ワインな気分の日には地中海に浸りたい【アサリのアヒージョ】
うちの父は昔から晩酌が好きで、晩御飯にはいつも「酒のアテ」になるものが何種類か食卓に上がるのが普通だった。
姉と私が子どものに頃は、シチューやハンバーグ、カレーライスといった洋食も登場したが、成長するにつれてそれも減り、次第に献立は「アテ」が中心になり、今や「アテ」がないとどうにも食べた気がしない。
おまけに、お国こそ違えど、同じようにチビチビと「アテ」をつまみながら飲むのが好きな相手と結婚してしまったものだから、今でもついつい「アテ」を作ってしまうクセが抜けない。
ただ、私には外せない料理の大原則がある。
『食べ時を逃すべからず』
「熱い物は出来たての熱いうちに、冷たい物は生ぬるくならないうちに」ということだ。
料理を作る側として、一番美味しい食べ頃にサービスできるように努め、食べる側としても、そのタイミングを逃さないようにスタンバイして待つ。作る側と食べる側のお約束だと思っている。レストランでも家でも同じ。
だから、私の場合、料理をテーブルに出した時に手を洗いに行ったり、呼んでもすぐに席に着かなかったりするとキレる。自分でも分かるくらいに眉間に皺が縦並びし、メラメラと般若と化す。きっと血圧も上がってるんだろう。でも、これだけは嫌なのだから仕方ない。
同じ理由で、料理写真を撮るのが好きじゃない。せっかくの料理を一番美味しい時に食べたい。食べてあげたい。食べさせてあげたい。人も料理も食べ頃が大切。きっと、この先も私の料理写真の腕が上がることはない。残念だけれど性分だからね。
常温で美味しい料理、冷たい料理、温かい料理、アツアツの料理を組み合わせて料理を作る。アツアツの料理が重なると先に作った料理がどうしても冷めてしまう。
「料理自慢の偉そうな奴」と思われるうかもしれないけれどそうではない。部分的にちょこちょこと事前準備をしておけば案外簡単に出来てしまう。先に作って冷やして寝かせておいたり、途中まででも作っておけるものはどんどん先に用意しておく。
そうすると、一度に作る品数や手間はずいぶん少なくなる。5品も作るのは大変でも、2品くらいなら何とかなる。いや、一品でいいからアツアツの料理を出してドヤ顔で逃げ切ればいい。
短時間にサッとできてしまう料理食材として、火の通りの早い魚介類にはよくお世話になる。今日の「アテ」もあっという間に出来てしまう一品。アサリを使った『アヒージョ』、平たく言うと「アサリのワイン蒸し」。
主役のアサリは早くから食塩水の中で砂をぺっぺっと吐き出しながらご準備中。料理が出来たらすぐに食べられるようにテーブルを用意する。
そう、エプロンをしてキッチンに立つ前にやっておく事がある。
『ワインの栓を抜いておく』
これ、すごく大事。冷めちゃうんだよ、せっかくの料理が。
ポンという軽やかな音をさせてコルク栓が抜ける。料理用のワインだから安いワインで十分だけど、ほんの少し入れるだけだから、後で飲むワインを拝借してしまう。
先に冷やしておいたのでちょうど飲み頃。グラスの少し注いでみる。トプトプと流れ出る明るいゴールド色の白ワイン。アサリの優しい味を消さないように、ワインもフレッシュで酸味がまろやか、少しフルーティなのが私好み。酸が強いワインを料理に使うと料理がすっぱくなってしまうことがあるから、これくらいがちょうどいい。
ちょっぴり飲んでみる。程よいミネラル分もあって美味しい。今日はガリシア産のゴデージョというブトウで作ったワイン。こっそり一人で笑顔になる。キュッと飲み干して、二度目の試飲をしようとまたグラスに注いでいたら監視員が後ろに立っていた。
「自分だけ試飲して、(僕を)呼ばんか?」
試飲グラスが二つに増える。
フライパンのオリーブオイル注いで弱火にかける。続いて、刻んだニンニクを加えるのだけど、焦がさないように気をつける。食欲をそそるニンニクの香りがふわりと漂ってきたらアサリを加える合図。
刻んだパセリを加えて、フライパンを大きくゆすって全部のアサリをニンニクとオリーブオイルで覆ってやる。
ほんの少しだけ塩をし、仕上げにワインを回しかけると、フライパンがシューーーンという音を弾かせる。蓋をして火を強め、ゆすりながらアサリが開くのを待つ。
蓋を外すと、蓋のすぐ後ろから地中海のベールを纏ったアサリの香りが追っかけてきた。
『アサリのアヒージョ』レシピ
【材料】
生あさり 400g
EXオリーブオイル 大匙3
白ワイン 大匙5
ニンニク 2片
パセリ 適当
塩 少々
唐辛子 1-2本 (オプション)
【作り方】
① 材料準備を切る。
ニンニク みじん切り
パセリ みじん切り
② フライパンにオリーブオイル50cc.を中火にかけ、ニンニクのみじん切りを加える。(辛口がお好みの場合はここで唐辛子を投入)
③ ニンニクの香りが立ってきたところで下準備をしたアサリとパセリを加えて全体を大きくまわす。
④ 軽く塩をして、白ワインを全体に振りかけて強火にし蓋をする。
⑤ アサリが開いたら、フライパンの底のソースを全体に合わせる。
⑥ 冷めないうちにテーブルへ
注意:塩はアサリから塩味が出るので控えめにします。ワインの酸味は必ずチェックしてください。
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