DeFi_#10:DeFiの社会実装と課題
2023年7月現在、 DeFi は暗号資産(仮想通貨)の世界で完結したWeb3ネイティブの新しい金融の世界を構築しています。将来的には、現実世界(リアルワールド)とWeb3ネイティブの世界が接続されて、金融システムがより効率的にさせる可能性があります。
その際には、現実世界の資産などをデータとして取り扱うにはオラクルが重要になってきますが、オラクル自体が単一障害点となりうる課題もあります。
RWAをトークン化
まず、現実世界の資産の権利を裏付けたトークンにはどんなものがあるのかを解説します。
セキュリティトークンとは、株式や土地の所有権など様々な権利を裏づけに、トークンの形で発行される有価証券のことです。こうした RWA のトークン化は注目されています。
将来的には、セキュリティトークンがDeFiのレンディングプロトコルにおいて担保資産となり、DeFiでお金を借りることも可能になるでしょう。また株式や債券を担保にすることで、機関投資家のDeFiへの参入もしやすくなる可能性があります。
RWA事例(1):不動産をトークン化
不動産の所有権をトークン化して分割することで、小額での不動産投資を実現することが可能です。 REIT のように不動産の所有権や配当権利を小口分散することで、本来であれば高額投資となる不動産投資ですが、小口分散させることで小口投資も可能となります。
また、このトークンをDeFiにおいて担保アセットとして使うことで、不動産を担保にして資金を借りることなどが可能になると考えられます。
RWA事例(2):売掛債権をトークン化
現実世界の企業が商取引を行う際に発生する債権を担保にして、 NFT でトークン化し、それを担保にして資金の借入ができるプロジェクトなどもあります。
例えばTinlake(ティンレイク)は、中小企業の資金繰りニーズに応えるための金融サービスを提供しています。例を挙げると、製造業者が製品を製造して顧客へ引き渡したのち、売上金の回収は60日後だとします。Tinkaleは 売掛債権 (請求書)をNFTにし、それをTinlakeに担保提供することで資金を借りることができます。また一般ユーザーも、Tinlakeを通じて資金を貸すことで、利息を得ることが可能です。
DeFiを現実世界につなげる際の課題
ただ、これらに共通した課題として、どうやって現実世界の物をデータとして扱うかというものがあります。この課題に対してオラクルがあり、DeFiでも暗号資産の価格フィード(価格データ)などを取る手段として使われています。
しかし現実世界の物はデータを取るのが困難になります。
例えば、チームAとチームBの野球の試合があり、その試合結果を対象とした賭けをAさんとBさんが1ETH(イーサ)ずつスマートコントラクトアドレスにデポジットして、Aチームが勝った場合はAさんが2ETHを得て、Bチームの場合はBさんが2ETH得るとします。このようにスマートコントラクトによって支払いを管理する場合は、野球の試合の結果というデータはブロックチェーンに存在しないため、その試合結果をブロックチェーンに持ち込むオラクルが必要になります。
しかし、スマートコントラクトの執行を判断するためのデータを提供するオラクルには解決すべき問題があります。
オラクルには集権型オラクル(Centralized oracle)と分散型オラクル(Decentralized oracle)があり、現状の多くのオラクルは集権型オラクルになっています。集権型オラクルは参照するデータをAPIなどで取得し、ブロックチェーンはそのデータを参照します。その取得したデータ(野球試合の結果など)を元にスマートコントラクトの執行が行われます。(関連単元:オフチェーンとブロックチェーンをつなぐ「オラクル」の基礎知識)
課題は、このオラクルがデータを取得するソース(取得元)を信頼する必要がある点です。オラクルが正しいデータを確実に参照してブロックチェーンに持ち込むことを信頼する必要があります。
例えば、野球試合の賭け金が数百億円規模でスマートコントラクトに預け入れている場合、オラクルの運用者がチームBの勝利に賭けて、チームAが勝利したにも関わらず、オラクルにチームBが勝利したという間違ったデータを意図的に提供することで、運用者は不正にスマートコントラクトに預けられた賭け金を得ることができてしまいます。
この時、スマートコントラクトは正常にプログラム通り動作しているため、スマートコントラクトとしては正常に執行していながら、オラクルの取得動作が間違っているために、本来意図した結果にはなっていない点が問題となります。
このような課題にはChainlinkなどの分散型オラクルを提供するプロジェクトを用いるほか、株式などの数値化しやすい資産のデータを分散型オラクルにて管理することが重要になります。
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