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正しい医療事務職員の採用について

今日は、医療事務職員についてお話したいと思います。

一緒に働く仲間たち

院長先生方の中で、一緒に働く職員は
・看護師
・検査技師
・医療事務
などがいらっしゃると思います。
中小のクリニックで働く人は、、大きく2つに分類されます。
それは「国家資格の有無」です。

国家資格って重要ですか?

もちろん、医療行為を行うにあたって必須の資格ですから、とても重要です。でも、ここではそういうことではないんです。

院長自身が過去に接触したことのない職種なんです。
例えば、看護師だったら、詳細にはわからなくても、まぁだいたいこんなことやってるんだろうなーと思えませんか?
臨床検査技師も、まぁ、なんとなくこんなことやってるんだろうなって、およそ理解できていると思うんです。
でも、「受付」とか「会計」とか「レセプト」ってどうですか?

ぜんぜんわからないのではないでしょうか。
なので、なんとなく、早々に、権限を委譲してしまいます。

採用したAさんは前職でもレセプトをやっていたから、電カルメーカーさんに教えてもらって、レセプトもやってもらっています。いつも助かっています。

出典:よくいる院長先生

そうなんです。
臨床部門のトップとして、臨床分野はまとめ上げることができたとしても、事務部門はブラックBOXになっていませんか?
たまたま配置した一番できる事務職員さんが、
たまたまマネジメントにも優れていて
たまたま後輩育成もできて
たまたま勉強熱心で
たまたまずっと辞めずに院長についてきてくれる。
なんてことは100%ありません。

なぜなら、それだけ能力があって、それだけ自己研鑽ができて、それだけ思いやりがあって、医療事務をやっているわけがないんです。例えば、中学生高校生大学生をつかまえて、

理想の職種はなんですか?

と聞いたとして、たった一人でも「医療事務」なんて答えるでしょうか。あり得ないです。
その人が、医療事務をやらざるを得なかった、そういうバックグラウンドが必ずあります。その方が、「クリニックの事務全部丸投げ」したら、何か月持ちますかね。最初の3か月はモチベーションもあるしなんとかやってくれるでしょう。でも、「だれも正しい業務を指示してくれない」ために、だれかに聞くこともできないし、合っているかもわからないし、先生に聞いてもうやむやにされるし、給料はほかの職員(看護師等)に比べて安いし、なんか軽く扱われている気がするし、もう辞めちゃお。限界。ってなるのが目に見えています。

事務部門の重要さを知ってください

なんとなくは見聞きしているかと思いますがここで改めて知ってください。

予約

クリニックの「売上」を決めるとても重要なことです。1日に何名を受け入れる予約枠を設定するかで、そのクリニックの最大売上金額が変わります。例えば、60人を診察限界としていた場合、さまざまなコストなど差し引いて、月100万円が純利益になるとします。毎日あとたった1人を診察すると、12.5万円ほど利益が増えます。

60人で100万円の利益なのに
あと1人で12.5万円の利益が変わります。

受付

いまや誰もが、スマホで検索してクリニックを選びます。その時に、「口コミ」がとても重要です。近くでも、遠くでも、クリニックの口コミを100件くらいみてください。
多くのクリニックの悪い口コミが「受付の態度が悪い」「会計が遅い」など、医師には関係のないところで発生します。
院長先生のお近くに、評価4.4のクリニックがあったら、2.8じゃHPを見てすらもらえないんです。どんなに素晴らしい診療をしていても、どんなに真摯な対応を心がけても、受付がそのクリニックの顔です。

会計

会計業務ですが、だれがやっても同じだと思っていませんか?
医師が入力するのは、カルテと処置の点数だけです。そこに、さまざまな加算を乗せるのは医療事務が会計時に行います。
例えば、「再診」なのか「初診」なのかわからなくて、なんとなく適当にやっていたら、再診であるべき方に初診を算定し返戻や減点を食らったり、逆に初診であるべき方に再診を算定し加算漏れが発生します。
2024年現在ですが、初診は291点、再診は75点です。その差216点。2160円です。
これが毎日何人も発生していたら、10人で2万円、100人で20万円の損失です。しかも、初診再診だけでこの差です。それ以外にも算定できる加算は何種類もあります。常に保険改正を理解し勉強を続ける医療事務職員と、電カルがそう言っているからと適当に進める職員とで、驚くほどの収入の違いが発生します。
また、作業速度の差も激しいです。できる方なら、さっと計算しすぐに会計をしてくれます。ですが、できない人はほかの職員に聞いたり電カルメーカーに聞いたりしながら「何分待たせんのや!」って怒られるくらい待たせるんです。

レセプト

レセプトとは「請求業務」です。
保険診療においては、7割がレセプトで請求、3割が本人に窓口で支払ってもらいます。(それだけではないですが長くなるので割愛)
その7割を、適切な先へ請求を行う処理です。
まぁ、この請求自体はさほど難しくもないので、2~3回やれば覚えられますが、問題は「レセプトチェックの精度」にあります。

いやいやいや、電カルにその機能付いてるじゃん

出典:よくいる院長先生

ついていますが、はっきりいってポンコツです。
例えばですが、下痢を含む風邪症状で来院された方に、解熱剤と総合感冒剤と下痢止めを処方したとします。
すると、月度チェックでは「CRPが算定できるかもしれません」とか言ってくるんですよ。
「そりゃさ、採血してさ、問題ないか確認するなら、CRP算定できるよね。でもさ、採血してないじゃん?なんてCRP算定しようとしてんの?バカなの?」
ってレベルなんですよ。初期設定では。
で、そんなもん聞いてこなくていいわとして、次から聞いてこない設定をしたら、今度は本当にCRP算定漏れのときも聞いてこないんですよ。
これは一例ですが、レセプトチェックって一事が万事このやり取りなんですよ。

だから、元からチェックしたいものを理解していて、しっかり設定をできる方は、便利なように設定をしていきます。が、できない人はどんなに設定しても不便になっていく一方で、使い物にならないのです。

じゃぁどうしたらいいんですか

ってなりますよね。
もちろんそのクリニックのステージによって対策はことなりますが、およそこの流れで進んで行きます。

1)院長自身が医療事務と一緒に勉強する

2)信頼できる医療事務職員1名を見つける

3)医療事務職員をチーフ(幹部候補)にして経営思考を身につけさせる

4)サブチーフ2名を作り、受付と会計の責任者にする

5)チーフを完全マネジメント側に移行させる

という流れになります。
それに昇格させるスピード感も重要です。

医療事務業務は、ある程度のレベルであれば、3ヵ月もすればできるようになってしまいます。
すると「暇」になった職員はなにをするでしょうか。
間違いなく「他人の足を引っ張ること」を開始します。

急に休んだあいつが許せないとか、
仕事ができないあいつに教えないとか、
トゥーシューズにナメクジをいれるとか、
本当にしょうもないことをし始めます。

ですから、もっと大きなビジョンを見せて、夢を与える必要があります。

僕らの組織は今ここで、もっと先のこんなところをめざしているんだ、だから今の課題はこれで、次はこんなことをしたいんだ。みんな協力してほしい。一緒にがんばろう。よい医療を提供して、地域に貢献しよう!

みたいなことを、しっかりと思い描けるようにしなければ、院長先生がどんな業務をやっているのか理解できないだけに、さぼったりいじめたり、平気で始めます。それが、有資格者のみで形成さえた「医療」における、無資格者の自己防衛なんだろうと思います。

で、肝心の採用の仕方は?

ということなんですが、状況によって変わります。

開業時

経験者を探してくるしかないです。最低でも1名、紹介会社を使ってでもいいから、クリニックでレセプトまでやってた人をひっぱってこよう。ジョブメドレーとかでもいいです。スカウトしまくろう。
開業後にどんどん職員が辞めていくけど、院長先生が悪いんじゃないです。オープニングメンバーは全員辞めても普通だと思って、気を確かに持ってくださいね。

1~2年

1人だけ信頼できる常勤がいれば、あとはパートさんでいいです。パートさんを大量に雇いましょう。
法定福利費がきついし、採用しちゃってからダメな子だったら、退職させるのは困難です。シフト減らせば勝手にやめていくのでパートでいいです。
時給を周辺相場よりも上げて、週3回のフルタイムみたいなパートが理想ですね。あとは、AMのママさんと、PMからの大学生を組み合わせて1人とするとかもアリですね。インディードとかで課金してぶん回そう。

2~5年

収益が安定してきて、給与費に余裕がでてきたら、常勤採用へと移行していこう。まずは、今いるパート職員の中で、「ぜひずっといてほしい!」と思える子を、チーフから推薦してもらおう。そしてサブチーフにしましょう。
また、20代前半だったら、医療事務は未経験でもいいから、受付経験のある接客ができる子を採用しよう。接客できるかどうかは生まれ持った資質だと思ってます。でも、夜の飲み屋経験者は絶対NG。大抵病んでるし、安い単価で朝起きて働くことに耐えられないと思うよ。

5年~

新卒採用へとシフトしよう。もう、ここまできたら先生のクリニックには明確なビジョンがあると思います。夢も持てるクリニックになっていると思う。だから、将来の幹部を、良質な新卒から採用しよう。
ちなみに新卒採用は2年がかりです。3年生の春か夏には見学に引っ張ってきて、よい子には3年生の時に内定出しちゃおう。
10人くらい内定だせば、もしかしたら1人くらいは来てくれるかもくらいの雰囲気ですよ。

最後に

正しい医療事務職員の採用について書かせていただきました。クリニックを運営している院長先生にとって、受付周りは未知の領域だと思います。
少しだけは勉強したほうがいいとは思うけど、そこを本気に勉強しても、1円も生みません。
どうやって早々にチーフを独り立ちさせて、手を放すかにかかっています。
チーフを連れて他院の見学に行くとか、逆に他院から来てもらうとかもいい刺激になり、新しい情報が入ってきやすいです。

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