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Before it Ends(Når befrielsen kommer)

北欧最大の映画祭、ヨーテボリ国際映画祭へ。やはりせっかくなので北欧映画を見ようとデンマーク映画🇩🇰を。

Before it Ends(Når befrielsen kommer)

第二次世界大戦終戦期(1945年)、ドイツ占領下にあったデンマークのとある高等学校を舞台にした歴史フィクション(実話に基づいている)。

ロシア軍のドイツ侵攻を受け、25万人を超えるドイツ難民がデンマークに移送された。ドイツ軍はデンマーク各地で学校を接収し、難民の収容を迫る。しぶしぶドイツ軍が管理することを前提に場所を提供する校長たち。しかしいざ輸送が始まると、事前に約束した数よりもはるかに多い人数を押し付け、食料や医薬品は一切提供せず、軍医も引き上げ。劣悪な環境におかれた難民の間では飢餓や疫病が蔓延し、老人や子供を中心に死者が折り重なっていく。人道的見地と、一方で戦時下にありレジスタンスを行うデンマーク国民としての立場との間で板挟みになる校長とその家族の物語。

正直、見ていて苦しくなった。
ドイツ軍の非人道的態度がこれでもかと描かれ、デンマーク人のドイツに対する感情が切々と伝わってくる。それでも校長とその家族が葛藤があっても目の前のドイツ難民を救おうと決意するに至る経過、自国民を救うのはドイツ軍の役割であり惨状は自業自得、難民に手を貸すことは敵国を利することだとレジスタンスの基本姿勢を崩さない周りの人々との軋轢、その結果として起きる出来事、不条理…。

作中、子供が重要な役割を担っている。戦争に翻弄される子供たち、それも一見してわかる不毛な戦地ではなく、食べ物も手に入り、占領下であっても一見平穏に日常生活を送れている中にある戦争が丁寧に描かれることで、ことさら戦争の不条理が際立っていた。

映画館は満席だった。年配客が殆ど。上映終了後、拍手はなく、深いため息と共にそれぞれに皆立ち上がった。私も重苦しい気持ちで立ち上がった。安易にどちらかに寄せた結果ではなく、全くもってカタルシスを得られるような映画ではない。最後まで中立政策を維持し占領されることはなかったスウェーデンの人々にこの映画がどう響いたのか、聞ける機会があれば聞いてみたいけれど、気軽に聞ける問いでもない。

日本でも配給されるようだ。
正直、あまり一般受けしないのでは…?と心配になってしまうけれど、こういう映画が日本でも配給されるのはとても嬉しい。近代ドイツ史に関心がある方には是非おすすめしたい。

見れて良かった。


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