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社内ユーザーテストのすすめ

こんにちは!viviONのUXリサーチャーの古川と申します。
今回は、直近でリサーチチームが実施した「社内ユーザーテスト」について、実施のコツや振り返りを併せて書いていきます!
UXはユーザー体験なので、UXリサーチは必ずユーザーにコンタクトしなければならないと思い込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、意外にも社内など身近な人にユーザー役をやってもらうだけでも、分かることは多いです。その感覚を共有できればと思っています!


いきなりユーザーテストは不安…

弊社のあるアプリの課題発見をしようというところから、本件は始まりました。
広告施策等を頑張ったので、アプリをインストールする人を一定増やすことに成功したのですが、継続してアプリを使い続けてくれる人が想定よりも少なかったのです。
そこで、UXリサーチチームからはユーザーテストを提案しました。

※ユーザーテストとは
アプリやサイトなどのプロダクトを実際にユーザーに使ってもらい、その様子を観察することで改善点を発見する調査です。ユーザビリティテストという呼称が一般的ですが、ユーザビリティ(使いやすさ)に限らない発見も多いので私はユーザーテストと呼称しています。

アプリをインストールした状況を再現しつつ、アプリを今後も使いたいと思ってもらえるか実際に試してみようとしました。
ですが、どのあたりに課題があるのかハッキリと仮説が立てられていない状況だったため、いきなりのユーザーテストは不安でした。
実際にユーザーとなりうる一般の方をリクルーティングするにはお金も手間もかかるため、仮説が不十分でどのような深堀をすべきか見えていない状況で実施するのをためらいました。

社員に一旦聞いてみるか!

そこで一旦、身近な社員相手にテストをしてみることにしました。
社員でも、このアプリのユーザーになりえそうな人はいると考えました。また、一般の方へリクルーティングを実施するのは先述のとおり大変ですが、他部署の知り合いの社員にテストをお願いするのはとても簡単です。
また、流れが多少ぐたぐたになっても、社員相手なら調整が聞くかも…という気持ちもあったり笑
一旦やってみることで、どのあたりに課題が出そうか、インパクトある課題はどれか、アタリをつけられると良いですね、とアプリの担当者と話しました。

どんな人に聞こう?

とはいえ、社員の誰でも良いからテストすればいいわけではないです。
できるだけ、対象アプリを私生活でも使いそうな人が好ましいです。また、今回のテストは「初インストール時の状況」を再現するので、アプリの未利用者であることは必須でした。
デザイナーの社員にお声がけし、上記を確認するために趣味嗜好などを確認したうえでテストを依頼しました。今回は2名の方にご協力頂けました。

ところで「社員相手だとバイアス大丈夫?」という意見もありますよね。
バイアスとは偏見や先入観のことです。社員なので自社商品であるこのアプリを必要以上に良い評価をしてしまったり、あるいは逆に辛口になったり。また、デザイナーなので普通のユーザーが気づかないようなデザインへの指摘が入ってしまったり…
正直に言うと、これらのバイアスは一定避けられないです。しかし、事前に当該アプリを普段使いしていないことや、業務としてアプリに関与していないことを確認して依頼しました。多少のバイアスを恐れるより、仮説を得ることを優先する判断です
結論、この判断は良かったと思います。

スクリプト(質問集)を作ったり準備したり

社員相手なのでそこまでカッチリやっていないですが、それでも十分な仮説を得るために必要な準備として、スクリプトを作成しました。
特に気を付けたのは以下の2点です

1.テストの状況設定を徹底すること

あくまでいちユーザーとして意見が欲しいということを、しつこく伝えました笑
併せて、ユーザーとしての気持ちを思い出させるように、いくつか状況を想定してもらうようにしました。例えば、普段アプリを開きそうな時間帯やタイミングを聞いておき、実際にその場面になったと想定してもらったり、インストールのきっかけとなる広告の閲覧からインストールまでを実際にやってもらったりしました。

2.自然な行動を指示すること

また、いちユーザーとしての意見をもらうために、ユーザーとして自然な視点でアプリを使い始めてもらいました。いきなり「アプリで〇〇を検索してください」という指示をしたくなりますが、普段の生活ではなかなかそういった目的意識でアプリは開かないかと思います。ちょっとふわっとしますが、「普段の生活でこのアプリインストールしたとして、面白いかどうか考えてほしい」というニュアンスを伝えました。
あとは、当日のセッティングや流れを確認するために、実際に会場となる会議室でおさらいしたりもしました。こうすることで、時間内にスムーズに調査を進行できたと思います。

結果:課題がみえてきた!

実際やってみると、実施前よりもハッキリと課題がわかってきました。
具体的には、アプリのファーストビューに関する問題を深く理解できました。
また、いちユーザーとしての意見を求める工夫をしたおかげで、ユーザーの「時間をかけてまで自分から面白いと思えるものを探したりはしない」といった様子を観察できました。テストするまで意外に見えてなかったりするのでハッとします。
アプリの開発部門はこれまで検索機能の改善に注力していたのですが、「インストール直後のUX改善を優先したほうがいいかもしれない」との気付きを提供できました。

UXリサーチへの関心が高まる

さらに、調査に同席した事業部メンバーからは「楽しい」「気づきが多かった」という反応も得られました。社内リサーチは仮説を深めるために実施しましたが、メンバーの当事者意識を高めるという嬉しい副次的効果もありました。
今回の社内リサーチ結果の報告会を事業部チームで実施した際も、得られた課題仮説への理解を得られたと同時に「こんなことがわかるのか」といった様子でUXリサーチ自体への興味関心も高められたように思います。

結論、社内リサーチは良いの?

とても良いです!
UXリサーチというものをあまりよく知らない関係者に対しても、一般ユーザーをリクルーティングするコストを抑えつつメリットを体感してもらえ、さらに仮説を深めて論点を明らかにできるからです。そうすれば、例えば次は一般ユーザーを確保するテストを企画しても社内の関係者に協力してもらいやすくなりそうです。
ただし、先述したバイアスの問題もあります。この点は、得られた結論や示唆に社員特有の要素はあまり見られないことを確認できれば良いと考えました。
もちろん、実際のユーザーの声を聞いた方がよりリアルではあります。 しかし、実際のユーザーの声を聴く前に論点を具体化するため、また、他のチームのUXリサーチへの関心を高めるためにも、社内リサーチは効果がありました!

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