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「副業解禁」が解放するもの(3)〜副業って三方よし?〜

この「副業解禁」が解放するものシリーズも3回目になりました。ちょこっとだけですが、見てくれてる人もいるようです。ありがとうございます。ちなみに、「それってどういうことなの?」とか「ほんと?」とかいうことがあれば、コメントに薄くぶつけてもらえればと思います。あんまり厚く、熱く、暑くぶつけられるとお返事しないかもしれません。何しろ、シューゲイザーなので。

さて、今日もまずスライドをざっと眺めてみてください。夜空の星を見るように。

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副業は三方よし(?)

今まで、副業はバレずにやるもの、という位置付けでしたが、最近では、オススメする企業も増えています。そうした企業をざっと見てみると、副業をいわゆる三方よしと捉えている企業が多いようです。伊藤忠さんのホームページによると三方よしとは以下のような考え方です。

近江商人の経営哲学のひとつとして「三方よし」が広く知られている。「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方だ。

副業の場合は、三方が「売り手よし、買い手よし、世間よし」というよりも、「社員よし、会社よし、世間よし」となります。それぞれの’’よし!”を一つひとつ見てみましょう。

社員よし!

2018年の4月に副業制度を導入したユニ・チャームさんは、狙いをこんな風に定義しています。

・ 副業制度を導入することで社員のさらなる成長を支援する。
・ 社員が会社と異なる環境で新たなスキルや専門性を身につける
・ 能力を発揮する機会や人脈を広げる機会を得る。

わかりやすい。

ユニ・チャーム外での活動を通じて、社員にもっと成長してもらいたい、という狙いがあるようです。副業は社員の成長につながる、という考え方です。

サイボウズさんやYahooさんといった会社は、やりたいことが会社の外にもあった時に、会社を辞めてそれに取り組むよりも、会社もやりながら、自分が本業でやれていないこともやる、という価値観や働き方が、社員の自分自身とそれを認めてくれる会社への満足度につながる、という考え方を持っているように見えます。会社以外での自己実現の道を閉ざさない、いや、拓くという考え方、自己実現やモチベーションアップを期待していますね。

会社よし!!

更には、会社の外での刺激を本業でも活かしていきたい、企業があります。たとえば、ソフトバンクさんです。

社内の人間だけではなく、社外のまったく異なる既存知を持つ人とともに活動する副業は、イノベーションを生み出すきっかけになる可能性があるのではないかと考えました。

普段とは違う発想と出会い、いつもの仕事と掛け合わせ、今までにないひらめきが生まれ、新たな事業につながるかもしれない。新たな事業の創発やイノベーションへの期待があるようです。

こうした考えや期待の根っこにあるのは、会社の外で働くことが、本人のためにも、会社のためにもなる、という考え方です。でも、それって「全てを背負うから、すべて委ねて」という「会社に全てを捧げてね」モデルからは遠い世界のようにも感じます。

世間よし!!!

副業に取り組む人は、「もっと稼ぎたい」よりも「もっと成長したい」、「世の中に役立ちたい」という想いを持つ方が多いようです。本業で経済的安定を確保できているからなのかもしれません。

そのため、面白いことをやっているんだけれど、お金がないベンチャーが普段は高額なフィーをもらっている弁護士から安価にアドバイスをもらったり、仕事の仕組み化が不十分で常に目の前の仕事に追われているNPOが優秀なコンサルタントから生産性の高い働き方の指南を低廉に受けられたりします。

また、「副」業として、労働力の一部を本業から離脱させる、のは、自分の労働力の一部だけを「転職」させるような側面があります。「ほんとは他の会社にチャレンジしたいけど”嫁ブロック”がきつくてさ」と言ったケースでも、自分の労働力の10%だけを転職させて、フル転職のリスクを分散しながらお試しをする、といったこともできます。それによって、人材の流動性は高まらないかもしれませんが、労働力の流動性は高まります。

会社の中でその人のポテンシャルがほとんど活かされていない、というケースは大組織では往々にしてあります。飼い殺し、塩漬け、社内失業と言った極端なケースもあれば、意欲も能力もあるのに、適当な仕事を与えられていないというスキルとタスクのミスマッチもあります。そんな時、その人そのものを他の組織に動かしたり、仕事の中身をすっかり変えたりするのは難しいかもしれませんが、副業を通じて、労働力のマッチング度合いを上げ、労働力の活用度合いを上げていくことができる可能性もあります。深刻な労働力不足の状況では、希少資源としての労働力を効果的に活用していくことは、当然社会にとってもありがたい話です。

会社にとっても、本人にとっても、そして、社会にとっても嬉しい(はず)、それが今の時代の副業観です。

一見、良いことずくめ的な最近の副業ですが、ここで最初の疑問に立ち返ります。

「え?、会社ってそもそも"全部委ねて"って言ってなかったっけ?」

この記事の(1)、(2)で取り上げてきたのは「会社が全部を背負うから、あなたのすべてを委ねてね」という日本の雇用の仕組みです。しかし、今回取り上げた取り組みは、すべて委ねて、というよりも、「いや、会社の外でも頑張っておいで」と言っているようにも見えます。

もちろん、そうした会社は昔からあったと思いますが、最近に特徴的なのは、その数が増えてきています(厚生労働省の調べによると、2017年時点で、副業・兼業の「推進していないが容認している」企業が14.7%、リクルートキャリアさんの調べによると、2018年時点で28.8%の企業が「兼業・副業容認派」)

また、多くの企業の就業規則の雛形となっている厚生労働省のモデル就業規則も、2018年に改正されました。前回紹介した「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という項目は削除され、「副業・兼業」という項目が新設されました。項目新設に加えて、「就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけていただくことが肝要です」と言ったガイドまで附則されています。ダメよ、が一転、ダメよとしてたルール自体がダメだったのよ、と言っているような感すらあります。

全部委ねて、と言ってきた会社が、なぜここにきて、会社以外での活動を良きものとする、と考え始めたのでしょうか。また、その流れが社会的にも後押しされているように見えます、

それは、「社員の成長につながるから」、「新規事業を生み出す可能性が高まるから」、「世の中にとっても良いことだから」。ほんとにそうでしょうか?いや、ほんとにそれ「だけ」でしょうか?

もちろん「三方よし」であることが副業を力強く後押ししていると思っています。しかし、それだけではないと思っています。では、それが何なのか?「全て背負うから、すべて委ねて」モデルに立ち返って、次回から少し深掘りしていきたいと思います。

と言うことで、今日の分はここでおしまいとなります。

(3)のまとめ

・副業は、三方よし。社員よし、会社よし、世間よし。社員の成長にも繋がるし、新規事業はイノベーションの促進にもつながりそう。今までにないマッチングが生まれることで世の中にも良さそう。
・実際、副業・兼業を容認する会社も増えつつあり、厚生労働省もモデル就業規則の改定で「必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのない」ことを求めている。
・でも、本当に三方よしだけが、理由なのか?ほんとはもっと別の背景があるのかもしれない。なぜなら、副業解禁の考え方は今までの日本の雇用の仕組みとぶつかっているのだから。

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(4)失われたフィット、内側から崩れたモデル
(5)下ろした荷物

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