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母には敵わない

「実はあなたの運動会、見に行ってたんだよね。」
突然の告白。
去年の秋、母は成人した娘の運動会を見に、
はるばる田舎まで足を運んでいたらしい。

「あなた萎縮してるし、落ち着きがなかった。普段からそんな感じで仕事してるでしょう。」

どういうこと?

「ミスしたくないって気持ちが先行して、上手く動けてないし、周りを気にしてばかりで忙しない。怒られたくないっていう気持ちが態度に出てるよ。」
…言い当てられた。一瞬で分かるんだね。
母は凄い。

先生らしく、即断即決しなきゃ。
迷ってる姿を見せてはいけない。
そう思って、子どもからの問いに急いで答える。結果、行き当たりばったりの返答で子どもを混乱させていた。

規律を維持するため、ちゃんと言うことを聞かせなきゃ。
頭ごなしに言えば言うほど、子どもの気持ちは離れ、私の言うことも聞いてくれなくなった。

同僚に分からない、できないと思われたくない。
失敗を恐れた結果、上手く相談できずミスに繋がる。怒られて萎縮する。自分の行動に自信が持てず咄嗟に動けない。できないと思われる。負のスパイラル。

「落ち着いて答えればいいんだよ。先生だって迷ってる姿を見せればいい。感情に任せて言う言葉は相手には響かない。それよりも、まず落ち着いて受け止めてこれからどうするか一緒に考えればいい。」
「会話は膨らんでいく風船を持っているのと一緒。自分だけで膨らませても破裂しちゃう。破裂する前に相手に渡さないと。自分が喋りすぎたり、相手に被せたりしちゃ駄目。」

子どもにも同僚にも聞けばよかったんだ。
『どうしようか?』
『ここはもう少し考えさせて。』
『そっか、どうしてそうなったの?』
私の頭の中で考えたことをそのままぶつけるのではなく、会話をキャッチボールしながら最適解を考える。
そのぐらい余裕を持って人と関わるのが大切なんだ。

正しさを伝えるのが教師の仕事だと思っていた。
でも、それはエゴなのだと分かった。
正しさへ導く。私らしい方法で。
それが大切なのだと。
母のお陰で気付かされた。
人生の先輩だ。

母には敵わない。

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