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暗号資産のシステム開発は「人類のチャレンジ」、変化の激しい業界の中で生きる(コラム)

2018年創業の株式会社Crypto Garage(クリプトガレージ)は、ブロックチェーン技術と金融ナレッジを組み合わせ、デジタル・アセット金融サービスの新しいインフラを提供しています。研究開発組織のDG Lab時代を含めると、2016年から暗号資産(仮想通貨)と向き合う中で、ビジネストレンドのアップダウンが大きい業界をどう見ているのでしょうか。COO&CBOの加藤岬造(こうぞう)さん、CSOのJustin Dhingra(ジャスティン・ディングラー)さん、株式会社デジタルガレージ web3事業開発部長の木室(きむろ)俊一さんにお話をうかがいました。

規制が進む中、リテラシーや知識の向上を

――2023年現在、暗号資産を取り巻く環境はどう変わったと感じていますか。

木室:DG Labだった2016年当時は、いい意味で暗号資産の新たな金融サービスがどんどん出てくるのかな、という期待感がありました。一方で、今はどうしても規制や法律を用いて従来の金融のやり方に暗号資産を適用するというムーブが強くなっています。暗号資産は誰にも頼らず、第三者の信頼がない状況で資産を送れることに価値がありますが、扱える資産が多様化する中で、既存の金融サービスにある商品のような見え方になってきているように感じます。規制はいらないというわけではありません。規制がなければ誰もが安心して使えるサービスにはならないでしょうし。目線を合わせて議論する中で、落ち着くところに落ち着いていくんだろうなと思っています。

加藤:一つ具体的な例を挙げると、2017年頃、暗号資産取引所のBitMEX(ビットメックス)はKYC(本人確認)なしでデリバティブ取引ができ、取引残高が業界トップクラスでした。しかし、米国や日本などの規制当局の取り締まりを受け、2020年にはKYCプログラムの導入を発表しています。現在は、Coinbase(コインベース)など規制に準拠した暗号資産取引所がシェアを占めています。

――法律や規制が増えていく中で、蓋を開けてみれば既存の金融サービスとあまり変わらないということも起きるのでは、という危惧を感じているようですが、この状況下で何が必要だと思いますか。

加藤:日本の文化として、事業者側からの最低限の情報提供を前提として、消費者自身の責任でサービスを利用してもらう、というのは受け入れらないところがあります。そのため、消費者のリテラシーや知識、体験を向上していくことで、より自由な、誰にも頼らない金融サービスが育っていくのではと考えています。

――消費者に対して、例えばリテラシーや知識を向上させるために、Crypto Garageが取り組んでいることはありますか。

加藤:我々のサービスはBtoBということもあり、直接的に消費者に対して教育活動などをしているわけではありませんが、一つ言えるのは、業界をリードしていこうとしている企業がグレーなことや間違ったことをしていると、「結局、そういう業界なんだね」と思われてしまうので、そのあたりのことは意識をして事業を進めています。業界自体の評価を下げないというか、どれだけ業界に貢献できるかというのは常に考えています。

暗号資産を長期投資できるような環境づくりを

――暗号資産に関してCrypto Garageが力を入れているサービスを教えてください。

ジャスティン:まず一つが、「SETTLENET(セトルネット)」という暗号資産取引会社、取引所、資産管理会社、ブローカーに向けた取引・決済ソリューションです。日本のマーケットの収益機会に期待して、日本の投資家からの資金の流れを構築したいと考える海外の企業は少なくありません。しかし、日本円建ての暗号資産の取引ができたとしても、言葉やネットワークの壁、コストの高さゆえに二の足を踏む企業は多く、取引先が限られていたのが実情でした。そこで我々は創業してすぐに海外出張を重ねて多くの企業に接触し、ニーズのヒアリングやネットワークをつないだことで、我々が作ったプラットフォームに参加いただけることになり、現在このSETTLENETの運営ができています。

もう一つは今年4月に開発した「SETTLENET CUSTODY(セトルネットカストディ)」という、法人向けデジタル・アセット保管サービスです。世界に比べて日本では暗号資産への投資が盛んではないのが現状です。税制や会計処理、そもそもなぜ暗号資産なのか、など色々と理由はあるのですが、我々は企業や機関投資家が暗号資産を売買したい場合、今の環境で足りているのか、ということに目をつけました。例えば、暗号資産取引所で口座を開いて、そこに全ての暗号資産を預けて売買することに不安を感じる人もいます。実際に、ハッキングされて暗号資産が流出するという事件は何度も起きています。だったら、デジタル・アセットの保管に特化した カストディ サービスは需要があるのではないか、というところからサービスを考えていきました。加えて、お預かりした暗号資産を取引する際は、自分で取引所を通して取引をせずとも、 OTC取引 サービスとして、例えば「Bitcoin(ビットコイン)を100万円分購入したい」と要望いただければ、弊社の専門家チームと直接売買することもできます。

――これらのサービスを通して、Crypto Garageとしてはどういう未来を思い描いていますか。

加藤:現状、日本における暗号資産市場は、デイトレーダーのように投機目的な方々が多いですが、北米では年金積立のメニューに暗号資産があり、少額ではありますが長期投資が始まったことで、より一般層にまで広がっています。どうやったら日本でもそんなシチュエーションが作れるんだろう、そのために何が必要なんだろう、などと考える中で、安全に暗号資産が取引できる手段や安心して暗号資産を補完できる場所を形にしてきました。投機が悪いわけではないですし、日本国内で日本円の代わりにBitcoinで生活をするという人はなかなか出てこないとも思っていますが、準備されたインフラがあるからニーズが生まれてくる、ということはあります。「鶏が先か、卵が先か」という話ですよね。我々としては暗号資産がより日常に浸透していくことを待ち望んではいますが、我々ができることはその時その時に適切なサービスを提供することに尽きますし、こうして準備をする中で「その選択もあるよね」と感じた人たちに、身近なサービスとして活用してもらえたらいいのかなと思っています。

ダウントレンドの時こそチャンス

――最後に、今こうして暗号市産業界に関わる中で、どんなところに面白さや興味を感じていますか。

加藤:Crypto Garageは金融機関出身者が多く、私もそうです。過去にはリーマン・ショックのような金融危機を経験し、正されるべきことはこういうところなんだろうなと肌で感じることがありました。そんな時に暗号資産に出会い、原理原則として透明性を持って物事を進められる暗号資産に魅力を感じ、それが世の中に広く実現される可能性があるのではないか、というとこから興味を持ったのが始まりですし、その気持ちは今も変わりません。

ジャスティン:私も加藤と同じく金融機関出身で、デリバティブセールスなどをやっていました。そのため、株式や債券、投資信託を販売して手数料をいただくのがビジネスモデルだと身に染みていたのですが、Bitcoinが誕生し、第三者を通さずに簡単に早く、格安に金融取引ができることに感動してしまったんですよね。その後にブロックチェーン技術に可能性を感じ、今に至るという感じです。

木室:私は金融機関出身ではなく、その裏側にある仕組みが面白いと思う性格でして、ブロックチェーンみたいな新しいテクノロジーアーキテクチャが面白いなというとこから関わり始めました。従来の金融だとガチガチでクローズドなシステムですが、Bitcoinのような暗号資産は、オープンソースで分散化された仕組みの中で動いています。でも、またここからもどんどん技術がアップグレードしていく領域でしょうし、そこに関わっていくことが面白いというか、人類のチャレンジだなと個人的には思っています。

加藤:加えると、暗号資産業界は確かに波があり、ダイナミックなスピード感のある中でうまく泳ぎきれるのか、みたいな話は我々に限らずどの企業も感じているところだと思います。Crypto Garageを創業して、2~3回、アップダウンを経験していますが、私自身はトレンドのアップダウンとは反対の見方をしています。波が来ている時は玉石混交で、結果、事故や事件が起きがちです。でも、波が引くと暗号資産業界に対して真剣に取り組んでいる人たちだけが残るんです。そんな情熱を持って考えている人たちと議論ができますし、本当に必要なものだけに時間をかけてシステム開発に取り組めるという意味では、我々にとっては結構心地良い時でもあります。実際、ダウントレンドの時の方がいいものが出てきていると思います。


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