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整備士一筋50年のじいさんが語る欧州車メーカー Top 7

今日は欧州車メーカーのTop 7を教えよう。みんな聞いてくるんだ。どの欧州車ブランドが一番いいですか?ってな。オレはここテキサス、古き良きアメリカにいるから、アメリカで普通に買える欧州車でいくぞ。フェラーリとかブガッティとかそんなエキゾチックな車じゃなくて、普通の車の話だ。まあ今回話す中では、ポルシェが一番高級って感じだろうな。オレが若いメカニックだった60年代、欧州車は本当に良かった。特にメルセデスは高い品質で知られていたが、今はかなり状況が変わってきている。だからお前が損をしないように、今の欧州車の良し悪しを教えよう。


7位(最下位)

フィアット / 500

7位、つまり最下位にランクインしたのはフィアットだ。まあ当たり前だな。今買える中で最悪の欧州車だ。ただし、フィアットクライスラーのことではなく、フィアットのことだ。数十年前、フィアットは販売不振が理由でアメリカから撤退した。まったく、クソみたいな車だったよ。誰もちゃんと修理できなかった。しかし、クライスラーを買収してフィアット・クライスラーになると、アメリカでフィアットの販売を再開したんだ。君も何年か前、よくテレビCMやってたの覚えてるだろ。あのフィアット500が海を渡ってニューヨークに上陸するやつだ。

あのときは5万台くらい売れたんだ。だけどフィアット500でさえアメリカ市場から撤退させたんだぞ。フィアットは全車種通して一年に数千台しか売れてねえんだよ。まあだからフィアットがアメリカから撤退することは、ある意味理にかなってるって感じだよな。そうそう、オレが若いメカニックだったころは、本当にひどい車だったぜ。全然アメリカ市場にそぐわないクルマなんだ。フィアット500を小さなかわいい車だと思っていた人たちが一定数いたんだよ。オレのお客でもいたんだ、自分の娘が大学へ行くために買ったって人がな。だけどよ、通学で500マイル(約800km)乗っただけでエンジンブローするって聞いた日には、そんなにかわいいと思えねえだろ。クオリティが低いとかのレベルじゃなく、クオリティがねえんだよ。あと、アメリカで売ってたフィアット500は全部メキシコ製で、質の低さで有名だったんだぜ。

フィアット / ヌオーヴァ500

6位

アルファロメオ / スパイダー ヴェローチェ

6位はイタリア車のアルファロメオだ。どうだ、意外だろ(皮肉です笑)。実際はフィアット・クライスラーの傘下だが、アメリカでは独自のブランドとして販売されている。アルファロメオは1990年代にアメリカから撤退したんだ。フィアットが販売不振でアメリカから撤退したのと同じだな。年間5,000台も売れなかったから、バイバイっつって消えたんだ。だけど、フィアットがクライスラーを買収してから、またアルファがアメリカに来たんだよ。で、2019年にアメリカで23,000台くらい売れたんだ。これが最高記録だった。もちろん今の売上はどん底だ。フィアット500とおんなじだよ。フィアット500は50,000台以上売れてたときもあったが、その後2,000台未満になった。みんな品質がクソなんだって知って、誰も買わなくなった。一度だけオレをだましたらお前の恥、二度もオレをだましたのならオレの恥ってか。(”Fool me once, shame on you; fool me twice, shame on me.”という英語のことわざで、一回失敗したら学習しろという意味)やつらはいつも、イタリアのスポーツカーのイメージを押し付けようとするんだ。そう、美しくて速くて本当に楽しい車って感じのやつだ。だけど残念ながら長くは乗れねえんだ。何か壊れるからな。だがな、オレはイタリア車の一貫性を高く評価してる。それは、前からクソみたいな車ばっか作って、今もクソみたいな車を作り続けてるところだ。ガソリンがめちゃくちゃ高いヨーロッパだとディーゼルのフィアット500が人気らしいぞ。ローマやロンドンで駐車できる小さな車が好まれるからな。向こうだとそんなに車使わんし。あとな、アルファはタダじゃねえってことが大事だ。当たり前だろって思っただろ。だけどな、アルファのスパイダーは68,000ドルもする。マツダ・ミアタ(マツダ・ロードスターの北米仕様)は26,000ドルで買えるが、ミアタは永遠に走り続けるしほとんど壊れねえ。日本人が高品質な小型車をアメリカ市場で売り始めたとき、イタリア車はもうボッコボコにされたんだ。ん?アメリカ人は小型車を作るのが苦手だって?そういうもんなんだからしょうがねえだろ。まあしかし日本車はイタリア車を完全に圧倒したな。

アルファロメオ / スパイダー
マツダ / ミアタ

5位

ミニ / One (BMW買収後)

5位はミニだ。お前は多分イギリスのかわいいミニを思い浮かべてるだろ。甘い。実質はBMWだ。確かにミニはイタリア車よりもよく作られるが、製造時の手抜きも結構多い。5、6年経つと、ハーネスとかプラスチック部品が溶け始めるんだ。安い部品つかってるからな。あと、BMW製品だから修理にハイテクなコンピューターが必要。特にアメリカだと部品の値段がアホみたいに高い(そして日本でも高い笑)。あるお客のミニの後輪のブレーキが摩耗していて、キャリパーやローターを交換しなきゃいけなかったとき、部品だけで700ドル(約11万円)以上かかった記憶がある。トヨタ用の同じような部品をオートゾーン(アメリカの自動車部品小売店。オートバックスみたいなもの)で買えば95ドル(約15,000円)で手に入る。BMWの部品代は高すぎるし長持ちしないんだ。常にエンジンブローしてる印象だよ。まあ前よりもちょっとはよくなってるがな。前も触媒コンバーターに問題があったんだが、保証入ってたのにBMWディーラーは無料で修理してくれないっていうんだよ。だからオレはディーラーに電話して「このでっかい触媒コンバーターを変えろ。7年未満だったら保証で無償交換しなきゃいけねえだろ。連邦法の義務だろ」って言ってやったんだ。そしたらやってくれた。とにかくやつらはお前に長く乗ってもらって、そこから修理費でいくら抜けるかってのを考えてるんだ。BMWだとよくあることだが、ミニでもそうだ。なんでって、ミニの修理代はBMW価格だからな。フォルムがかわいいってのがやつらの販売戦略だぞ。女はかわいいのが大好きだからわざわざ買っちゃうんだ。コンバーチブルがベビーカーっぽくてかわいい、なんつってな。ワーゲンのビートルを見てみろ。ポルシェ博士が作った頃のビートルは良かったが、新しいビートルはもう市場から消えただろ。なんでかって、クソみたいな車だったからだ。ミニも同じだ。かつての小さなホイールに頑丈でシンプルなトランスミッションを持つ古いミニと今のミニの間には全く何の関係もないだろ。あの古いミニはイギリスの自動車業界に革命を起こしたんだ。第二次世界大戦後、みんなサイドカー付きのオートバイで移動してた。そんな中、安くて小さくて信頼性の高いミニが登場すると、イギリス人はミニに群がり、何百万台も売れたんだ。だけど今のミニは全然関係ないただの重い車だぜ。遅えし。小さいけどすぐヘタってくるし。金が大事なら、ミニからは離れた方がいい。下位のグレードの車はあまり高価じゃないが、そんなに作りがいいわけじゃないぞ。

BMC / モーリス・ミニ マイナー(BMWによる買収前のモデル)

4位

フォルクスワーゲン / ニュービートル

4位はフォルクスワーゲンだ。フォルクスワーゲン、ポルシェ、アウディはフォルクスワーゲンが所有している。はっきり言って、オレはフォルクスワーゲンのファンじゃない。だけど、間違いなくミニよりも品質が良いと言わざるを得ない。フォルクスワーゲンはたくさん車を売ってきた。数年前なんてトヨタよりたくさん売って1位になった。今はトヨタがトップだが、フォルクスワーゲンは市場が求めるものに合わせて車を作るんだ。アメリカ市場向けには速い車を作り、ヨーロッパ市場向けにはディーゼルで燃費が良いけど遅い車を作ってる。あと、ディーゼル排気ガスの不正スキャンダルはひどかった。会社の執行部もあんまり信用できねえな。不正に対処したふりをしてたが、カリフォルニアの賢い奴が本当は対処されてなかったことを見つけたおかげで、多額の罰金を支払うことになった。まあドイツにいる役員は刑務所行きだろうが、やつらがアメリカに戻って来て裁判を受けることはもうない。最も被害を出したアメリカで刑務所に行かねえんだ。このディーゼルエンジンは燃費とパワー向上した代わりにNOx排出量が増えたんだ。おかしなことだよな。ルールに従っていれば、何も問題なかったのに。あと、アメリカではディーゼル車はそんなに人気じゃない。普通のアメリカ人はガソリン車が好きだから。そう、ミニよりもフォルクスワーゲンの方が良いんだが、ミッションが致命的にダメなんだ。フォルクスワーゲンのデュアルクラッチトランスミッション(DCT)はダメだ。このゴミみたいなミッションはリビルドするのに大体5,000 ~ 7,000ドル(約77万円から100万円程度)かかるぞ。ミッションが壊れる頃には、車の価値がミッション修理費以上にない場合がほとんどだ。だから修理する価値がない。フォルクスワーゲン、ポルシェ、アウディを見ると、なんか間違った方向に進んでしまったように感じるよ。ポルシェとアウディのテクノロジーをフォルクスワーゲンに取り入れた結果、シンプルな車が複雑になってしまった。だから、もう安く直せて信頼性がある車じゃない。それに、彼らは安上がりなフォルクスワーゲンのテクノロジーをポルシェやアウディに取り入れちゃったから、ポルシェとアウディも昔ほどよくできていない。つまり、お互いに何の利益もない結果になってしまった。ポルシェとアウディも年数が経つにつれてエンドレス金食い虫になる。オレが若い整備士だった頃もなんでこんなばかげた設計をするんだろうって思ったよ。なんでファンベルトを交換するためにエンジンマウントを外してエンジン上げる必要があるんだって、なんでだよ?車がまだ今よりシンプルだった頃の話だぜ。今、アウディのディーラーは車のフロント下に足回りの部品が集まってるから効率的だって主張してる。オイル交換の時も下のドレンプラグから抜かないで、オイルレベルゲージの穴にチューブを差し込んで吸い出すだけなんだってな。ディーラーがそうするんだ。メカニックはみんなオイルタンクの底にきったねえオイルがドロドロになって溜まってるのを知ってる。それを取り除くためにドレンプラグが底にあるんだよ。上から吸うとその汚えオイルが中に残るんだが、まあやつらは気にしないんだろう。エンジンを長持ちさせたくねえんだな。レベルゲージがないやつもあるんだぞ。ドイツ車はとにかく変なテクノロジーを詰め込みすぎなんだ。

フォルクスワーゲン / タイプ1(旧型ビートル)

3位

メルセデスベンツ / Sクラス 420 SEL W126

3位はメルセデス・ベンツだ。品質は明らかにフォルクスワーゲンよりも高い。昔は素晴らしい車だったけど、できる限りテクノロジーを詰め込もうとした結果おかしくなってしまった。最新のメルセデスには1台に80以上のマイクロプロセッサが搭載されているものもあるぜ。修理するにはメルセデス専用のテスターが必要で、めちゃくちゃ値段が高い。車を修理するための機械がそもそも高いし、部品も非常に高価だ。そして、昔みたく高品質じゃない。たとえばな、新品のメルセデスSクラスを112,000ドル(約1800万円)で買ったとする。10年経った時リセールバリューはいくらになるか知ってるか?3,800ドル(約60万円)だよ。一応走るんだが、問題だらけなんだ。60年代のようにベンツが50万マイル(80万キロ)以上走れるとまだ思ってるんだったら、そんなのディズニーランドの中に住んでるのとおなじだ。たしかに彼らは今でも素晴らしいエンジンを作っているよ、それは認める。問題はコスパが悪すぎるってことなんだ。レクサスを買った方がずっと良いぞ。50万マイルくらいは持つし修理もほとんどいらない。メルセデスだと維持に多額の費用がかかるんだ。コンピュータやプラスチック部品は壊れると莫大な費用がかかる。そして、部品を交換するときに車をまたプログラミングしなきゃいけないんだ。例えば、最近のメルセデスにはオイルレベルゲージがない。コンピュータに繋がってるセンサーで測るんだけど、そのセンサーも壊れるんだ。結局オイルの量がわからないからそのまま放置して、エンジンブローする。何度も見てきたよ。多分壊れたら新しいベンツをまた買えってことなんだろうな。昔はそうじゃなかったけど、今はそうなんだ。メルセデスはブランドイメージで車を売っているんだ。

メルセデスベンツ / Sクラス W221

2位

BMW / M3 E30 

2位はBMWだ。”Ultimate Driving Machine”だ(英語圏でのBMWのスローガンは”Sheer Driving Pleasure”と”Ultimate Driving Machine”、日本だと「駆け抜ける歓び」)。BMWはいつも素晴らしいエンジンを作る、それには議論の余地はない。トランスミッションはますます良くなってきている、なぜならZF社製だからな。ここはドイツの会社で、非常に良いトランスミッションを作っているんだ。例えば、ZF社は自社のZF 8HP 8速オートマチックトランスミッションを世界中のメーカーに合計300万台以上販売している。だがな、車は非常に高価で、維持費も高いし修理費用も超高い。BMWの車には死ぬほど大量のマイクロプロセッサが入っているし、おそらくどのドイツメーカーよりもひどいプラスチックの使い方をしてる。9年くらい経つと、プラスチックが全部割れるんだ。修理費で何千ドルもかかるから、大体のお客はその時に車を手放すんだ。まあ、やっぱりBMWを運転するのは楽しい。特にMシリーズは最高だ。オレが感じるに、メルセデスAMGよりもよく作られている。もしお前に金があって究極のドライビングマシンを求めるなら、買ってみるのも手だ。でも、車代も修理代も高いってことを覚悟しろよ。昔ほどコスパはよくないし、以前ほどよく作られてるわけでもない。だから、車を買ってるというより、ほんとはBMWってブランドを高額で買ってるんだってことはちゃんと認識した方がいい。MシリーズのBMWを除いて、リセールバリューはゴミ以下だ。修理費が高いからな。だから中古が安いからといって、14万マイル(23万キロ)以上走っている中古車は買っちゃダメだ。買ったその瞬間からもう壊れてるし、直すのに莫大な金がかかるからだ。もし購入したいと思うなら、整備士のお墨付きがある数千ドルの車両にした方がいい。良いおもちゃになるぞ。ただ、毎日通勤通学で使うとかはやめろ。年間15,000マイル(25,000キロ)以上乗ると壊れるぞ。はじめのうちはみんなBMWに満足するんだ。だが、年数が経つにつれてウザくなってくる。あと、オーナーの大半は医者とか弁護士とか、いわゆる高給取りだ。彼らは6、7年乗って売るだけだから良いんだが、10年以上乗る場合はお金の面で覚悟が必要だ。

BMW / 335i クーペ E92

1位

ボルボ / P1800

1位はボルボだ。ボルボはもはやヨーロッパの会社ではなく中国企業だ。それでもまだヨーロッパで製造しているがな。今生産拠点を中国に移そうとしているみたいだ。中国企業だからか、ハイブリッド車と電気自動車にしか興味がないみたいだな。もう今後はガソリン車やディーゼル車を製造しない方針なんだろう。ボルボは素晴らしい車だったよ。まだ下っぱの整備士だった1960年代に、オレの叔母がP1800で50万マイルも走ったんだ。文句のつけどころがない素晴らしいスポーツカーで、マニュアルトランスミッション、それにデュアルストロンバーグキャブレターが付いていたんだ。つまり、すごくシンプルに作られた車で維持も簡単だったってことだ。ロングアイランドに住んでた元教師も確か300万マイル(480万キロ)以上走って話題になってたな。

本当に堅牢に作られた車だったよ。今も良い車を作ってることは確かだが、当時のあれほど堅牢じゃない。大量生産し始めたとき、一部の前輪駆動車のトランスミッションに少し問題があったりしたんだ。まあ解決されたんだが。新車価格が高いことを気にしない限り、かなり良い車なことは間違いない。さっき言ったように、今や中国企業が所有しているからハイブリッド車と電気自動車をメインにしていくんだろうな。どうなるかはわからんが、本当に信頼性の高い、堅牢な車を作り続けるとオレは思う。もちろん、ボルボは世界で初めて安全性にこだわった会社で、エアバッグやシートベルトを初めて車に搭載した。エンジンも常に頑丈で信頼性が高い。FFのオートマチックトランスミッションに発生していた問題を解決してからはミッション系の問題も無くなった。昔のFRにはほとんど問題がなかったが、最近のFFのトランスミッションも良くなっている。先日乗ったボルボにはアイシン製オートマチックトランスミッションが載ってた。トヨタ車とおんなじミッションだ。他の欧州車とは異なり、中古のボルボを購入して何年も保有しているお客は何人もいる。残念ながらボルボには欧州車っていうイメージがまだ根強くて、金食い虫だって思い込んでる人がいる。だけど、中古の10万マイルくらい(16万キロ)のボルボを2、3千ドルで買って、そっからさらに10万マイルくらい走らせたお客がたくさんいる。もし欧州車が欲しいなら、ボルボはかなりおすすめだ。もちろん、オレみたいな腕利きの整備士がチェックした車両ならなお良しだ。

欧州車についてちょっと詳しくなれたかい?これを読んだ君なら良い車を選べるだろう。

また次回!!


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