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1と1が交差するとき

先日、彼のご実家へご挨拶に伺った。
よく手入れされ、花が咲き誇る庭先。
細やかで丁寧な"営み"を感じた。

『こんな私が伺って大丈夫かな?』『うまく話せるかな?』と胸をどぎまぎさせながら玄関の中に入る。
彼のご両親は、「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくださった。
その表情に少し安堵する。


ご両親は朗らかに話しかけてくださった。
さすが彼のご両親だ。言葉の節々に優しさが滲み出る。
彼がこんなに立派に育つのも頷ける。

しかし、緊張で固まる私。
気の利いた返答もできない。
そんな自分に焦りつつも、これだけはちゃんと言おうと決めていた言葉があった。
彼が結婚の話を切り出してくれたタイミングで勇気を振り絞り伝えた。
「至らない私ですが、〇〇さんと支え合って生きていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします」
めちゃくちゃ噛んだ。台本読んでるみたいになったかな。恐る恐る下げた頭を上げると、
彼のご両親は、
「家族が増えるってね、心から嬉しい。こちらこそよろしくお願いします」
と微笑みながら言ってくださった。

そうか、家族になるのか。
血の繋がりの無い家族ってなんだろう。
別々に歩んでいた人同士の人生が交わるということ。
これからは共に手を取り合って進むということ。
定義だけ言えばそんな感じ?
彼と、彼のご家族と私は"家族"になるのだとふわふわ考える。

「明日、〇〇さんと××さんが来るから結婚のこと言わなきゃね!」
と弾んだ口調のお母様。
ご親戚の方々が、翌日、ご飯を食べに来られるらしい。
お正月とお盆ですら集まらない我が一族。
日常の何気ない時に一緒にご飯を食べるということなんて有り得ないから驚いた。

やっぱり私の生まれ育った環境とは大きく違う。
本来、家族って幸せなこと・苦しいことを共有できるような存在なんだよなってぼんやりと思う。
理想的だ。

私も家族になれるだろうか。
望ましい家族の形を知らない私が。
馴染めるだろうか。
うまくやれるだろうか。

でも、こんな私のことを"家族"と受け入れてくださったご恩は返していきたい。
彼も彼のご両親も尊重し、関係を築けるように努力したい。
どうすればいいか分からない時は、彼と対話をしながらこれから温かな家庭を新しく作り上げていきたい。

もともとは1と1だった2人だ。
すぐに一つには、きっとなれないだろう。
でも、彼と彼のご家族となら大丈夫なはず。

"家族"になるという不安と責任、喜びが混ざり合った一日。

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