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お客様の声に沿った改善は真にビジネスを強化するか?

ビジネスを個人であれ企業であれ実践されている方はお客様の声を積極的に活用しているのではないだろうか?

もしお客様の声に全く耳を傾けず、何も情報を取得していない、取得していても活用していないとするとそれは危険信号だ。

このご時世、お客様の声を集めたり、モニター調査、CS(Customer Satisfaction)調査、NPS(Net Promoter Score:お客様がサービスや商品を友人家族に勧めるかの指標)調査など、多種多様な手法でお客様の声を集め、活用している企業は多く存在する。

しかしふと疑問に思うこともある。


お客様の声に基づく改善は本当に有効?

お客様の声を真摯に聞いて改善をしていれば必ず良いビジネス(ここでは、お客様が増える、収益が上がると定義)ができるか?

この問いに対してあなたはどう答えるだろうか?




「何を当たり前なことを。お客様の声はクレームや不満であれ賞賛であれ、正しいのだからその声をもとにサービスや商品を改善していればビジネスとして成功するでしょ?」

と考えてしまったあなた、本当にそれでいいのでしょうか?

いくつか筆者のnoteをお読みいただいた方はご存じかと思うが、筆者が出す問題は一癖二癖あるので、もう一度考え直してみることを勧めたい。

お客様の声を聞くことが必ずしもビジネスを良くしないケースは実は結構ある。その中身を深堀する前にそもそもお客様の声の活用のメリットについて触れておきたい。

お客様の声の活用の3つの嬉しさとは?

そもそもお客様の声を活用すると何が嬉しいのだろうか?いろんな企業や会社がその分析や活用のメソッドを語っているのだかきっと有効に違いない、そう思われている方も多いはず。確かに有効な点はある。

筆者は特に下記の3点があると考えている。

嬉しさ1:分析を通じた改善に貢献

1つ目はお客様の声の分析を通して改善ができる点。

声を分析をすることで商品やサービス、そしてそれを届けるためのプロセスを改善しより良い商品やサービスづくりに活かすことができる。

例えばカフェを経営している場合に、そこで提供するコーヒーや食べ物の値段、味、接客の仕方、飲食物が出るまでの待ち時間等の評価をお客様からアンケートで調査するとしよう。アンケートの結果、あるランチメニューの値段が高い、接客態度に問題がある店員がいる、飲食物の提供までの待ち時間が長くておっくう、といった声があったとする。その場合、食べ物の何に満足いただけなくて高いと思われているのか、接客のどの部分が悪いのか、飲食物提供までのリードタイムを遅くしている原因は何かを深堀することで接客やサービスの品質を上げることができる。

いわゆるCS(お客様満足度)調査やモニター調査、アンケート等がこうした分析につながる。


嬉しさ2:潜在ニーズから新しいモノを生み出すきっかけ

2つ目は潜在ニーズを予測し新しい商品やサービスを生み出せる点。

お客様の声を分析する上で、表面的に表れる声から、そこに書かれていない、お客様が潜在的に感じているニーズをくみ取り、そこから新しい商品やサービスを考えることができる点だ。

先ほどのカフェの例を踏襲すると、お客様への調査結果で待ち時間が長いというコメントがあった。そもそも早くは依然するためのオペレーションを改善することも必要だが、その待ち時間を楽しんでもらうための仕掛けがないのではないか?こういう発想も可能だ。そうすると待ち時間をゆったり過ごしてもらうための雑誌を置いたり、その間に店員がお客様とコミュニケーションをとるなどのアイデアが浮かんでくる。

さきほど述べたNPS(お客様が受けたサービスや商品を友人や家族にすすめるか、その理由はなぜかを聞く調査手法)もこの新しいサービスを考える、潜在ニーズを考えることに使われていたりする。


嬉しさ3:自分のビジネスの強みの特定

3つ目は自分たちのビジネスの強みや特性を分析できる点

特に個人でビジネスをやっていると試行錯誤の末、商品やサービスが売れることがあるのだが、お客様が何に魅力を感じて選んでいただいているかはっきりしない場合もある。

そういう場合にお客様に調査を行うことで何を重視してくれているのか、競合に比べてどの点が優れているのかを判断できる。ビジネスで事業を拡大するうえでこうした強みを活かしながらシナジーを作る際に有効になる。

カフェの例でいえば、自分のカフェに来てくれているお客様は何に価値を感じてくれているのか、価格なのか、居心地なのか、店員とのコミュニケーションなのかが見えてくる。


ここまで読んでもらった方は「なんだやっぱりお客様の声の活用ってかなり有効じゃん」という感想になっているのではないだろうか。

しかしここまで記載した中で筆者は意図的にあることを無視して筆を進めている。


それは、こうしたお客様の声に基づく改善や新しい発想があなたのビジネスのブランドイメージに沿っているのかということだ。


曖昧にしてはいけないブランドイメージ

日本人にはブランドといっても高級バッグとか車くらいしか思いつかない方もいて、なかなかぴんと来ない人が多い

ここでいつもの通りWikipedia先生に登場いただこう。

 ブランド(英: brand)とは、ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。当該財サービス(それらに関してのあらゆる情報発信点を含む)と消費者の接触点(タッチポイントまたはコンタクトポイント)で接する当該財サービスのあらゆる角度からの情報と、それらを伝達するメディア特性、消費者の経験、意思思想なども加味され、結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体。

財・サービスを他の同カテゴリーの財やサービスと区別する概念。。。相変わらず解読が難しい表現だ。

ここでブランドの筆者なりの定義は人が商品やサービス(または企業ロゴ)を見て思い起こすもの、である。

例えばLouis Vuittonのロゴから高級、女性、高い価格というものが想起できる。AppleのiPhoneを見て先進、ビジネスパーソン、クール等が想起できるのではないか。マクドナルドの店舗からは、早い、小さい子連れのファミリーなどだ。

ブランドを見て、それを利用・保有する人のイメージ(Louis Vuitton持っている女の人って大体こういう人だよね、Appleユーザーってこういう人が多いよね、マクドナルドってこういう人たちがよく使っているよね)が想起できるはずだ。

このブランドイメージはビジネスを行う上で非常に重要だ。このブランドイメージを高めることができれば、つまりそのブランドを見た人があなたがどんな価値を提供しているかを一目で理解できれば、これほど強力なマーケティングツールはない。

結局Louis VuittonやiPhoneが高くても売れるのは素材が高級だからとか便利だからといった要因が主ではなく、お客さまはそのブランドイメージを買っているのだ。

こうしたブランドイメージがそれぞれのビジネスにあってしかるべきで、それは安易に変更していいモノではない。

お客様の声の活用の導入から話が長くなったが、要はお客様の声を踏まえた改善はブランドイメージから外れるようなことをしては絶対にいけない。ブランドイメージを損なうだけでなく、今そのブランドイメージに惹かれているお客様も失うことになるのだ。


ブランドイメージ×お客様の声分析

では改めて最初の問いに戻ろう。

お客様の声を真摯に聞いて改善をしていれば必ず良いビジネス(ここでは、お客様が増える、収益が上がると定義します)ができるか?

答えはNoだ。

ビジネスを行う上でお客様の声の活用の前に、まずはしっかりとブランドイメージを固め、どのようなお客様に自分たちの商品やサービスを提供してどうあって欲しいかを明確にする必要があることを理解いただけたと思う。その上でお客様の声を活用しブランドイメージを補強するための商品開発や改善を行うことは大歓迎だ。


もしブランドイメージを固めずにビジネスを始め、なんとなく成功してしまった(収益が出ている、固定客がいる)場合にも、まず初めにあなたのビジネスのブランドイメージを再確認する意味でお客様への調査が活用できる。

先ほどのカフェの例を使うならば、調査手法の3つ目のメリットを活かし、カフェに来てくれている人はどのような層(年代、性別、見た目)、どのような商品・サービス・空間に価値を感じて訪れてくれているのか。価格がその辺のチェーン店よりも高くても、居心地の良い空間、店員との距離感に価値を感じて来てくれている、などこうした部分を深堀いたい。


その中で今のサービスや商品への不満でブランドイメージを下げるような不満点が出ていないかをお客様の声活用のメリットの1つ目の観点で確認する。例えば価格が高いというお客様がいても、それはこの店で提供する価値に合致していないお客様だと言える。すでにこの価格で価値を感じてくれているお客様がいることも含め、安易に値下げはしないという判断が必要だ。ただし、価値を感じてもらうための、コーヒーの原材料へのこだわりの簡単な説明、店舗の中での訴求や提案の仕方は一考の余地がある。

価格はもっともCS調査などで文句を言われる項目だが、安直に値下げをしてはいけない。その代わり他の店と比べて何の価値が高いかをしっかりと説明訴求しお客様に理解してもらう必要がある。


そしてお客様の声のメリット3つ目の観点から潜在ニーズを予測し、新しいサービスや商品を立ち上げる際も今のお客様との関係性や全く趣向が違うものを出さないという明確な意思のもと、検討を進めるべきだ。

カフェの例でいえば、こだわりの食材とコーヒー、都会の中で一息つけるようなゆったりとした空間、ここに組み合わせて齟齬がない、さらに良いモノにできることは何かを考えなければならない。お客様の声そのものは今のお客様の声なので、新商品やサービス等でお客様の層を拡大する場合、既存のお客様の声で対応しきれない場合が多い。だからこし潜在ニーズを探す場合はブランドイメージに立ち返って、どんな商品やサービスが望まれるかを反芻しながら作っていく必要がある。


ブランドイメージ構築とお客様の声の活用を組み合わせ高速のPDCAを回していくことで競争力と魅力のあるビジネスにつながる。またそうした素晴らしいブランドを作ることでお客様も幸せにすることができる。

あなたのビジネスでもこの点についてぜひチャレンジして欲しい。

私たちにできることを一歩ずつ。

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