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次世代検索エンジンNeevaが持つ意味

Neevaは個人情報が保護される検索エンジンです。2018年までGoogle Advertisingの責任者を勤めていたSridhar Ramaswamy氏が設立しました。同社は最近、3億ドル(約3,200億円)の評価額で4,000万ドル(約430億円)を調達しています。投資家には、LinkedInを設立したGreylockのReid Hoffman氏、GoogleでEVPを務めたSequoia CapitalのBill Coughran氏、GoogleでCFOを務めたInoviaのPatrick Pichette氏がいます。また、チームには、Chromeの開発に15年以上を費やしたDarin Fisherなどが参加しています。相当豪華ですね。

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Neevaは広告ではなく、「サブスク」で収益を上げます。そう、ユーザーはNeevaの検索エンジンを利用するために、月額5~10ドルの料金を支払うことになります。その対価として、ユーザーは「広告が中心」にある検索結果ではなく「ユーザーが中心」にいる検索結果を得ることができます。Googleで検索すると、最初に出てくるのは広告ですね。しかし、Neevaでは、あなたが最も興味を持っているであろう製品のレビューをもとにした結果が表示されます。もちろん、広告のない検索エンジンが出てきたのは大きなニュースであり、それだけでも十分にワクワクします。

しかし、これは単純な検索というものをはるかに超えて、とても重要な意味を持っていると私は考えています。Neevaはユーザーの個人情報の扱いにおいて根本的に違うアプローチをとっていて、そのアプローチはSiriやAlexa、GoogleアシスタントなどのAIアシスタントを構築する上で、非常に強力な武器になるかも知れません。Neevaから(もしくは同じアプローチをとる他の会社)SiriやGoogleアシスタントおよりも精度の高いAIアシスタントがより早く市場に出る可能性すらあると思います。

私たちがGoogleをタダで使えるのは、Googleが広告でお金を稼いでいるからです。実際、ほとんどのインターネットメディア事業は、広告で収益を上げています。Googleはユーザーの行動に基づいて必要な広告を表示し、広告主はGoogleにお金を払い、Googleはそのお金で会社を回していく。これが、Googleの根幹となる広告ビジネスモデルです。

これによって二つの現象が起こります。まず、Googleは営利企業で、多くの株主の目もあるので、できるだけ広告収益を最大化しないといけません。ただし、広告主が中心にある考え方を持つことになり、ユーザーにとっては必ずしも理想とは言い難いUser Experienceを提供することになります。例えば、ある製品のウェブサイトを訪れた後、どこのウェブサイトに行ってもその製品の広告がついてくるという経験を誰もがしているはずです。ちょっとうざいし怖いですよね。

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2つ目は、1つ目よりも重要なことですが、ユーザーたちはGoogleに自分たちのデータを渡すインセンティブがなく、できるだけGoogleにデータを渡さないようになってきているということです。Netflixドキュメンタリの「The Social Dilemma」でも批判していますが、Googleに限らず、多くテック企業は、タダのサービスを提供するためにユーザーのデータをマネタイズしなければなりません。彼らが可能な限り多様で華麗な方法でユーザーのデータを取得しようとする中、多くのユーザーはそこから逃げようとしています。誰も自分のデータをどうぞと渡したくないからですね。最近はGDPRやCCPAなどの新しい個人情報規制もユーザーたちを助けていますよね。ちなみにこのドキュメンタリはとてもおすすめです。

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Neevaの話に戻りましょう。同社のマネタイズモデルは、広告からの収益に依存していません。その代わりに、先ほど述べたように、サブスクを通じてユーザーから収益を得ています。つまり、広告主がユーザー体験を阻害することなく、ユーザーのデータも収益化する必要がないということです。これは、検索エンジンとして根本的に違うアプローチです。ユーザーは自分のデータが自分のためだけに使われることを知っているいて、より自分に必要な検索結果・パーソナライズされた検索結果を得るために、どんどんとデータをNeevaと共有するインセンティブが生まれます。

実際、Neevaはすでにユーザーの個人情報にアクセスしています。ユーザーが情報を検索すると、ウェブ上の情報だけでなく、電子メールなどからも検索結果を返します。これにより、検索結果はよりパーソナライズされた、より良いものとなります。ユーザーがNeevaを利用する時間が長くなればなるほど、Neevaは当然スマートになります。より多くの個人情報が検索結果に組み込まれ、Neevaはユーザーのことをもっと分かるようになります。これは言い換えると、ユーザーは自分のことをよく知っている自分専用のAIアシスタントのような検索エンジンを持つことになると同じではないかと思います。自分のことをよく知っているので、ユーザーが質問する前に、答え(検索結果)を教えてくれるかもしれません。映画「Her」でスカーレット・ヨハンソンが声優を務めたAIガールフレンドのようになるのではないでしょうか。これはとても良い映画で私のお気に入りの映画のひとつです。この映画を見ていただくと、イメージが沸くと思います。

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Reference:

- Neeva: https://neeva.co/
- After Building Google’s Advertising Business, This Founder Is Creating An Ad-Free Alternative - https://www.forbes.com/sites/martyswant/2021/03/08/after-building-googles-advertising-business-this-founder-is-creating-an-ad-free-alternative/?sh=5706a8ddf6ac

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