新しいトレーニング
8月末に終わった、発表会。
初めて人前で、「輝きながら」と「メモリー」を歌ってみて、思ったほど緊張しないで済んだけれど、録音した自分の歌を聴いてみて、色んな反省点が見えてきた。
特に、輝きながらは、自分では感情を大切に歌ったつもりだったけれど、とても平坦に聴こえてきて、がっかりしてしまった。
トレーナーさんも、以前話してくれたが、初めから上手な人はいるのだそう。特別教えなくても、雰囲気たっぷりに歌うひとがいるという。
私は、知らずに裏声で歌っていたのを指摘され、そこから、地声で歌う練習を始めるという、想定外のスタートを切った。
加えて、甲状腺炎や声帯が痩せてしまったせいで、掠れてしまうというアクシデントに見舞われ、思った声がでないまま、4年も経ってしまった。
でも、そのおかげで地声で歌えるようになり、高音も出るようになった。
大変だったけど、トレーナーさんが、歌うときに大切な骨格や筋肉について、わかりやすく解説してくれたり、それに沿った声帯の開閉や、使い方などを、教えてくれたおかげで、楽しくトレーニングできた。
ひと通り、地声の出し方や、強めの地声で歌うことを練習したりしてきて、私の中で、こんな風に歌いたいという気持ちが湧いてきた。
それは、いろんなミュージシャンが歌っている、YouTubeを見たりして、この人はこんなふうに歌っているんだとか、この人の声量はすごいとか、この人は、囁くような声から絶叫するような声まで出せるんだとかを知ったせいもある。
私の願望は、声量があって、抑揚のある歌い方ができて、高音が出せる、その三つ。若いのならまだしも、結構な年齢で、一緒にトレーニングしている人たちの中で、一番の年長者の私には、ハードルが高すぎるかもしれない。そう思うながら、やっぱり願望を諦めきれず、先日のレッスンで、思い切って話をしてみた。
トレーナーさんは、三つの願いの中で、声量はそんなになくても大丈夫、普通に歌う分には問題ないと言い、高音を出せるようになると確かに、歌える歌の範囲は広がると言った。そして抑揚については、私の声を分析、低めであることをベースに、どんな歌が適しているかを考えた上で、決めて行こうと言った。
で、今回は、抑揚を出すための歌い方を中心にしていくということになった。
発声練習では、普通に、あるいは普通以上に楽に出せるのに、歌う段になると、その音階が出しにくくなったり、息が漏れたりする。
なぜなんだろう・・・発声練習をしているだけでは、実際に歌を上手に歌えないのは辛い。これをクリアしないと、歌を歌ってもつまらないなぁと思う。
自分でいい気分で歌っていたとしても、聞く方が、同じように気分良くなってくれないと、独りよがりになってしまう。
まずはエッジボイスから。いつものエッジボイスより、はるかに弱いエッジボイスを出すように言われる。初期の頃は、なかなか安定して出せなかったエッジボイスも、今は普通に出せるが、それをできるだけ弱く、小さくと言われると、思った以上に難しい。繊細なものを表現することの難しさを、改めて感じた。
その弱い感じのまま、エジボイスから声を出していく。
アーだったり、ギーだったり、色々な音で出してみるとと、出しやすい音と、出しにくい音があることがわかる。それがそのまま歌う時に、出しやすい音、出しにくい音に変わっていく。
これがある程度できたところで、今回の課題曲、「恋人よ」を歌って見ることになった。
五輪真弓さんのこの曲は、彼女の代表曲とも言える。大ヒットした一曲だ。
半音のある曲が好きで、「恋人よ」も好きだった。
歌い始めてみると、あまり声を張る箇所がない。静かに始まって、サビの「恋人よ、そばにいて」二番の「恋人よさようなら」くらい。
あとは、普通のトーンと、囁くようなトーンで歌う。
ずっと地声で歌う練習をしてきたので、ついつい強い地声を出す方がいいのかなと思って、無理に出して歌ったりすることがあったが、「恋人よ」では、そんなに強く地声で歌う必要はない、強く歌ったら、台無しにしてしまうと言われた。
そうか、だったら普通に歌ったらいいんだ。弱く歌う箇所だけ気をつけたらいいんだと思ったのも束の間、実は、そこが難しいのだと、即刻気づかされた。
どんなに弱くても、小さくても声帯を閉めるのを忘れてはいけない。普通に歌う時も、声帯をちゃんと閉めて歌わなくてはいけない。だからと言って、強く閉めてはいけない、閉めすぎてはいけない。
書いている分には、さほど難しくないだろうと思うかもしれないが、実際にやってみると、塩梅がとても難しい。
声帯を、自分ではちょうどいい感じだなと閉めて、「あー」とやってみても、トレーナーさんが言うには「もうちょっと強く」とか「もうちょっと弱く」とか「その中間くらいの声」と何度もやり直しさせられて、本当にちょうどいい音が、なかなか出せないのだ。
やっとちょうどいい感じの音を出せたとしても、次に必ず同じ音が出せるとは限らない、体感で感覚を覚えていくよりほかないのだ。
何度も繰り返して、この体感を獲得するしかない。
つい、何度も「難しい〜」と漏らしてしまったが、トレーナーさんも「難しいですよね」と、慰めてくれた。
これはもう、自宅でも繰り返し練習するよりほかないので、保留となったが、今回はもう一つ、厳しい課題が出た。
それが姿勢。
元々、姿勢がよくない私。
頑張って、姿勢をよくするようにと、トレーニングのたびに、矯正の時間が10分くらいあったのだが、今回は、単に姿勢よくではなく、具体的な部分を柔軟にしていくという課題が出された。それは胸椎。
単に言われただけだと、肋骨のあたりを後ろにしならせるといいのかなと考えてしまうが、実際には、心臓の裏側を後ろにしならせるというもの。
最初からはできないので、どこのあたりかと触ってもらったら、脇の上あたりの肩甲骨だった。わかりやすく言えば、軽く押してみると、凝ってるひとだと思わず「クー」と言ってしまう箇所がそう。
そこを腰や背中を反らせるのではなく、胸椎のあたりを反らせて、腕の付け根を後ろにした姿勢で声を出す。するととてもいい声が出る。というわけ。
これは正直、キツい。
でも続けてやっていたら、両手の先が背中で着くようになった。
声だけでなく、上半身が解れるという一石二鳥の効果があるのを実感。
気をつけないといけないのは、後ろに反らせたら、必ず背中を丸めること。
これで、バランスをとるらしい。
これから、どれだけ「恋人よ」を歌うことになるかは、わからないけれど、
抑揚のある声の出し方、歌い方と、胸椎のあたりを反らせるトレーニングは、簡単には終わらないはず。
自分の歌い方の問題点として、抑揚のなさと、声の息もれがある。
この二つをどうにかクリアして、もっと自由に自分が思った通りに歌えるようになりたい。
そのためには、練習しかないんだろうと、今回、改めて感じた。
新しい課題に向けて、頑張らなくっちゃ。
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