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「気づいていないこと」を認知する? 先入観や予断を持たずに意思決定する方法

私が意思決定を下す際に大切にしていることは、
「直感を信じる」ことと、「バイアスをできるだけ排除すること」の2点です。

これについては普段からかなり意識して訓練しています。

「直感」については前回お話しましたが、直感を鍛えるための核となるのが、普段から極力バイアスを排除して物事に接するという思考法です。

前回の記事はこちら

何かを決めるときにバイアスを持っていない人はいない

「直感」で下す決断には思考が邪魔になりますが、「直感」を鍛えるためには思考が欠かせない。禅問答のようですが、日々とんでもない数の、そして規模の決断をしている経営者の方にはわかっていただける感覚ではないかと思います。

バイアスとは、先入観、偏向を意味する言葉で、何かの情報に触れるとき、それを直感で判断する際にはどうしても邪魔になってくるものです。
最近「無意識バイアス(アンコンシャスバイアス)」という言葉を聞くようになりましたが、私たちは基本的に何らかのバイアスを持って世界に接しています。

「私は偏見のない人間だし、物事に接するときは常にバイアスなしで見ている」

みんなそう思いたいかもしれませんが、「差別」や「偏見」だけでなく、これまで生きてきた経験からくる「常識」や「良識」もある種の決めつけ、バイアスといえるものです。

アインシュタインは

「常識とは 18 歳までに身につけた偏見のコレクションである」

という言葉を残していますが、とにかくバイアスは誰にでもあるものという理解のもと、意思決定がそれに影響されないようなトレーニングを積んでいる人と、自分の中にあるバイアスに気づかないまま決断を下している人とでは、当然、導き出される答えは変わってきます。

ビジネス上の決断に必要な材料としてのデータとは?

私は、社員が持ってくる企画、データを基本的にはうのみにしません。

自分で考えた企画を通すために、それが成功する論拠、証拠としてデータを集める。企画を提案する立場、データを示す立場からは当たり前のことですが、社員から示されたデータや数字だけを根拠に意思決定を行うことにはある種の危険が付きまといます。

「こういうデータがある。だから、この試みは成功します」
世の中のすべての企画書には、たぶん「成功する理由」とその根拠が書き込まれているでしょう。でも、すべての企画が成功するわけではなく、私たち経営者は完璧なデータ、予測に基づいている企画書があっても、成功の保証にならないことを知っています。

要するに、企画書に書かれている説得力のあるデータ多数字は、「企画を実現させたい」立場の人の言い分、バイアスに基づいたデータでしかない可能性があるのです。

企画を立てる際に自分のやりたいこと、情熱を燃やせるものに取り組むことはとても大切ですが、ふと立ち止まって、自分の都合でデータを集めていないか? メリットばかりではなくデメリットもあるはずだ、失敗するとしたらどんなことが起きたときだろう? と自分の思考を客観視することは、もっと重要です。

人間の脳は、どんなに注意深く、目端の利く人でも、自分が興味を持ったものを優先的に認知し、興味がないものは認知しにくい、なかったことにしてしまう特性があるそうです。

脳の構造上そうならばもうどうしようもありませんが、自分が認知していない何かがあるはずだと、意識的に自分に見えていないものにフォーカスすることはできるはずです。

自分を知るために「弔辞」を想像する

以前、自分の「らしさ」を見つけるための社員研修のお話をしましたが、この『らしく研修』の中にも、直感を鍛えたり、バイアスを取り除いたりするトレーニングと相通じる項目があります。

これは、世界的ベストセラーで、ビジネス、人生哲学書の名著『7つの習慣』の中の第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」を拝借したものなのですが、自分が死んだところを想像してみる。弔問に訪れた人がどんなふうにあなたを思い浮かべるか? 弔辞ではどんなことが述べられているか? それを想像してみましょうという簡単なワークをやります。

弔辞で読み上げられた自分は、「みんなにこう記憶されたいという自分」=「こうありたいと思う自分」。これがその人自身の価値軸になります。

「自分のことは自分が一番よくわかっている」という人がいますが、実は自分が何者で、どんなことに価値を感じて、なにを大切にしているかに気づいていない人が多いのです。

私がこのワークを通じて社員に望むのは、「自分の棚卸し」

直感は、「自分が大切にしているもの」から発するし、それがこだわりや、これまで自分が築いてきた偏見というバイアスにもなり得る。

自分を知ることが、バイアスに惑わされず「よりいい直感」で決断を下すための第一歩になるのです。

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