逃亡の末

私たちは揃って移動し、揃って寝泊まりする場所を確保することが難しくなり、それぞれで逃げることになった。

この頃の私の記憶は曖昧で、きっと強い緊張感や不安、またKから暴力を振るわれるんじゃないかという恐怖から頻繁に解離していたと思われる。

未成年で知り合いもいない土地での逃亡生活は、すでに行き場をなくしていた。

私とKは先輩という人物に内緒で、見つからないように高速バスに乗ってKの実家に帰った。

そこで初めて、あの先輩という人物がすでに逮捕されていること、あの人物は上層部の人間からも追われていたこと、Kや一緒に逃げたMは暴力団に入ったことにはなっていないことを知った。

これから安心して生活して良いのだとKのお母さんに言われ、私たちはKの実家で同棲・同居することになった。
入籍はKの誕生日を待たなければならない。

私は悪阻が酷くなり、布団とトイレの往復以外ほとんど動けず、日に日に痩せていった。

結果的に何事もなく無事に落ち着いたわけだけど、私たちがどれだけ浅はかで短絡的で、簡単に人を信じ、危険か安全かの判断も出来ない子供だったかを痛感することとなった。

そう「末」は結局帰るしかないのだ。
未成年の私たちに何が出来る。
知恵も知識も経験も常識も何も持ち合わせていないのだから。

私は今でも、この逃走するとき車の中でかかっていた曲を聴くと嫌な思いが胸の中をザワザワさせて耳を塞いでしまう。

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