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"新しく"はなれる

書くにあたって、そこまでサカナクションについて詳しいわけでもないので今回は病気に焦点を当てて、ライブレポートもちょっと書けたらくらいに思っている。そのため、多少の解釈違いや理解の違いがあるかもしれない。ご了承願いたい。


サカナクションturnツアーの最終日。7/10、ぴあアリーナMMに参戦した。


参戦理由は、1回は生で観たかったという気持ちが少し。背中を押したのは、NHKスペシャル「山口一郎"うつ"と生きる〜サカナクション復活の日々〜」を観たことだった。

私は一般的な精神病は把握している(私自身も少し経験がある)。ドキュメンタリーは大好き。依って、山口一郎(以下山口)のドキュメンタリーは観るほかなかった。


ドキュメンタリーはコロナ禍から始まる。

コロナは誰にとっても、本当に想定外な出来事だった。
得体の知れないウイルス。厳重な外出禁止措置。学校や会社はリモートが続々取り入れられ、家にいることを強いられた。

音楽も同様だった。星野源「うちで踊ろう」が流行ったり、メンバーや関係者のみでスタジオやライブハウスに入り、配信ライブを行った。

番組内では、山口はスマホなどを駆使して1人で活発に配信活動をしているようだった。音楽の域をも超えて、世間を元気にさせたい。そんな粋な彼の姿が見えた。

あの時は誰もが手探りの状態だった。正解のわからぬ中、山口は配信を頻繁におこなった。この行動は音楽界でもきっと先駆者の1人であった。
他にも音楽業界同士のコネクティング(あんまり覚えてなくて申し訳ない)のようなものをしたり、本人はそれはそれは精力的に活動していた。


ドキュメンタリーに沿っていくと、初めて糸が切れたのがサカナクションとしての配信ライブ。
「サカナクションといえば自分みたいなのが、正直すごく重荷なんだよね。」
そこに彼の弱っていた部分を見たと関係者は感じていたようだった。


そこからはじまる"うつ"との闘い。




誰しもはじめは自分がうつなんてと思うものだと思う。自覚やコントロールできないからこそ周りの助けが必要な病だと思う。

山口の場合、社長がツアーを止めてくれて、マネージャーが病院に付き添ったり連絡を取り、支えてくれる旧友、いつまでも待ってくれるメンバーやスタッフがいたことが結果的に2年という歳月での復活を叶えたのだと思う。1つも欠けてはならなかった。


ドキュメンタリーを観た人は分かる通り、観てない人には説明を兼ねて。

精神的な病は良い状態、悪い状態を繰り返す。それは悪い状態が長く続く時もあれば、良い時が続く時もあり、本人にも分からないことが多い。

山口がよく語っているエピソード、「食べ物を宅配で頼むけれど取りに行く気力がないから溜まっていく」
食べ物でなくともきっとうつを経験した/している人の中には共感できる人が多いことだろう。
そのくらい動けない日、思考が回らない日もある。
一方で、元気でアイディアに満ち溢れたり、それこそ配信しようなんて思える時期もある。
このサイクルこそが治す(正確には寛解していく)こと、山口の場合、バンドとして復帰していくことへの難しさだと私は思う。

それでもマネージャーに連絡を取るところから始まり、メンバーやスタッフのいるスタジオに行く、曲を演奏する、ライブに立つ。
「全てから逃げ出すことも考えた。」という山口が、このステップを2年かけて踏めたのは、周りの支えとそれ以上に山口の大きな決意や努力の賜物だろう。



ツアー最終日。

「この2年が活動19年の中で1番苦しかった。」
「いまだにいい時も悪い時もある。」
「昔(うつになる前)の山口一郎に戻ることはできない。」

苦悩を語る一方、メンバー1人1人に言及して感謝を伝えつつ続ける。

「でも新しくはなれる、"新しい"山口一郎、"新しい"サカナクションにはなれる!」
「2年前、活動休止前は声出しも出来なかったけど、今日新宝島みんなで歌ってくれたよね。それが僕たちの原動力です(ニュアンス)」
「充電バッチリ!!!」

2年の闇の中を経験して、それをバネにさらにスキルアップする彼らに私は「なんて強い人間なんだ…」と感心せざるを得なかった。



ただ私には1つ引っかかるところがあった。(これはあくまでも私の一意見として受け取ってほしい。)


#サカナクション完全復活ツアーなんで名前にしなくてもいいのに。なんて思った節があった。

もちろんファンを安心させたいという思いが先行したのだろう。

しかし、山口は「いい時も悪い時もある」我々にそう告げた。
「そんな時もあっていいんだよ」。そうやってお互い支える関係でいいんだと勝手に思ってる。だからこそ自分のSNSでは頑なにこのハッシュタグだけは使わなかった。

今回は完全復活。でも時には休んでいいよね。そんなバンドになったらそれこそ唯一無二な最強バンドになれるんじゃないか。そう思っている。


山口は「"うつ"を多くの人に知ってもらいたい」とドキュメンタリーで述べていた。


「うつで時々休んじゃうけど許してね!」くらいのスタンスで、また抱え込みすぎないように、この最強バンド"サカナクション"が長続きすればいいなと感じている今日この頃である。


ともあれ、2年の暗闇を抜けて活動再開してくれてありがとう。良かったことも苦しいかったことも発信することで消化してくれてありがとう。その発信で救われる人間がまずここに1人。他にも大勢の人を救っているという事実があることが本人に届きますように。そしてメンバーやスタッフ全員ご自愛ください。

"新しい"山口一郎、"新しい"サカナクションが今から楽しみだ。

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