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VOGUE BUSINESS 「RTFKT(アーティファクト)の買収によるナイキのメタバース投資」

Japanese translation of "Nike has bought the two-year-old “Supreme of digital fashion” for an undisclosed sum. The move brings the brand further into the metaverse." BY MAGHAN MCDOWELL 14 December 2021

ナイキは起業して2年の「デジタル・ファッション界のSupreme」を手に入れた(買収額は非公表)。これでブランドはさらにメタバースにのめり込むことになる。 (執筆: MAGHAN MCDOWELL 2021年12月14日) ※ 翻訳の正確さについては上記のオリジナル記事を参照してください。

スポーツウェア界の巨人であるナイキはまだ起業して2年のデジタルファッション界のスタートアップRTFTKを買収。ナイキは、メタバースにおけるリテールの未来におけるポジションにおいて、少なくとも優位になったと言える。

RTFTKは「デジタル・ファッション界のSupreme」となるまでに950万ドルの価値をつけている。買収時のアナウンスメントで、ナイキは「カルチャーとゲームを融合させた次世代のコレクタブル」とプラットフォームのことを呼んでいる。ナイキのプレジデントでありCEOのジョン・ドナホーは、RTFKTを成長させナイキのデジタルにおける業績を伸ばす計画について語った。「この買収によってナイキはデジタルへのトランスフォーメーションを加速し、スポーツ、クリエイティブ、ゲーム、そしてカルチャーが交差する場所で、アスリートとクリエイターを助けるのが我々の使命である。」

RTFKTの創業者のうち、Benoit Pagotto, Chris Le, Steven Vasilevの3人は、アーティストとテクノロジー・プラットフォームとパートナーを組み、NFTのプロジェクトからのセルアウトを生み出したり、さらにはリアルテイムのARファッションをパリのストリートで試したりすることで、デジタルファッションにおける "hypebeasts" としてウェイブを巻き起こした。
2020年の10月、デジタルのスニーカーを9万ドル相当で販売。2021年の4月には600のNFTを7分でソールド・アウト、売り上げは300万ドル以上にものぼった。最近では、アーティストの村上隆氏とアバターのパートナーシップを組んで、6500万ドル近いトランザクションを獲得することができた。2021年の5月には、アンドリーセン・ホロビッツが主導して会社の価値が3330万ドルと見積もられ、800万ドルの資金調達となった。

始めた時から常にナイキを見上げていたんだ。ナイキの落とし子をメタバースで制作することが目標だったんだ。」Pagottoはツイッターに書いている。「2年後に、新しいチャプターが始まったよ。」ステートメントの中で、ナイキがもともと持っているファンダメンタルの強さとコミュニティを形成するための専門知識を得られる機会だと述べている。

ファッションとリテールの、デジタル・ファッションとメタバースに対する興味は今年になって盛り上がりを見せている。パンデミックによってさらに、バーチャルな世界はむしろメインストリームに成りつつあった。ナイキは最近になってメタバースにおけるデジタル上の存在感を大きくしつつある。最近になってメタバースのプラットフォームであるRobloxをオープンした。ナイキランドでは、注目のナイキ製品を履いたり、ゲームで遊んだりすることが出来る。先月(注2021年11月)ナイキは7つのメタバース関連の商標を出願しているが、それはバーチャルにブランドのスニーカーやアパレル製品を売り出すことを意図している。バーチャルな素材をデザインする役職も求人している一方で、2021年の初頭には、Andrew Schwartz をメタバースのエンジニリング・ディレクターに招聘した。

モルガン・スタンレーによると、メタバースのゲームとNFTは2030年までにルクジュアリー製品の市場において10%の割合を占めると言う。500億€(ポンド)の売上規模である。ファイスブックはその機会を逃すことなくメタに社名変更した。そしてナイキのライバルであるアディダスは、プロフィール画像が既にカルト的な人気を誇るNFTのクリエーター Bored Apes とのパートナーシップを結んですぐにでもメタバースをローンチすることを示唆している。実際にこの業界ではメタバースを見る目は全体的には懐疑的であるが、今のところは一つのマーケティング以上のものだと思われている。リサーチ事務所のNPDグループにおける、スポーツ担当のシニア業界アドバイザー、マット・パウエルは特に大きな商業的な機会をメタバースに見ることは出来ないと言う。「メタバースへの興味はマーケットのうち非常に小さな部分だけにしか魅力的でない」とニュースに対して感想を述べている。

ナイキはいくつかの戦略的買収を行っているが、それはテクノロジーへの投資の反映である。今年は、データのインテグレーション・プラットフォームである Datalogue を買収している。それ以前にはデータ・サイエンスの会社 Celect およびデータ分析の会社 Zodiac を買収している。2018年にはコンピュータ・ビジョンのファームである Invertex を買収している。ナイキは次世代のウェブに対しての足がかりをRTFKTによって得ることになる。

「ナイキはカルチャーに影響を与えるビデオを主導することで、ウェブ1.0とウェブ2.0の中でブランディングと彼らのブランドを新しい高みまでお仕上げた。この買収は、彼らがウェブ3.0の世界でも引き続き主導者となることを示している。」メタバースとウェブ3.0のエージェンシーである Futures Intelligence Group (最近ではCliniqueと初のNFTプロジェクトを立ち上げた) のチーフ・メタバース・オフィサーであるCathy Hacklは言う。 「ナイキはこの買収で、スニーカーを履くための両方(訳注: 一般的なフィジカル製品とバーチャル世界におけるデジタルのことを指していると思われる)の足についてだけでなく、カルチャーの向かう方向やコミュニティがどのように形成されるかを理解し、さらにメタバースにおける進化を応援し促進していることを示しています。」(記事の翻訳ここまで)

The Broad: The Un-Private Collection: Takashi Murakami + Benoit Pagotto + Ed Schadにて。
村上氏とRTFKTの創業者の一人Pagotto氏

いかげでしたでしょうか。ナイキによるRTFKTの買収自体は昨年の出来事でしたが、記事中にあった村上隆氏とのコラボレーションの発表が先日ニューヨークにて行われました。筆者もロスアンゼルスにてRTFKTのPagotto氏との対談を拝見する機会に恵まれ、満員の観客の中「今日の会場にいらっしゃる皆さんは(普段はアバターで素顔を見せることは少ない)Pagottoさんを直接見ることが出来てラッキーですね」「自分もプロジェクトを始める前はNFTについて知らないことが多かったけれど、最終的には一つ一つのピクセルを埋める制作スタイルで最後までアセットをつくり上げることが出来た」といった村上氏の貴重な発言を聴くことが出来ました。

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