見出し画像

something about me 1-2

something about me 1-2
「本当の幸福がないように
本当の不幸はない。」
1982年 ジュリアス ペルシャーニ
僕の頭にはずっと前からこの言葉が存在していた。あるとき幸せな時にはこの言葉は戒めになったし、不幸な時には救いになった。
いつ頃からだろう。思っている事を口にするのが難しくなったんだ。
いつだって、言いたいことはたくさんあった。
引き出しはいつも溢れそうだったし、オアシスは湿地帯のごとく僕の砂漠の中にあった。そのある時を境に(ある時をしっかりと定めることはできないけれど)引き出しはパタンと閉まり、オアシスは枯れ果て僕は砂漠の中を1人歩いた。

something about me 1-2

彼女はいつだってエンドロールを最後まで見ていた。僕は空のポップコーンをまさぐりながら彼女に付き合っていた。バランスの取り方を忘れていた僕は残ったコーラを飲み干して炭酸の抜けた砂糖水を啜った。彼女は現実への戻り方を忘れていた。だから映画が終わった後はアメリカ式の気どった態度を見せたり、フランス式の愛しかたをした。そのうち彼女はどこかに消えてしまい、僕は1人現実に残された。今ごろ彼女はフィルムの中でおどけた表情をしている。

something about me 1-2

「そこのリモコンで動くから、やってみなよ」
修はタイムマシンを作った。今のところそれは未来にしか行けない。「ここを押すの?」「その赤いやつさ、押せば10年後だ。」僕はボタンを押した。10年後だ。戻り方を聞くのを忘れていた。僕の人生は10年が進んでいた。その間に得るはずだった知識も経験もすっ飛ばして。
でもまぁいい。だって前の前の10年だって飛んできたようなものだし。

今日のsomething about me
そして明日のsomething about me

#コラム ってなに #連載 はいつから
#小説 家の嫁 #自分 と僕と東京タワー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?