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ちひろさん

「ちひろさん」を観た。この感じ、空気感。昔観た「パーマメント野ばら」を思い出した。どちらも漫画が原作だということは共通しているが、監督も違うし作者も違う。
考えてみると、舞台がどちらも海辺の田舎町で、どこにでも居そうな親しみがわくキャラクターが常に登場するところと、相反してどこか非現実的な要素が含まれているところが共通しているのだと思う。

そして私はこんな雰囲気のお話がすごく好きだ。

お弁当屋さんの看板娘のちひろさんは元風俗嬢。そんな過去を隠すわけでもなく、飄々とゆるく暮らしている。田舎の海辺の町で色んな人と関わって、関わった人たちに、小さな花とか、みかんとか、飴とかを配るみたいに少しずつ暖かさや優しさや安らぎを与えていく。

すごくかわいくてきれいで優しい、ちひろさんなんだけど、どこか非現実的な感じがするのは、素顔が見えてこないからかな、と思う。つらい過去があって深い闇があってどうも抜け出せないよう。それを抱えながら黒い部分には蓋をして生きている感じがする。

皆な誰しもこんな感じわかるし、ありますよね。本当の素顔なんて結局どこにも出さないし本人にしかわからないから。

ちひろさんみたいに、あんなに優しくないし綺麗じゃないけど何となく共感できた。

この映画は観終わった後に、完結したというよりはその後もお話が続いていく感覚がある。でも決して続きが気になるわけでもなく気持ちよく終わる。

すごく日常的な声や場面と、非現実的な空気感がうまく混ざり合って、異世界へ行くでもなく現実を見るでもなく程よい心地よさ。とても良い時間だった。

刺激じゃなくて安らぎが欲しい時、どこへも出かけたくないとき、有村架純さんのかわいさと綺麗さを堪能したいとき、おすすめです。


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