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プロダクトアウトを捨て、「マーケットイン」から始めよう!

はじめに


「マーケティング」
USJをV字回復に導いた敏腕マーケター森岡 毅さんなどP&G出身者の大活躍により、ここ10年間でさらに一般的になってきた言葉です。

しかし、日本において実際にマーケティング手法やマーケティング的思考を組織立って活用している会社はまだまだ少ないと感じます。(※BtoCの低価格消費財や通販事業をしている企業などは除く)なんなら「マーケティングだが何だが知らんが、小難しいこと言いやがって。」的な小言を言われている方もいらっしゃるかもしれません。

■歴史的背景
明らかにマーケティング導入が進まない会社が多いのは、日本が「モノづくり大国」として、世界第2位の経済大国に上り詰めた成功体験が大いに関係していると思います。日本という国は、1960年代から80年代にかけて、家電や自動車といった「高品質なものづくり」によって、世界中に「Made in JAPAN」としてその存在を知らしめました。

イメージというのは強力で例えば、「フランスの香水」「スイスの時計」「イタリアのファッションブランド」などは本場、本物感があり優れた品質やイメージを抱きやすいと思います。一方、「中国製の家電」だと少し不安感を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?
※ちなみに、モノに、特定の「意味」や「イメージ」が付与されることをブランディングといいます

そして「Made in JAPAN」は「モノづくり大国」「高品質なモノづくり」。大先輩たちに感謝すべき、競争優位となる素晴らしいイメージです。

■ですがその反面、とにかく自社が良いモノづくりさえすれば「自然と商品が売れ、シェアがとれる。さらにはマーケットが拡大する可能性もある。」というイメージが日本企業に深く根付いていると思います。
間違っていませんし、高品質なモノをつくることは不可欠なのですが、いまだにこのイメージから脱し切れておらず、その一本槍で戦っているように思えます。
この「いいモノであれば商品は売れる」という考えのもと、会社が作りたい商品を企業方針に従って製造し、販売していくことを「プロダクトアウト」といいます。

➀モノが不足していたころは、とにかく商品を製造し、供給することが企業に求められていました。そして、とにかく不便だった。
横の人と同じモノを手に入れること、「不便さの解消」が消費者ニーズのコアな部分でした。

②そしてモノが行き届いたころには、粗悪品が目につくようになり「高品質」「新機能」への欲求や期待が強まった。機能勝負の時代に突入したのです。その時代と「Made in Japan」のモノづくががマッチし、国内外で需要と供給がエゲツないほどに噛み合ったのです。

■しかし現代は、多くの市場が成熟しています。
画期的な新機能、画期的な新市場というのは生まれにくくなっています。

例えば、
「肌がツルツル、テッカテカになる化粧品」
「他店よりも明らかに美味しいラーメン」
「他のどのハウスメーカーよりも、明らかに住みごこちの良い家」
など、ウルトラスーパーイノベーティブな商品はそうそう作れるものではありません。

どんなに各社「良い機能で、良い製品」を作っても、どの企業も良いモノづくりをするので差がつかなくなっている

さぁ、ここからなぜ「マーケットイン」の思考が大事になってくるかという本題に入っていきます。

■例えば、スーパーマーケットに置かれる商品を見ても、どの商品も基本美味しと思います。「キューピーマヨネーズ」と「味の素のピュアセレクト」「スーパーオリジナルのPBマヨネーズ」。美味しさの感じ方は人それぞれかと思いますが、「品質」で見たらどれも良いと思います。

さて、この差がつかないという現象が起こると、、、

➀どの商品を選んでも大差ないので、価格で判断されやすくなる

マーケティング的には「コモディティ」という呼ばれている現象です。
「どれ買っても変わらない」なら安い方が絶対的に良いですよね。特に、消費財など人の目に触れにくい商品はそうなります。
例えば「塩」「米」など、かなり差別化が難しい領域だってあります。だから、「博多の塩」「あきたこまち」など、知名度やブランドという角度から付加価値を付け、選ばれる確率を上げることになるのです。


②商品が埋もれやすく、目立ちづらくなる
 =差別化が難しくなる

同じような機能や内容で他社と戦っていると、「認知率」「想起率(モノを買う時に、特定のメーカーや商品を思いだすこと)」が著しく下がります。
もちろん、知られていない買えません。購入意向(買いたい気持ち)も上げようがありません。また、たくさんの人に記憶されていないと「ブランド力」は上がりません。そして、ブランド力がないと、高い価格はつけれません。どのチャネルにも扱ってもらえません。まさしく負のループです。

■例えば、AKBのメンバーや韓国アイドルたちの顔が似てて「誰が誰かわからへんわ~」とか、ということを思ったことが一度はあるかもしれません。
差がないと、覚えにくいし、興味や好感度が上がらないものです。

逆に「2刀流の大谷翔平」「金髪無回転フリーキックの本田圭佑」というように際立った特徴があると、覚えやすいですよね。

なお、2024年5月時点でキューピーマヨネーズの参考小売価格は、内容量:450gで520円(税込)ですが、PBの商品がそれを超えてくる例はほとんど見たことが無いと思います。

つまり、良い機能・良い品質というものだけでなく、市場の声を聞いて、イメージやブランド、尖ったコンセプト、プロモーション活動などの方策で、の付加価値をつけ、差別化していく必要があるのです。

③一定ラインを超えると、ニーズが多様化する
■それぞれモノや品質がある程度手に入った状態。他の人と横並びの状態まで持っていけると、次は「カッコいい、かわいいという、センスを感じるとかいう気持ち的な価値」や「自分にとって意味があるか」「自分にとって好ましいか」という価値を求めていきます。

■つまり、単純な欲求ではなくなり、より細分化された好みや悩みの洞察が必要となってくるのです。(低次元から高次元に)そこで現代は、モノやサービスを通して「気持ちや精神的な価値をどう届けるか」ということが、ビジネスを加速させる重要なドライバーとなっています。

以上の3点から、市場が成熟し様々なニーズが満たされているからこそ「はい、こんな良い商品作りました!どうぞ買ってね!あとは任せた!」では売れにくくなっているのは容易にわかるかと思います。

どれでも良い世界線の勝負になれば、デカいやつだけが勝つ

■どれでも良い世界戦の勝負になれば、➀とにかく安く、たくさん提供できる企業 ②知名度や信頼があるブランドを持つ企業だけが勝ち、他は淘汰されていきます。

そして➀②ができる体力があるのは、カテゴリーのリーダー企業や大企業だけです。中小企業は資金力バトルでは確実に負けます。ジャイアントが勝つのは想像に難くありません。
(そしてリーダー企業は、大量生産をもとにさらに固定費を下げ、安く提供手できたり、新たな付加価値となる製品開発などに資金を回せます。)

そうなれば必然的に「消費者の声を聞いて、が本当に欲しいモノ」を作りだす必要があるのです
マーケットに目を向けて、それを構成する「消費者の声」を聞いて、モノ・サービスづくり、そして狙っている消費者が「買いやすい価格」「手に入れやすい場所」「知り・欲しいと思えるプロモーション活動」などを駆使して、総合的に消費者が喜んでそのモノやサービスを買うデザインをする必要があるのです。

■消費者のネガティブをダウンさせる。=不安、不満などの「不」の解消をする。消費者の喜びをアップさせる。=より満足させる生活へ導く、よりポジティブな心理をつくりだす。など、方向性の種類はあるものの、
マーケットに存在する、消費者の「悩みや不満」を発見する、そしてそれを解決する製品をつくり、消費者の手元に届けなければいけないのです。その一連の活動が求められるのです。

このマーケットや顧客に目を向けた商品・サービス開発のことを「マーケットイン」といいます。自社が良いとおもうプロダクトをとにかく作り市場に送り出す。「プロダクトアウト」と対比で覚えてください。

あくまで、買う意思決定をするのは消費者なのです。
なので、モノや機能でなく、消費者(人)からスタートするのは至ってシンプルな話なのです。

例えば、プロ野球でも、データを見て相手投手の傾向や配球を読み取り、対策を練ったうえで打席に入ります。それはなぜかという、「ヒットを打つ確率」を上げていくためです。製品開発や企画でも、ど真ん中ストレートばかり想定してバットを振っているようではダメなのです。


まずは、市場や顧客のことを考えることが、マーケットインのスタートです。

「敵を知り己を知らば百戦危うからず(孫氏)


「ライバルがバラを10本贈ったら君は15本贈るかい? そう思った時点で、君の負けだ」(スティーブ・ジョブズ)


■テキサスのおばあさんでも使えるようなパソコンのような携帯を作ろうとapple社が動いていた中、日本の携帯メーカーはより高品質なカメラやスクリーン開発を競っていた。という話を聞いたこともあります。

多くの企業はいまだに、このレベルの高すぎる機能合戦をしているのです。

特に今は、物価高かつ給料の上がらない中、私たち消費者は、オーバースペックすぎる商品は不要なのです。より、自分たちの不を解消し、意味がある、価値がある商品を求めているのです。

まとめ

主観を捨て、客観視から入る。
冷静に準備して、情熱的に押し進める。
生活者視点からスタートして、生活者視点で終わる。

売っているものはモノではなく、価値です。なにより、全ての購入意思決定者はまぎれもなく「消費者」です。まずは消費者から入ることが、マーケティングのスタートなのです。

さぁ、いっしょにマーケットインからスタートしましょう。







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