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馴染む人

「○○ちゃん、スポンジもう寿命だよ。」
ご飯を作った後、必ず食器を洗ってくれる彼。今日もいつもみたいに洗おうとして、
あまりにスポンジがしなしなだったみたい。
「100均のだからね。」
と言いながら何故か嬉しくて嬉しくて堪らず、にやにやを隠せないまま新しいスポンジを彼に差し出した。

後から考えると、私の生活を他人事だと切り離さない彼の優しさが詰まった言葉だなと思う。
私の生活に入ってきてくれたことが嬉しいんだ。きっと。

以前お付き合いしていた人は実家暮らしで、一人暮らしをしたことがなかった。
『一緒に住んだら毎朝珈琲を入れたいな〜。』
『え、見切り品使うの?』
『毎日一緒にお風呂上がりはパックしようね。』
など、うるせー!!(パックなんていらねー!)と一蹴したくなるような夢見がちな事ばかり言っていたなぁ。
家に遊びに来る時も、手土産はお酒と大量のペットボトルのお茶。
お酒なんて彼しか呑まないのに。ペットボトルの処分の手間もお金も勿体ない。
私の本当に喜ぶプレゼントを、1度もくれない人だった。
洗濯機の回し方も知らない。
食器を洗う時は水を出しっぱなし。
トイレットペーパーの芯もトイレに転がっている。
「クイックルワイパーしたよ。」
とよく得意気に言ってきたが、かけ方も隙間だらけで雑。
お手伝いしてもらう方がストレス。やって当たり前のことを、いちいち言うな。年上に家事の仕方を口出ししなければならない絶望。
社会人にもなって男性を育てることはできんとつくづく感じた。
でも、我流の家事の仕方を押し付けて、「なぜ私の言う通りできないの?」と完璧を求めていた私も悪い。


その点、今の彼は一人暮らし歴が長い。
一通りの家事ができる。
なのに拘りが少ない。(これが大事)
泊まりに来ても私のやり方に無理に合わせようとはしない。でも、尊重してくれる。そして、かゆいところに手が届くようなお手伝いを何も言わず当たり前のようにしてくれる。
例えば、床に物が落ちているのに、水回りだけはぴかぴかにしたいと一心不乱に磨く私を微笑ましく見守ってくれる。
スーパーで見切り品を見て、これ安いねって一緒に喜んでくれる。
いつの間にかクイックルワイパーを掛けてくれる。
私がご飯を作っている間、お湯を沸かしてお茶を用意してくれる。
面倒臭いお茶っ葉の処理まで何も言わずともしてくれる。
トイレットペーパーの補充をしてくれるし、芯も捨ててくれる。
彼がしてくれることなら、私にとって完璧でなくとも許せる。彼の生きてきた経験を尊敬しているから。
とにかく、
「この人となら生活できそうだな」
と思う。


何より彼と居ると凄く落ち着く。
まるで、寒い日にシャワーを浴びて少しずつ氷が溶けるように身体にじわっと暖かさが広がってほぐれていく感じ。
心地いい。私の生活の中に彼が馴染んでいく。
ずっと一緒に生きてきたような感覚なんです。
貴方と暮らすことを考えたらワクワクするんです。
1人より2人がいい。一緒にいると力が湧いてくる。
こんなことを思える人に出会えたことが私の人生の一番の幸せ。

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