば社内のデザイナーにWDSの講師になってもらい、人に教える経験を積んでもらうことで、それまで言語化できずに曖昧になっていた部分がクリアになり、制作の現場で発揮できるパフォーマンスも高まるのではないかと期待しています。

ーここまでお話を聞いて、学習効果を最大化することがWDSのカリキュラムづくりにおけるポイントになっていることがよくわかりました。

松本:まさに学習効果の最大化という点で大きなヒントになったのが、実は「ライザップ」なんです。

渡邉:ライザップにも食生活に関する座学などがあったりするんですよね。ライザップでは、パーソナルトレーナーがその人に合ったお題を用意し、それが達成されたらまた次のお題を提供するというサイクルをつくることで、成長を促しているんですよね。一律に同じプログラムを提供するのではなく、それぞれにパーソナライズされたトレーニングを続けることで確実に成長につなげるというアプローチは大きなヒントになっています。また、マンツーマンに近い形でしっかりフィードバックができる超少人数制のグループレッスンにしているのもライザップからの影響が少なからずあります。

松本:何かのスキルを高めようとした時に、課題の達成状況をすぐそばで客観的に見てくれる人がいることは大切ですし、それが本人のモチベーションにもつながりますよね。また、講師の存在だけではなく、近い距離で刺激し合える仲間がいることも重要だと考えています。

渡邉:成長という観点では、「その人がなぜデザインを学ぶべきなのか」というところまで見ることも大切です。僕がキャリアコンサルタントの国家資格を持っていることもあり、WDSではキャリアデザインの観点で、「何を学ぶか」ではなく「何をしたいか」から本質的に考え、目標設定やキャリアプランニングをサポートするということにも力を入れています。(つづく)

いかがだったでしょうか。いよいよ最終回となる次回は、国内のデザインスクール事情について見ていきます。乞うご期待。

パーソナライズされたトレーニングを続けることで学習効果の最大化を図っている。



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