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敢えて伝えない愛

彼氏が他の女性と二人きりで、隣県へ登山に行った。

これだと語弊があるかな。
大学の時の友だちの研究を、お手伝いしに行っていたらしい。
お願いされたんだって。
それでわざわざ隣の県の山まで行って、一日中お手伝いしてたそうな。
彼から「帰り着いたよ。」と返信が来たのは、夜7時過ぎだった。
そして、お友だちが撮ったであろう写真も一緒に送られてきた。
2つ並んだシャベルの写真。
お昼を食べた山荘の写真。
彼が笑顔で作業する姿の写真は5枚もあった。

…よっぽど仲のいいお友だちだったのね。
私と居るより楽しそう。
他の女性に撮ってもらった写真なんて要らないんだけど。
私が同じこと頼んでも貴方は来てくれるの?
なんて嫌な言葉が口をついて出てしまいそうになる。

彼のことだから浮ついた心で行ったんじゃないことは分かっている。
きっと純粋な親切心。
でも、その事実を知らされて私がどう思うか、写真を見てどう感じるかという想像力が足りてない。
正直でいることが必ずしも正しい訳じゃない。
寧ろ思いやりのない正直は、ただの自己満足でしかない。
私は優しい嘘が欲しかった。
「今日は一人で登山に行ったよ。」
それで良かった。
私と貴方は離れていて、言わなきゃ分からないんだから、真実なんて。

離れているからこそ知りたくないことがある。
敢えて伝えないのが愛、そういう時もあるということ。
この気持ちも彼には敢えて伝えない。
LINEで伝えたって彼のこと不安にさせてしまうだけな気がするから。
恋愛の駆け引き、どきどき、焼きもち、
もう全部要らない。
凪のような気持ちでいたいの。
どうか安心を頂戴。

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