【ベトナム起業】初オフショア開発契約まとまらず、罰金の支払い?

オフショア事業をやろうとした半年前

法人登記をした直後に、日本にいる仲の良い先輩におすすめ&一緒にやる?ということで、ベトナムでオフショア事業をやろう、という話になった。その時は私が業務委託で抱えているクライアント数も少数で、オフショアを進めていくにあたっても時間もかなり余裕を取れる状態だった。その先輩のことは大学時代からインターン、その後は副業でも彼のビジネスを手伝わせていただくなどかなり信頼度が強かったため、2つ返事でOKした。

彼自身がやっている開発会社として、ベトナムのエンジニアを使って開発を進められないか、というところだったが、補助金獲得などが遅れたり等なかなかスムーズに進めることができず、その時は一旦やらないこととなった。ただし、その時に一定リサーチをしていた分はかなり役に立った。例えば、オフショアと言っても、全エンジニアを自社で雇う必要はなく、別の開発会社へ再委託しているケースがかなりあること。自社ではコアになる人材だけを囲い、案件に応じてコストをコントロールできるように、開発会社へ再委託しているケースが多かった。また、オフショアの利益率は大手で大体10-20%, 小規模事業者ならば30%くらい、という点も大手企業の決算資料から学ぶことができた。

また、請負契約と準委任契約という2つの大きな契約形態があり、ベトナムの多くのオフショア会社は準委任契約で仕事を受けていることもわかった。請負契約は主にソフトウェアの売買、準委任契約は時間の売買(リソースを貸し出す)である。請負の場合、成果と期間に責任を負うが(瑕疵担保責任)、準委任契約の場合は、善管注意義務に止まる。

このように、結果として開始はできなかったものの、オフショアビジネスをやるにあたって最低限知っておかなくてはいけない知識はこの期間に学ぶことができた。また、現地でオフショアビジネスをやっている大企業、小規模事業者の両方にヒアリングをし、現状の把握をすることができた

1月に動き出した

そんなこんなで上記でやろうとしていたオフショア事業は一旦なしとなったものの、私がベトナム在住で業務委託で仕事を受けていること、現在日本のスタートアップでは深刻なエンジニア不足であることが重なり、様々な知り合いから、「{私}さんの会社では受託開発はやってないの?」と聞かれることは多く、ビジネスチャンスとして受託開発はかなり良いものであることはヒシヒシと感じていた。日本の会社はベトナム受託を使っているものの、なかなか求めるクオリティではなかったり、私自身も業務委託社員として日本のある会社からベトナムのある会社へ受託開発を依頼し、私がプロダクトオーナーとして共に働く機会があったものの、要件定義をかなりの部分までガッチリと作り込む必要があり、日本側の負担も実感することができた。

そんな折、上記のプロジェクトで一緒に働く機会があった方に「一緒にオフショアやってみません?」と話を持ちかけられた。彼自身の会社や、彼の知り合いの会社で、そこまで重たくない案件で日本のオーバースペックのエンジニアではなく、ベトナムでシンプルな開発を進めたいケースがあり、そこを一緒にやらないか、とのことだった。まず最初は私の会社で案件を受け、一定回り出したら一緒に法人化するのもあり、といった話だった。私としては、「最初は私の会社で案件を受け」ることは、良い経験になるし、私も実際にオフショアを回してみないと、いつまでも「やれば俺もできるぜ」というダサい状態になってしまうので、回してみようと思った。一方で、一緒に法人化は誰がどれくらいベネフィットを持つか、どちらの負担が重いか、などが曖昧だったことから、そこは一旦回してみてから判断で良いか、というところで一旦進めることにした。

その方からは、まず最初に彼の知人の案件を紹介していただいた。

具体的な進め方の検討

具体的な進め方としては、法人としてリスクを背負いすぎなくて良いように、プロダクトオーナーを私、プロジェクトマネージャーを前職のベトナム人のメンバーをパートタイムで、エンジニアを開発会社から派遣してもらう形を取ることにした。こうすることで、フルタイムで誰かを雇う必要はなく、コストのリスクを避けられると考えたためだ。

また、契約は請負型ではなく、準委任型で進めることとした。ここでVAT(付加価値税)がかかるかどうかについてを雇っているコンサルに伺ったのだが、回答がはっきりしなかったり、質問が多かったのか感情的になられたりして、かなりストレスのかかるコミュニケーションだった。本質的ではないところにストレスがかからないように、今後オフショアを続けるなら、日本の法律及びベトナムの法律両方を聞ける人に依頼した方が良いなと感じた。

実際に契約書のフォーマットを知人にもらい、契約書は自ら作成した。

加えて、開発会社に依頼する際には1ヶ月契約にしたかったが、そうすると相手のメリットも薄れるということもあり、1ヶ月目を知人から紹介いただいたクライアント、2ヶ月目を知人自身の会社からの依頼を受けるという形で2ヶ月間エンジニアリソースを使える状態を作った。

クライアントへの契約書の共有と相手からの要求

クライアントは中小企業で、予算には限りがあることは想像がついていた。そのため、私としても契約に際し、できる限り低コストになるように設計を行った。その際、準委任契約で進めたい旨は伝えた。また、クライアント側からは開発に必要なドキュメントやデザインなどを完全な状態で貰えていたわけではなく、正確な見積もりは難しかったため、その観点でも準委任契約が望ましいと考えていた。

契約書を共有した後に相手からコメントを多数もらったのだが、数点「このまま進むとまずいのでは?」というコメントがあった。1つに準委任契約だがかなり見積もりを細かめに求められていたこと、競合規約が厳しすぎたことである。競合規約については協議でどうにかなる気もしていたが、準委任契約なのに中身が請負っぽいというのはリスクが高すぎるため許容しにくかった。

そのため、チャットでその点について時間をかけてやり取りをしていたのだが、思った以上にスムーズに進まず、再度話が必要ということになった。

とはいえ、上述の通り、かなり価格を抑えており、利益が見込めるプロジェクトではないこと、当初の想定では知り合いの紹介でもあったことからスムーズに進んでいくことを期待していたが、既にその時点で相当の時間とマインドシェアをこのプロジェクトに使ってしまい、自分が抱えている他の仕事(業務委託及び私自身の事業作り)にも影響が出そうなほどであったため、「これは契約を進めるべきではない」と感じていた。

その後ミーティングを行い、結局「やらない」でまとまったのだが、このミーティングも大変だった。目の前のキャッシュよりも、将来のリスクで判断し止められたことは良い決断だったとは思う。

これまでの仕事の取り方はかなり信頼関係に基づくもの且つ私の手を動かすタイプのものであったため、今回は初めての経験だった。組織として仕事を受ける難しさ、最初のクライアント選択の難しさを感じた。

あれ、開発会社と契約してたよね?

実は1社目との契約を待たずして、既に開発会社とエンジニア派遣をいただく契約は結んでしまっていた。そのため、契約を断る時点でもしかするとペナルティが発生する可能性もわかっていたが、ワーストケースシナリオのペナルティ額と比較しても仕事は取るべきではないという判断だった。

そして、2ヶ月目に予定していた知人とのプロジェクト、これに関しても私としては進めない決定をした。理由としては、一般的なオフショアの利益率よりもかなり下げて提案をしたものの、更なる値下げや原価の公開を求められたこと、そして、エンジニアリソースを1人月よりも少なくしたいとのことがあり、これでは開発会社からも喜ばれない契約になってしまうな、とのことでこちらもやらないことにした。

これに関しては期待値の違いもあったように思う。知人は一緒に今後オフショアをやるつもりで利益率をより下げて試したい、ということだったと思うが、私としては、現時点で契約や支払いのプロセス、マネジメント、開発会社とのコミュニケーションコストがかかっている中で、利益ほぼ0で受けれるほどに時間及びキャッシュの余裕がなかったことが大きい。また、今後仮に一緒にやっていくにしても、知人がクライアントを取り、私がベトナム側の全部をやるとした時の負担とメリットが見合わない(折り合わない)のでは?という気持ちも出てきたので、一旦今回は進めるのをやめ、今後どのようにしていきたいかを私自身考え直す必要を感じた(彼の落ち度は全くない。一緒に何かを進めていくというのはいつでも難しい)

ペナルティに関しては、開発会社のご好意でなしで許していただくことができた。恐らく前にも仕事を斡旋していたこともあったからかもしれない。とはいえ、ご迷惑をかけまくって、申し訳ないし、感謝しかない。今後恩を更に返していかなければならない。

今回の教訓

今回の教訓は 1. 自分起点でスタートしたものではなかったこと、2. 準備不足のまま突っ走ろうとしたこと、3. 期待値のすり合わせがうまくいかなかったこと、の3つである。

1, 2に関していうと、自分起点でスタートしたものではなかったため、準備をしてからクライアントを受け入れるのではなく、クライアントが先にあって、準備を後にしてしまったことで、契約周りで自らがコントロールできる状態になっていなかったこと。知識不足や準備不足で相手からの要求で応えるべき部分と応えてはいけない部分を明確にできなかったのは大きい。

加えて、各ステークホルダーとの期待値のすり合わせを丁寧に行わなかったことも失敗の原因になった。そこを疎かにしたから最後の最後で問題が噴出してしまったように思う。

一旦オフショアに関しては辞めて、やるなら自分のタイミングで、どのようにお客様を取るのかやどんな契約形態にするのか、どんなチーム体制にするべきかも全て考えて行いたい。加えて、自分のやりたいことをやれる時間は新しいことを増やせば増やすほど減ってしまう。そことのトレードオフも考えるべきであった。

幸いだったのは、ペナルティを免除していただいたことで、時間は一定失ってしまったが、大きなマイナスは計上せずに、リスクを考えて回避できたこと。これは経営者としての初めての仕事だったかもしれない。

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