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音楽は生命の泉

少し間が延びましたが…
一連の内容の続きです。

 映画ドラえもんのび太の宝島の挿入歌「ここにいないあなたへ」 を聴いたことをきっかけに、今まで眠っていた音楽への想いが再燃したことは、お話ししましたが、同時に自分がどんな音楽を聴いてきたか、どんな音楽の環境に育ったかが蘇ってきたのには驚きました。
 振り返ると、心理の勉強を始めた頃から10年あまり、大好きだった音楽を聴いたり、音楽番組を観たりすることがほぼなくなっていました。
 それは、忙しかったこともありますが、心理の仕事をするにあたって、音楽が聴けなくなったというのがありました。なぜか、心理カウンセリングには音楽は、邪魔のような気がしていたのです。
しかし、ここにいないあなたへを聴いたことで、封印していた音楽への想いが開封され、まるで火山の噴火のように、一気に噴出したのでした。

 生まれた時、我が家にはすでにレコードプレイヤーと、数十枚のクラシックレコードがありました。音楽、特にクラシック音楽好きな母が、結婚前に買ったものでした。物心ついた頃にはすでに好きなレコードを選び、母にかけてもらっていました。エリーゼのために、乙女の祈り、金波銀波、雨だれ、子犬のワルツetc。ピアノ曲ばかりなのは、母がピアノ曲が好きだったせいかもしれません。今も、リストやショパンが大好きで、ことあるごとに聴いていますし、今も、母が、私にピアノを弾いて聴かせてとリクエストするのは、決まって乙女の祈りです。

当時のレコードは、今よりも厚みがあり、とても割れやすいものでした。そのせいか、頑丈なカバンのような箱に入れらていたことを憶えています。母の大切な大切な宝物だったのかもしれません。それも、気がつけばいつのまにか処分されてしまい、今、手元には一枚も残っていません。
 数十年も経ってみると、懐かしさが湧いてきて、一枚くらい残してくれていたならよかったのにと、ちょっぴり残念な気がします。

 一方、父からもいろんな影響を受けていました。直接というよりは、父方の従姉妹や親戚からといったほうがいいかもしれません。
 父の実家には、私が生まれる前から、大きな立派なステレオがありました。伯父が身体の効かない祖母のために買ったもので、祖母はそのステレオで、三波春夫の歌をよく聴いていたらしく、何枚もLPレコードがありました。
 祖母が他界してからは、ステレオは三つ年上の従姉妹のものとなり、かかる音楽も演歌から、JPOP、洋楽の類へと変わっていきました。従姉妹はなぜか自分で歌うことはせず、音楽を聴くのが好きなひとでした。遊びにいくとずっとレコードをかけてくれ、お気に入りの歌手やバンド、グループの話をしていました。グループサウンズではタイガース、ワイルドワンズ、テンプターズ、初期のフォーク、チェリッシュの初期の頃の曲をよく聴かせてくれた思い出があります。そうそう、今も活躍しているTHE ALFEEなどロック系の音楽もよく聴かせてくれて、一時期、私も影響を受け、ロック系の音楽雑誌を購読していたこともあったくらいです。

そして、父の姪、私の歳の離れた従姉妹にあたるひとは、街で一番の繁華街で、電気店と隣接する形でレコード店を経営していました。
 店からは、常に世界中の、最新の音楽が流れていました。流行歌、ポップスはもちろん、いろんな洋楽が流れていて、行くたびにじっと聴き入っていたものです。
 両親が音楽が好きということもあり、従姉妹が薦めてくれるレコードを試し聴きしては、気に入ったSPやLPを買ってきてくれました。母はクラシック好き、父もポップス好きということもあり、選ぶのは洋楽か、歌謡曲の中でもテンポのよいもの。当時、流行っていた加山雄三さんなどを好んで買ってきては、歌ったり、聴いていたような記憶があります。

 そんななか、私の一番のお気に入りは、ベンチャーズのクリスマスソング集でした。母が選んだのか、父が選んだのかはわかりませんが、当時、最新の音楽だったエレキギターのサウンドがとても刺激的で、心にビンビン入ってきた感動は忘れられません。実は、その時のエレキギターの音や、ドラムのリズムが忘れられず、一年ほど探し続けていたのですが、中古レコード店で探し当てた時は夢のようでした。欲しくて欲しくてたまらなかったLPレコードです。
 買ってきてすぐ聴いた瞬間は「そうそうこれ、この音!」と大興奮、思わず泣きそうになりました。ベンチャーズのエレキギターによるクリスマスソング集こそ、私に、洋楽とエレキギターの音色を教えてくれた、最初のLPレコードだったのです。
 ベンチャーズ以降、ビートルズ、エルビス・プレスリー、オズモンドブラザーズ、ダニエル・ビダル、アダモ、シャルナアズナブール、ポールモリア、さらにはABBA、クィーン、カーペンターズ、ビーチボーイズ、スティービー・ワンダーなどなど。

 小さい頃を振り返ってみると母の影響なのか、ヨーロッパのミュージシャンの音楽を好んで聴いていたように思います。今は、好きなミュージシャンの影響もあって、一時期より洋楽を聴くことが多くなってきました。それもブラックミュージックといったアメリカ音楽です。聴き始めた時は、まさか自分がブラックミュージックを聴くようになるとは、と思いましたが、よくよく考えてみると、スティービーワンダーから始まって、マイケルジャクソンやプリンスを聴いていたのですから不思議ではありません。ただ、10年近いブランクがあっただけのこと。聴かない時期が長かった割には、スーッと洋楽のサウンドが心に響いてくるのは、きっと小さい頃に聴いた洋楽のおかげだと思います。

ずっと昔から歌謡曲よりは洋楽、演歌よりはフォーク、ニューミュージックを好んで聴いていた我が家。当然、家にあったレコードは、すべてクラシック、洋楽、そしてニューミュージックでした。クラシックは母が好きなリストやショパンのピアノ曲、私が好きなモーツァルトが中心で、なかでもベートーベンの田園、スメタナのモルダウは私が大好きで、よく聴いていました。そういえば、モーツァルトのアイネクライネナハトムジークやバイオリンを中心とした曲、静かな曲調のクラシックを聴きながら書道の稽古をしていました。心を鎮めるには格好の音楽でした。ただ、剣の舞とトルコ行進曲だけは合わなかった。リズムが激しいのと、疾走感に筆がついていけなかったからです。クラシックと言っても合うものと合わないものがあるんだなとこのとき知らされました。
 ポップスでは井上陽水、アリス、オフコースなどを好んで聴いていました。それらのレコードもすべて、東京に移り住むときに譲ってしまいました。そのときは、もう二度とこういう音楽を聴くことはないんだろうな…と、ちょっぴり悲しかったですが仕方ありません。まさか、十数年後、レコードブームが再びやってくるとはは誰が予想したでしょう。こんなことだったら、誰にも譲らず持って来ればよかったと、心の底から後悔した事は言うまでもありません。

それが二年前、好きなミュージシャンがLPレコードを出すと知り、矢も盾もたまらず、持っているCDコンポにレコードプレイヤーを繋げられないか、家電店で相談したところ、繋げられることがわかり、すぐに合う機種のレコードプレイヤーを購入。うまくスピーカーにつなげることができました。
 最初にレコード針を落とすときは、さすがに緊張し、震えました。
20年ぶりに聴くレコードです。鳥肌が立つと共に、やっぱりCDよりレコードだ!と実感しました。
 CDの音は、クリアですが硬質で、響きがイマイチ。それに対して、レコードの音は、温かくフワッと全身が包まれるような感覚があり、広がりのある音質と音響が特徴。どちらを選ぶかは自由ですが、私は断然、レコードの方が好き、合っているように感じています。

 こんなふうに、生まれてから今日まで、どれだけ音楽に励まされ、勇気づけられてきたか、そしてその想いは、これからも続くということを、ここにいないあなたへをきっかけに、気づくことができました。
 正直、もっと若ければ、もっとそのことに早く気づいていたら、私の人生も変わっていたかもしれません。でも、もうそこへ引き返すことはできない年齢になりました。この先、何ができるか分かりませんが、その思い何かしらの形にできたらと思い始めています。
 音楽は、私にとって生命の源、泉のようなものかもしれません。






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