【メンバーインタビュー】デジアナミクスチャ〜VUILD fabricationの限界を超えるものづくり〜
2020年5月12日、VUILDはデジタル建築のパイオニアとして本格的に建築領域へ参入するため、5軸加工機「BIESSE」を新たに導入、神奈川県横浜市に大型の建築工場をオープンしました。
これまでは3軸加工機「ShopBot」を活用して2.5次元加工のものづくりを行なってきましたが、BIESSEはShopBotよりも遥かに大型なため、加工の制約がなくなり、より複雑かつ大きなスケールでのものづくりが可能になります。
VUILDの“ひと”が日々何をやっているのか?を深堀するこのメンバーインタビューシリーズ。今回は、工場のオープンに伴いVUILDの「製造」を担うVUILD fabrication(通称fabチーム)に参画した、ファブリケーター・花田康史さんをご紹介します。
▼工場のオープンについてはこちら
ShopBotの限界とその先の出会い
現在fabチームでファブリケーターとして活躍している花田さんは、BIESSEでの加工を担う社内でも数少ないオペレーターの一人。ShopBotとは異なり、より高度な技術が必要になる5軸加工機ですが、VUILDに入る以前は何をされていたのでしょうか。
花田「もともと京都造形芸術大学の現代美術 / 写真コースで写真を学んでおり、1年生の時に大学内にあるウルトラファクトリーという工房で、現代美術作家であるヤノベケンジさんの立体物や巨大彫刻制作の手伝いを始めました。大学卒業後は、ウルトラファクトリーのテクニカルスタッフとしての工房運営や、ヤノベさんやdot architectsなどの美術作家や建築家の作品を学生と一緒に制作するプロジェクトを担当していました。
その工房に数年前、ShopBotを含むデジタル機材が導入されたことが、デジタルファブリケーションに触れるきっかけとなりました」
当時、業務内でアート作品や建築の案件を担当することも増え、ShopBotを使っていくなかでVUILDを知ったという花田さん。しかも代表者が同世代ということで、「こんなに面白いことを考えている人がいるんだ」とVUILDへの興味が深まっていったそう。そんな折、VUILDがファブリケーターを募集しているという情報が舞い込んできたそうです。
花田「VUILDはShopBotで出来る限界を突き詰めているけれど、それ以上先はあるのだろうか、とも思っていた矢先に、BIESSEを導入するという話を聞きました。発展途上の時に関わった方が絶対面白いと思ったので、入るなら今しかないと感じ応募しました」
そんなこんなで参画を決めた花田さん。大型の建築工場のオープンと共に、VUILDの製造を担う「fabチーム」が、正式に発足しました。
花田「fabチームは、VUILDの中で手を動かして最終的にかたちをアウトプットするチームです。EMARFはもちろん、他社と協業し思い描いているものを形にしています。
チームには現在、アルバイトを除くと5名のメンバーが在籍しており、僕は5軸加工機のオペレーションと全体のスケジュール管理、最終的な仕上げのチェックなどを担当しています」
自社内で設計から施工までを一気通貫して行えることが、VUILDの強みの一つ。一人一人の能力や経験は違えど、加工機を動かして最終的な仕上げまでを行うことが在籍メンバーに共通していることです。
また、fabチームが発足する以前はプロジェクト担当者が設計・加工も担当していたことから、VUILDメンバーの多くがShopBotの基本的な操作を習得しています。隙間時間に自分の好きなものを作ったりする様子が頻繁に垣間見えるのがVUILDらしさかもしれません。
そんな花田さんも、最近「ベッドサイドに置く棚が欲しい」というお母さんの要望を聞き、自作でプレゼントしたそう。前職では木材に加え、FRPや金属などの様々な素材を扱ってきたほか、塗装も多く行なってきた経験から、仕上げにこだわっています。
花田「冷たい飲み物などを置いてもシミができないように、天板にはウレタン塗料を塗って艶を出しました。他の部分は「オリオ」という家具などでよく使われる塗料で仕上げています。
塗料にはそれぞれ特性があり、例えばオイルは塗りすぎるとベタベタになってしまうので加減が難しかったりするんです。ガン吹きする時の塗膜は、一回で20μ(ミクロン)前後です。粒子自体も40μ程度で、塗料の垂れやムラが出来ないようにミクロとマクロの視点が必要だったりします。知らない方も多いと思うので、前職の経験を生かして皆さんに伝えていけたらと思っています」
主に木材を扱っているVUILDですが、花田さんのスキルを生かすことで、新しい一面を垣間見れそうな予感がします。
花田「例えばEMARFで作ったものに対して、仕上げでどこまで変化をつけられるか、みたいなことをやってみたいです。塗装するとガラッと雰囲気が変わるので、同じ木材で違う表情が作れたら面白いですよね」
使い手次第で飛躍するマシンの可能性
導入から1年が経ち、今やVUILDのものづくりに欠かせないマシンとなったBIESSE。これまでに沢山の加工を試行錯誤してきましたが、2020年10月に小田原で竣工した「camppod」のプロジェクトは、BIESSEを使い、一つの建築物を作り上げた初めてのプロジェクトだったことから、「感慨深かった」と語ってくれた花田さん。その一方で、「まだまだ使いこなせていない」と話します。
花田「BIESSEは、取り付けられる刃物の種類の選択肢が山のようにあり、ShopBotよりかなり加工の自由度が高いマシンです。その一方で、その分オペレーターの能力も試されていると感じています。僕らが面白いことを考えないと面白いことをやってくれないので、日々戦っている感覚です。
仕口の形状や相欠きの形状に関しても、自由度が高いからこそできる工法を研究したいねなどと先日、代表と話したりしていました。今はまだBIESSEの力を5割も引き出せてないと思います(笑)」
普段はVUILDの製造を担うfabチームですが、だからこそ、研究・開発を目的とした実験的な取り組みも積極的に行っています。
花田「fabチームでは、日々の業務のほかに研究開発にも力を入れています。VUILDはデジファブを使った建築という領域で先端を走っていますが、一方で、fabチームとして製造の点でも一歩先を目指したいと思っていて。
BIESSEやShopBotを使って終わりということではなく、それらを道具として使いながら、新しい工法で最先端のものを作る機関として活動していきたいです」
また、花田さんはこう続けます。
花田「個人的には、5軸加工機の技術や道具に頼り切ってしまうのではなく、そこに人間の知恵をもってして如何に介入していくか、そして如何に新しい表現や見たことのない建築を生み出せるかというところに興味があります。
今後、デジタルテクノロジーによってものづくりの在り方はどんどん変わっていくと思いますが、大工さんなどのテクニシャンも絶対に必要だと感じています。京都で印刷工房(主にシルクスクリーン)を運営している友人ともテクニシャンが活躍しやすい組織づくりを考えているところです。
建築分野だけでなく、アートやデザインの分野においてもどうなっていくのだろうということに興味があるし、最前線で実践しながら、今後もものづくりに関わっていきたいと思っています」
最後に、そんな花田さんのものづくりのルーツを聞いてみました。
花田「小さい頃、ゲームなどの遊び道具を買ってもらえなかったので、身の回りにあるもので遊具を作ったりして遊んでいました。それがすごく楽しかった記憶があったので大学は美大に進んだのですが、そこで、面白いアイデア持っている人はいるけど、形にできる人があまりにも少ないと感じたんです。
その時、自分はアナログ・デジタルに囚われず、思い描いたアイデアを形に出来る人になりたいと思ったことを覚えています。ものを作ることを、色んな技術を好き嫌いせずに続けていきたいですね」
手段を開拓しものづくりに向き合う花田さんの姿勢には、自らの手で「つくる」を切り開いてきた経験が原点となっているのかもしれません。
\仲間を募集しています!/
VUILD fabricationチームでは、現在一緒に働く仲間を探しています。
詳細は以下のリンクよりご覧ください。
また、BIESSEやShopBotのご購入に興味のある方は右記メールアドレスsales[a]vuild.co.jp*宛にご連絡ください。(*@に変えてご利用ください)