吐く息が雪色に染まる早朝だというのに、カシミアのマフラーはぎゅうと鞄に押し込められてしまった。肩越しの景色が待ち遠しくて、廊下を蹴るローファーを拍動が追い越してゆく。鏡の中でリボンがいじらしく揺れるのがくすぐったい。胸の奥で無邪気な蝶が羽ばたいて、どうしようもなく瞼が熱かった。

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