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#44 ベンチャーエコシステムの新しい食物連鎖

ベンチャーキャピタルは誰のお金でスタートアップに投資をするのでしょうか。ベンチャーキャピタルのエコシステムには、お金の「食物連鎖」があります。スタートアップ企業はベンチャーキャピタルから資金を調達して、ベンチャーキャピタルはリミテッド・パートナーと呼ばれるVCの投資家から資金を調達します。リミテッド・パートナーには様々な種類があり、例えば、年金基金もその一つです。ですので、考え方によっては年金を払っている私たちは、ベンチャーキャキャピタルのエコシステムの食物連鎖の頂点にいるとも言えます(リミテッド・パートナーは、有限責任を持つパートナシップの一つですが、ここでは詳細な説明は省略します)。

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ベンチャーキャピタルとリミテッド・パートナーの間には多少複雑な食物連鎖が存在します。例えば、ファンド・オブ・ファンズのように、リミテッド・パートナーとベンチャーキャピタルの橋渡しをする投資家、ゲートキーパーと呼ばれる投資家もいます。ベンチャーキャピタルから見れば、ファンド・オブ・ファンズはリミテッド・パートナーになりますが、彼らには年金基金など、さらに自分たちのリミテッド・パートナーがいるのです。

一方で、反対側であるスタートアップ側の食物連鎖は比較的に簡単です。スタートアップは、ベンチャーキャピタルから資金を調達する、というシンプルな連鎖です。ただ、ここも最近少しずつ複雑になってきています。

ここ数年、新しいベンチャーキャピタルがどんどん立ち上がっています。特に、小規模なマイクロファンドの数が急増していています。ファンドが小さいことは投資額も小さいことを意味していて、主にプレシードやインキュベーションなどの初期段階のファーストチェックライターとして投資を行います。これらのファンドは、ジェネラルパートナーが1人しかいないシングルGPのファンドが多く、大型ファンドよりも投資判断などにおいてより早く行動することができます。

このような利点から、彼らはスタートアップと既存のベンチャーキャピタルの間の新しい存在になりつつあります。既存のベンチャーキャピタルは、上で紹介したマイクロファンドに投資し、それらマイクロファンドが初期段階のスタートアップに投資します。

既存のベンチャーキャピタルとしてアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)、ベインキャピタル(Bain Capital)、トライブキャピタル(Tribe Capital)などの大手ファンドの名前をよく聞きます。また、タイガーグロバル(Tiger Global)も良く耳にするファンドです。彼らはマイクロファンドに積極的に投資しています。場合によっては、ファンド自身として投資をする場合もあれば、個々のジェネラルパートナーが個人として投資することもあります。

このような流れには二つの理由があります。まず、明らかな理由ですが、ディールソーシングが挙げられます。前述の通り、マイクロファンドは初期段階のスタートアップに一番近いところで、最も早くスタートアップに投資をすることが多いです。既存のベンチャーキャピタルは、マイクロファンドを通じて、そのようなスタートアップへのアクセスを狙います。マイクロファンドの投資先スタートアップが成長していくにつれて、既存のベンチャーキャピタルもそれらのスタートアップに投資をするのです。

もう一つの理由は、彼らは次のセコイア・キャピタルになるかもしれない、次の数十年の技術革新を牽引するであろう若いファンドを支援したいという気持ちがあるからです。さらに、ファンド投資による投資収益を得ることもできます。ベンチャーキャピタルファンドの著名データープロバイダーであるCambridge Associatesのデータによると、最も高いリターンを出すのは、3号以降の大型ファンドではなく、規模の小さい1号・2号ファンドの方が多いです。投資を受けるマイクロファンド、投資をする大型ファンド、両方にとってWin-Winな関係が成り立つのです。

これはベンチャーキャピタルのエコシステムにとってポジティブな展開です。多様なバックグラウンドを持つ若いファンドにとっては新しい資金調達の機会を得ることが出来ますし、スタートアップにとってもより多くの資金調達のオプションが出来ます。

このように食物連鎖が複雑化することは、米国以外の他の国のベンチャーキャピタル市場ではまだ進んでないですが、日本を含む他の地域でも似ているようなことが起きるのは時間の問題かも知れません。

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References:
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