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Coinbaseが手掛けるレイヤー2「Baseチェーン」とは - 特徴やエコシステムの傾向(コラム)

2024年注目のブロックチェーンの一つとして、米国最大手の暗号資産取引所Coinbaseが手掛ける「Base」が挙げられます。Ethereum(イーサリアム)のレイヤー2ソリューションを利用した汎用ブロックチェーンであり、2023年8月にメインネットをローンチして以降、大きく成長しています。2024年4月には、1日のトランザクション件数が同カテゴリーの先行者であるArbitrum(アービトリウム)やOptimism(オプティズム)を凌ぐほど高く、TVL(Total Value Locked)も両者と同程度の水準となっています。

BaseのTVL推移(defillama.comのデータを元にKudasaiJP作成)

本コラムではBaseチェーンについて、開発経緯や特徴、エコシステムを解説します。

Coinbaseが手掛ける四つの製品・サービス

前述の通り、Baseチェーンは米国最大の暗号資産取引所Coinbaseが開発しています。Coinbaseは2012年に設立され、Bitcoin(ビットコイン)の売買サービスから事業を開始しました。2024年6月現在では米国最大、全世界でもトップ3の出来高を有しており、暗号資産市場において非常に大きな取引所です。2021年には米ナスダック市場に上場しています。

Coinbaseは取引所サービス以外にも、「Coinbase Wallet」というWeb3サービスの提供や、投資部門である「Coinbase Ventures」を立ち上げ、多額の出資を行うなど幅広い事業を展開してきました。

Coinbaseが手がける製品・サービスの概要(CoinbaseよりKudasaiJP作成)

サービス以外の活動として、Coinbaseは米国証券取引委員会(SEC)に対して、暗号資産の具体的な規制を求める動きを長期にわたって行っています。このような取り組みは多くのWeb3事業者の支持を集めており、動向が注目されています。

CoinbaseのビジョンとBaseチェーンの関係

Coinbaseは、2016年に「The Coinbase Secret Master Plan」を公開しており、オープンな金融システムを構築するというビジョンを掲げてきました。The Coinbase Secret Master Planでは、どのようにして世界がオープンな金融システムを持つかを述べており、以下の四つのフェーズがあるとしています。

1.プロトコルの開発:ビットコインやイーサリアムが開発され、オープンソースコミュニティが出現し始めた(Coinbaseの事業展開なし)
2.暗号資産取引所の構築:暗号資産をユーザーが安全かつ簡単に使えるようにする(Coinbase取引所の提供)
3.暗号資産アプリのインターフェースの構築:DAppsへのアクセスをしやすくする(Coinbase Walletの開発、開発に取り組むチームへの投資)
4.オープンな金融システムの構築:様々なDAppsによって誰でもアクセス可能なグローバルな金融市場を構築する

前述したCoinbaseの広範なサービス展開や規制当局との争議を含む活動は、全てThe Coinbase Secret Master Planを達成するためのものです。このビジョンは2016年9月に公開されましたが、7年以上が経過した現在でも、同ビジョンをもとに事業を展開し続けているのは特筆すべき点と言えるでしょう。

そしてCoinbaseは「フェーズ3.5」という位置付けで、様々な金融アプリケーションをオンチェーンに展開するためのプラットフォームとして、Baseチェーンの構築を開始しました。

Baseチェーンが生まれた背景

実はCoinbaseは、2018年と2020年の2回にわたって、ブロックチェーンの立ち上げを検討したものの断念したという歴史があります。そして2022年にようやく納得する形でブロックチェーンのローンチができる環境が整ったと考えたようです。

2022年にブロックチェーンの開発に着手し始めた時、開発のしやすいEVM 、もっとも成熟しており安全なEthereumブロックチェーン、その中でもより安価なレイヤー2ソリューションを使用する、というのは当初から決まっていたようですが、2018年時点で、Coinbaseが目指したのは「単独のレイヤー2が市場を支配する」というものだったそうです。

ところが2022年に打ち出されたBaseチェーンの構想は、その真逆とも言えるものでした。Coinbaseチームがレイヤー2ソリューションを探し始めた時、レイヤー2の開発者たちの「協力的な姿勢」「多様性」を目の当たりにすることになりました。

2022年当時、レイヤー2ソリューションの一つであるOptimismは、様々な活動を行うレイヤー2が多数存在し、それぞれが相互運用する中で多様なエコシステムのハブとして機能し、Ethereumを共同でスケーリングする「スーパーチェーン」という構想を打ち立てました。Baseはそのスーパーチェーンの一部となることを選択したのです。

スーパーチェーンのイメージ(CoinbaseよりKudasaiJP作成)

Baseの特徴

Baseチェーンは、Optimismが提供するOP Stackという開発ツールを利用して構築されており、Ethereumのセキュリティを引き継ぎながら、ガス代の低下、トランザクション処理能力を向上させたレイヤー2ソリューションを採用したチェーンです。

また、前述の通り、BaseはOptimismが提唱するスーパーチェーンの一部として誕生し、誰もが利用でき、誰でもエコシステムに貢献し、誰でも拡張ができる公共財としての役割を重んじています。

現在、Base(というよりOptimism)には分散化に関する技術的な課題があり、中央集権的な単独シーケンサー(トランザクションを順番に並べ替える役割)によって運営されている状況です。2024年にはOptimismと協力して分散化の促進を行うことが予定されています。

また、アカウント抽象化を利用したスマートウォレットの導入や各種アプリのオンチェーン化の促進など、エコシステムの更なる拡大を目指しています。

Baseエコシステムの事例

最後に、Baseエコシステムについて簡単に解説します。Baseは新興のブロックチェーンでありながら、Uniswap、AAVE、CompoundといったEthereumレイヤー1で大きな資金を集めているDeFiプロジェクトが早期からBaseチェーンへの移植を進めています。こうした大きなDeFiプロジェクトが他のブロックチェーンに展開する場合、ガバナンス投票でその是非を投票する場合が多いため、既存ユーザーから有望なブロックチェーンであると認識されていると考えられます。

既存プロジェクトの移植だけではなくBaseチェーンのネイティブプロジェクトでも、5月15日時点でTVL約6億5,000万ドル(1,000億円)を集めるAMMプロトコルのAerodrome(エアロドローム)、デイリーユーザーが5万人を超える最大のWeb3ソーシャルプロトコルのFarcaster(ファーキャスター)、2023年に全DeFiの中でデイリー収益1位を何度も獲得したFriend.tech(フレンド・テック)など、暗号資産全体から見ても存在感が大きなプロジェクトが多数存在します。

日本からは、2024年1月にDeNAからBaseチェーンを活用したWeb3クイズゲーム「trivia.tech(トリビア・テック)」がリリースされ、注目を集めました。

Baseは開発者向けに助成金プログラムやハッカソンを開催しており、更にエコシステムの拡大を目指しています。今後もユーザーが驚くようなアプリケーションが誕生するかもしれません。


制作:株式会社Kudasai

株式会社Kudasaiは、2020年に創設された日本最大級の暗号資産コミュニティ「KudasaiJP」を起点とし、株式会社化されました。株式会社KudasaiはWeb3企業のみならず、Web3に関わる全てのプロジェクトや企業の成長を支援する企業です。ブロックチェーンスタートアップの計画・開発やアドバイザリー、コミュニティ拡大まで、多面的かつ包括的な成長支援ソリューションを提供しています。


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