列車を降りた頃、空を覆っていた真っ白な雲はすっかり風に流されて、濡れた石畳がきらりと光るだけだった。歩を進めるごとに輪郭を濃くする影に、仄かにこぼれた光が歪に揺れては溶ける。雫をのせたイチョウが視界の端で空気を反射して、露が瞼を撫でた。ペトリコールは白煙と混ざってもうわからない。

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