見出し画像

今さら聞けない? Web3/NFTゲームの歴史と最新トレンド総まとめ(コラム)

日本の大手ゲーム会社がWeb3/NFTゲームに参入する事例も増え、2023年から2024年にかけて多くのWeb3ゲームタイトルが登場しています。そこで今回、Web3ゲームトレンドがどのように作られてきたのか、世界における事例を振り返ってみましょう。また、最新のトレンドについても紹介していきます。


モンスター対戦バトルゲーム「Axie Infinity」

「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」は、Axieと呼ばれるモンスターをNFTとして使ってバトルをすることでトークンを稼ぐとともに、2種類のモンスターNFTを繁殖させて増やすというプレイが基本となるWeb3ゲームです。Axie Infinityは2021年頃から、Play to Earn(遊んで稼ぐ、以下P2E)をコンセプトとしたゲームとして爆発的に普及しました。Axie Infinity以前にもWeb3ゲームは多く存在していましたが、P2Eを広く普及させるきっかけとなったという意味で、Web3ゲームの大きな転換点となりました。

Axie Infinityの開発元はSky Mavis(ベトナム)で、東南アジア圏のプレイヤーに普及しました。2021年当時、コロナ禍で出稼ぎに出られなくなったフィリピン人などを中心に急激にプレイヤー数を伸ばし、Axie Infinityは生活費を稼ぐ手段の一つともなりました。2021年8月には1日当たりの利用者数(デイリーアクティブユーザー、DAU)が100万人を達成しています。

Axie InfinityはNFTを所有することでゲームに参加できますが、次第にNFT価格が高騰していき、一般人には手が出ない問題が発生しました。そこで登場したのがスカラーシップ制度です。この制度はNFTホルダーがプレイヤーにNFTを貸出し、利益を分配します。スカラーシップ制度を主導したのは Yield Guild Games(イールド・ギルド・ゲーム、YGG)というAxie Infinityとは別の企業ですが、「ゲームギルド」というスカラーシップ制度を含めたエコシステムを形成し、P2Eブームの先駆けとなりました。

当初、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンで開始したAxie Infinityですが、ガス代の高騰やスケーラビリティの問題から、独自のサイドチェーンである「Ronin(ローニン)」をローンチし、現在はRoninチェーンに移っています。このRoninチェーンに他の開発者やプロジェクトの誘致も進めており、最近では「Pixels(ピクセル)」というピクセルベースのレトロスタイル・ファーミングゲーム(農場系RPG)をオンボードし、暗号資産取引所のBinance(バイナンス)へ上場するなど成功を収めています。

健康ブームも追い風となった「STEPN」

次にWeb3ゲームに大きな革命を起こしたのは「STEPN(ステップン)」です。STEPNは「Move to Earn(運動して稼ぐ)」というモデルを導入し、P2Eに実世界と連動した仕組みを取り入れました。世界的な健康ブームの背景もあり、歩いて稼ぐという斬新なコンセプトとSNSとの親和性によって、これまで暗号資産に触れてこなかったユーザーも取り込むことに成功しました。

STEPNはスニーカーNFTを所持することで収益を上げることができますが、スニーカーという形態を生かして、2022年にはスポーツメーカーのアシックスとコラボレーションを行い、2024年になってからもアディダスとコラボレーションを行うなど、従来のWeb3ゲームにはない広がりを見せました。2022年5月にDAUが50万人を達成したと発表しています。

また、STEPNの開発元のFind Satoshi Lab(ファインド・サトシ・ラボ、オーストラリア)は2023年末に新しいP2Eゲームの「ガスヒーロー」をリリースしました。このゲームはSTEPNと同じGMTトークンをトークンエコノミクスに採用し、トークンの長寿命化にも貢献したと言えます。2024年6月には、さらに新しい「STEPN GO(ステップン・ゴー)」というゲームもリリースし、3度注目を集めています。

STEPN GOには、STEPNにはなかった、新しくスニーカーNFTを貸し出す機能などが追加されています

「Bigtime」など、高品質Web3ゲームの台頭

Axie Infinity以降、Web3ゲームは暗号資産プロジェクトの主要カテゴリの一つに数えられるようになっています。しかし、多くのプロジェクトがWeb3ゲームを立ち上げたものの、ほとんどのゲームはリリースすることなく終了しました。

そんな中、2023年10月に「Bigtime(ビッグタイム)」というWeb3ゲームがリリースされました。BigtimeはWeb2ゲーム配信者を取り込むことに力を入れた、高品質なマルチプレイヤーアクション、つまりMMO(Massively Multiplayer Online、大人数参加型オンライン)RPGゲームという位置付けでした。配信プラットフォームのTwitch(ツイッチ)で数千人規模にもなる配信者がBigtimeのプレイ動画を配信し、話題を作ることに成功しています。

それまでのWeb3ゲームは単純なゲーム性、つまり「ゲームというよりは作業」にとらえられるものが多かった中、Bigtimeはゲームプレイ自体が面白く、かつP2Eで収入を得ることができる点が評価され、人気を獲得しました。

BigtimeがMMO RPGとして話題になった一方、2024年7月現在、FPS(一人称視点シューティング)、RTS(リアルタイムストラテジー)、MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)といった、Web2ゲームの人気ジャンルをベースとした高品質のWeb3ゲームの開発が進められています。このような高品質Web3ゲームが、次のP2Eブームを作ることになるかもしれません。

Telegramが開発した「TONエコシステム」

2024年に入ってから、「TON(The Open Network)エコシステム」が飛躍的に成長しています。TONはユーザー数9億人以上のメッセンジャーアプリ「Telegram」が開発したレイヤー1ブロックチェーンです。Telegramアプリ内にウォレット機能が新しく追加され、Telegramアプリで利用できるbotを利用したミニアプリ(ほとんどはカジュアルゲーム)を利用したプロジェクトが次々とローンチされています。Telegramの元々のユーザーベースを活用し、ユーザーも開発者もアクセスできる環境が整備されたことによって、TONエコシステムの流行は爆発的なものとなりました。

なかでも大きな注目を集めた「Notcoin(ノットコイン)」は、タップするだけでトークンが稼げる単純なクリックゲームでした。無料で始めることができ、簡単なルールかつ招待制度を導入したことでユーザーは大きく拡大し、Notcoin公式Xアカウントによれば、DAUは最大で500万人を突破したとのことです。

さらにTON財団による助成金もTONエコシステムの拡大を後押ししており、Notcoin以降も、様々なアプリが登場しています。例えば、猫の育成放置ゲームアプリ「Catizen(キャッティズン)」は2024年3月にリリースされ、6月にDAU350万人を突破しました。Catizenは、TelegramアプリさえあればWeb3に触れたことのないユーザーでも簡単に参加できる点が特徴です。ゲームを続けるとゲーム内の猫が育っていき、トークンセールに参加でき、Catizenトークンを獲得できるようになっています。このように、Web2ユーザーに対して意識することなくシームレスにWeb3を体験させることで、Web3の知識向上を促していくことが特徴の一つになっています。

TONエコシステム内のミニアプリは従来のWeb3ゲームとは様相が異なっており、NFTも使わないことがほとんどです。Web2ユーザーをWeb3にオンボードさせるためにカジュアルゲームを利用している、というのが実態に近いと考えられます。

Catizenの実際のプレイ画面。いわゆる「放置ゲーム」で猫を育てていきます

日本国内でも様々なWeb3ゲームがローンチ

最後に、いくつか日本のWeb3ゲームプロジェクトや、Web3ゲーム業界に関連した話題を紹介します。

■MCH(マイクリプトヒーローズ)
2018年11月にサービスを開始した日本初のWeb3ゲームです。2019年1月にはDAU6,000人を突破し、当時のイーサリアムチェーンで世界1位を記録しました。2022年にはOasys(オアシス)チェーン(後述)にて独自のレイヤー2チェーンを構築し、イーサリアムチェーンから移行しました。

■Oasys
Oasysは「ゲームのためのブロックチェーン」がコンセプトのレイヤー1ブロックチェーンです。日本の大手ゲーム会社が複数バリデーターとして参加しています。プロジェクトはOasys上に独自のレイヤー2チェーンを構築することが可能であり、高速かつトランザクション手数料が無料という特長があります。

■大手ゲーム会社のWeb3ゲーム参入
セガやスクウェアエニックスなど大手ゲーム企業がWeb3ゲームの開発に乗り出しており、2023年頃から様々なWeb3ゲームが稼働し始めています。2024年にはさらに多くのWeb3ゲームがリリースされる予定になっており、スマホゲームで人気を獲得したタイトルのWeb3バージョンといった立ち位置のものも多いようです。

■暗号資産取引所にWeb3ゲームトークン上場
2023年頃から、日本発Web3ゲームのトークンが日本の暗号資産取引所で取引できるようになってきています。BITPoint(ビットポイント)にはGXE(PROJECT XENO)、TSUGT(キャプテン翼 -RIVALS-)などのトークンがリストされました。bitFlyer (ビットフライヤー)は2024年2月に「THE LANDエルフの森」のIEO(イニシャルエクスチェンジオファリング)を実施し、Coincheck(コインチェック)は2024年6月に「ブリリアンクリプト」のIEOを行いました。日本発・海外発にかかわらず、新興プロジェクトが日本の取引所へリストされるのはハードルが高い状況でしたが、その状況は変わりつつあることが分かります。

Web2ユーザーをWeb3に移行できるか

今回はWeb3ゲームの歴史を作ってきたプロジェクトや、現在のトレンドをまとめて解説しました。大きなトレンドを作ってきたプロジェクトの特徴を見てみると、以下の共通点があるようです。

・画期的なコンセプトを打ち出している
・Web2ユーザーをうまく巻き込んでいる

また、現在のトレンドには高品質ゲーム、カジュアルゲームという全く逆のジャンルが挙げられますが、それぞれの方法でWeb2ユーザーにリーチを伸ばしていることも共通点としてあげられます。

Web3側から見れば、業界全体としていかにWeb2ユーザーをWeb3に移行させるかが大きなテーマの一つであり、ゲームはそのための重要なカテゴリの一つという見方がされています。Web2ユーザーとWeb3ユーザーの境界をどのようにしてゲームがつないでいくのか、注目をしていきたいところです。


制作:株式会社Kudasai

株式会社Kudasaiは、2020年に創設された日本最大級の暗号資産コミュニティ「KudasaiJP」を起点とし、株式会社化されました。株式会社KudasaiはWeb3企業のみならず、Web3に関わる全てのプロジェクトや企業の成長を支援する企業です。ブロックチェーンスタートアップの計画・開発やアドバイザリー、コミュニティ拡大まで、多面的かつ包括的な成長支援ソリューションを提供しています。

「NFT」の概要や技術、法整備など、基礎となる知識を盛り込んだ動画のWeb3教育コンテンツは、AI・デジタル人材育成プラットフォームを展開する株式会社zero to oneのプラットフォーム上で展開する予定です。提供を開始する際には、noteなどを通じてご案内いたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?