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救世主セルフレジ、の話

 noteでも何度か話しているが、僕は右耳が聞こえない。

 22年間付き合ってきていることなので、流石に「毎日不便だなあ」みたいなことは少なかったのだけれど、最近生きづらさがちょっと増している。理由は他でもない、マスクとビニールシートである。

 新型コロナウィルスが流行してから、人々のマスクの着用率が上がった。マスクはどうにも音をくぐもらせてくる。

 響かない音が聞き取りづらいというのは、別に難聴者じゃなくても同じだと思う。加えてもう一つ、僕が普段、無意識のうちにやっている事として話している人の唇の動きを見るというのがある。

 読唇術というほど高尚なものではないにせよ、上手く聞こえなかった音を口の動きを見ることで補完する。恐らく片耳難聴者の大半は行なっているのではないだろうか。

 お察しの通りマスクでそれはできない。聞き取りづらい篭った音をそのまま聞くしかない、というのが僕の近況だ。

 加えてビニールシートの存在がある。正直なところ「なんのつもりなんだお前!」という感じだ。それくらいのヤツである。もっとも、ビニールシートも「いや、飛沫感染防止のつもりです」としか言えないだろうけど。

 コンビニが特に辛い。BGMの鳴る店内、他のお客さんの存在、マスクをつけた店員、立ち塞がるビニールシート。終了である。

 日常的に行く場所のなかでも、コンビニは一番声を聞き取りづらい空間だ。しかし、そんな所でもコミュニケーションは取る必要がある。

「温めますか? ポイントカードはお持ちですか? レジ袋はご利用ですか? ご一緒にホタテはいかがですか?」

 聞かれる内容はだいたい分かっていても、目の前の店員さんがどの順番でその質問をしてくるのかまではわからない。ちなみに「ホタテはいかがですか?」と聞かれた時の返し方は「ポテトみたいにホタテって言っちゃったよ」だ。万が一にも無いことだけれど。

 難聴は他の障害と比べても傍目では分かりづらいと思う。だから店員側に察してどうこうして欲しいとは微塵も考えていない。以前のトマトのように今回も、新たなシステムを提案しよう。

 コンビニにおいて聞かれる全ての質問は「はい」または「いいえ」で答えられるものだ。つまりドラクエの店と同じなのである。

 コンビニには、レジのところにタッチパネルがある。お酒やタバコを買うときにタッチするアレだ。あのパネルを利用して、全ての質問をあれで回答する形式にすれば良いのである。

 名付けて「ドラクエ式接客システム」。時代に即した画期的な発想ではないだろうか。

 しかし、昨今のコンビニにはそんな「ドラクエ式接客システム」よりよほど便利なヤツがいる。セルフレジだ。

 セルフレジは凄い。自分で商品のバーコードを読み取って、自分で袋に詰めて、自分で支払いをして買い物が済ませられる。だってセルフだから。

 まさに救世主。「店員の声が聞こえない」に対するアンサーは「全部自分でやる」だったのだ。なんというコペルニクス的転回なのだ。「聞こえないなら自分でやればいいじゃない」ということである。自分の発想の小ささを痛感している。

 この救世主が、もっと多くのコンビニに現れてくれはしないだろうか。個人的にめちゃくちゃ便利だと思っているので、是非とも広まって欲しい。

 知名度や利用率が上がればきっと更にたくさん設置されるだろう。「便利だよ!」ということを流布して知名度も利用者も増やし、セルフレジを広めていく。このエッセイは、その壮大な計画の第一歩である。

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