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#58 YC(Yコンビネータ)の未来

ポール・グレアムをはじめとする数名によって設立されたYCombinator(YC)は、最も有名で成功したスタートアップアクセラレータです。2005年に設立された最初のアクセラレータプログラムの1つとして(Techstartsは2006年、500 Startupsは2010年設立)、Airbnb, Dropbox, Coinbase, Stripe, Instacartといった数々の有名スタートアップがYCを卒業しています。

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YCのデモ・デーは、シリコンバレーで最もホットなイベントの一つとして確立されました。新しいバッチは年に2回開かれますが、新しいバッチが開かれるときにはベンチャーキャピタリスト、スタートアップ創業者、メディア関係者のみんなから注目が集まります。ベンチャーキャピタリストは、新しいバッチが始まると、次のAirbnbになるスタートアップを見つけ、デモ・デーで爆発的な人気が出る前に投資を済ますことすらよく起きています。デモ・デー当日には、YCのスタートアップへの投資機会を求めて、多くの人々が参加します。あまりにも需要が高く、全員が会場に入ることができないため、パンデミックの前から既にピッチをリモートで配信しています。直接会場で参加できなかったベンチャーキャピタリストたちはパソコンの前に集まり、ピッチを見ながら気になるスタートアップに投資ができるように必死に努力します。

また、YCに参加したスタートアップの創業者たちは強力なコミュニティーを作っています。バッチに参加中だけでなく、バッチが終わった後も、お互いに助け合ったり情報を共有したりします。まるで「ハーバード大学卒業生」のような感じで、YCに参加したこと自体がステータスになり、自分達のプロフィールに「YC XXX」というタイトルを自らつけるのは珍しいことではありません。

しかし、このような注目とお金が集まるにつれ、いくつかの課題も出てきている。例えば、YCのステータスのおかげで、スタートアップの実際の中身とは関係なくYCに入っていることだけで高いバリュエーションが着く傾向があります。約10週間のバッチを通じて、会社としては何も進展がなくてもバリュエーションが高くなってしまうのです。面白い現象として、「プレYC」ラウンドのスタートアップに投資をし、彼らがYCに入ることを支援するベンチャーキャピタルも出てきています。自分達の投資先スタートアップがYCに参加すれば、自動的にバリュエーションが高くなるからです。

また、1バッチあたりのスタートアップの数の変化です。2005年の最初のバッチでは、11社しかありませんでした。最近のバッチでは、今までの最高の数である401社が参加していて、その数は年々高くなってきています。バリュエーションが高くなることや、参加スタートアップの数が増えることは当然、YCのブランド力、つまり「YC=いけてるスタートアップ」というシグナリングパワーを希薄にするリスクを高めます。

同時に、新たな競合も現れています。良い例としては、トップティアの著名VCの一つであるFounders Fundなどのファンドから資金調達をしている、新しいタイプのコミュニティ主導型プログラムであるOnDeckや、セコイアキャピタルとアンドリーセン・ホロウィッツが親会社のPrologueを通じて支援するHyperなどがあります。私自身もOnDeckのフェローですが、ここ1年でOnDeckのコミュニティがいかに急速に成長したかを目にしています。

これらの課題にもかかわらず、少なくとも今は、YCはシグナリング・アクセラレータとしての地位を保っています。全く同じことをする2つのスタートアップがあったとして、片方がYCスタートアップとしたら、当然そっちの方がより注目を集めます。また、スタートアップ創業者としてYCに参加し、後にベンチャーキャピタリストになる人もいます。投資家としてYCのコミュニティの一員であることは、間違いなく強いメリットになります。

まだ今は健在ではあるものの、いろいろなチャレンジや競合が現れてきている中、いつYCが今のブランド力を失っていく可能性もあるため、彼らが今後どのようなポジショニングをしていくのかを注視する必要があります。同時に、新しいトレンドを流れを捕まえるために新しいアクセラレータやコミュニティーにも積極的に関わっていくことが重要になっていくと思います。

References:
・Y Combinator = Growth - https://www.newcomer.co/p/y-combinator-growth
・Ondeck - https://www.beondeck.com/  
・Introducing Prologue - https://writings.prologue.xyz/introducing-prologue/

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