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美少女ゲーム批評の総合誌を同人で出したい

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美少女ゲーム批評総合誌「ビジュアル美少女(仮)」企画運営のくるみ瑠璃です(https://twitter.com/kurumi_ruri)。
これは秋の文学フリマ東京で頒布予定の美少女ゲーム批評総合誌「ビジュアル美少女(仮)」の企画に至った経緯や、企画意図、どのような寄稿を募集しているかを説明する記事です。少し長めの記事になってしまいましたのでいくらかの要約を頭に書いておきます。

企画意図

  • 今の美少女ゲームに関する論考をまとめること

  • 複数の人間が複数のトピックについて語る多様な記事が載っている同人誌を紙で出すこと

どのような寄稿が望ましいか

  • 読者に新しい美少女ゲームとの出会いを与えるようなもの

どのような人に届けたいか

  • 美少女ゲームのファン。特に最近(直近5年ほど)の作品について見識を深めたい美少女ゲーマー

  • 批評に興味がある人、作品や作家についての論考を読みたい人


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どのようなことを書くか決めずにこの文章を書き始めてしまった。とりあえず何か書かなければいけないような気がしただけであって、実際は誰も読む人がいないのかもしれない。でも、とりあえず人を集めるのだし、私がどのような思いで人集めをしてでも同人誌を作ろうと思ったのかを伝えなければいけない。

2023年になる前からほんの数人にだけ声をかけて、テスト期間が終わったら大々的に公開して人集めをしようと思っていた。だから公開して今、何人か興味を持ってくれた人に声をかけていこうとしている。まだまだこれからである。
嬉しいことに興味ある人が多く、かなり元気が出てきた。
同時に自分にそれだけ人を引っ張れるだろうかと考えてしまう。なにせこういう風に同人誌を一般で募集して作るというのは初の試みだ。大学のサークルで会誌作成の音頭を取るのとは勝手が違う。ちょっとだけ参加を遠くに設定して、そして原稿の締切を早めにした。

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私の美少女ゲームデビューは、大学に入って18歳になってから。先輩から『金色ラブリッチェ』(サガプラネッツ)を借りて遊んだときだ。
が、しばらくの間は付かず離れずの微妙な距離を保ちながらも、エロゲーに真剣とは言い難いくらいの態度で接してきた。それが変わったのは19歳の11月ごろ。『9-nine-』(ぱれっと)を遊んで、一息で読める快感にハマった。それからズブズブと沈んでいき、『俺たちに翼はない』(Navel)を遊び終えたころには加熱して止まらなくなっていた。

こうやってハマりつつ、一方で批評文化というのにも近付いていった。アニメカルチャー関連での批評文化やそれに準ずるサブカル的連帯にも気付きつつあった。しかし、今や美少女ゲームでそのような輪はあまり見られない。

最近のエロゲーのさまざまについて批評のような、作品を価値付け、その文章を読む人にゲームへと向かわせるような文章を同人誌という形でまとめる人、人たち。そういう人を私はあまり知らない。もちろん個人個人でポツポツと活動している人はいるし、あるいはジャンルを絞って活動している人ももちろんいる。でも、エロゲー全般に視野を広げて人集めしている人をあまり知らない。
過去には「恋愛ゲームシナリオライタ論集」なども出て、幅広く扱っているものもあったし、今でもそのようなものを作れないだろうか。少しずつそう考えるようになってきた。

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テーマをデカくして大丈夫だろうか? と不安になった。
どういう風に小規模なテーマ設定すべきだろうか。たとえばサークル「Little fragments」さんのところのKeyのようにブランドに絞るべきか、あるいは最近の「新島夕トリビュート」のように作家ごとに絞るべきか。
私が好きなブランドはウグイスカグラだし、好きなライターは同ブランドで活躍するルクルだ。
しかしウグイスカグラは有名であるが、同時にマイノリティ的な面白さであり、人を集めて同人誌にまとめるのは厳しい感じがした。

やはり、デカくテーマを設定して、人を多く集め、その活動と平行して自分の言いたいことを言っていきたい、そう考えるようになってきた。
そもそも私はエロゲー全体が好きなのであって、何かに絞る必要がないじゃないか! シナリオゲーの話をしたければその特集を組み、萌えゲーなら萌えゲー、抜きゲーなら抜きゲーの話をすればいい、そうじゃないか!

だが同人誌で、わざわざ批評というもので出す必要は? 次のような問いにはどのように答えればいい?
「なぜ今美少女ゲームで、なぜ批評なのか。」
いや、このように問う人はいないだろう。商業じゃなくて同人なのだから、やりたければやればいいと言われてしまうだろう。でも私自身がこの問いに対して前のめりに答えたい。「私が美少女ゲームを"今"愛しているからで、その表現の手段に"批評"しか持っていないからだ。」

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「お前がそんなことしなくても、美少女ゲーム文化にはエロゲー批評空間というとても便利なサイトがあるからアーカイブ化なんてのをわざわざ同人誌なんかでやらなくてもいいぞ」
そう問う声が自分の中から聞こえてくる。自信をもって否と答えたい。紙にして出すこと、同人誌で出すことの価値は確かにある。
批評空間はたしかに便利だ。多くの人が点数付けたのを集計し、作品の質が多少なりともわかる上に、人々が書いた感想を読める。だが、あの場所はあくまで個人的なものの集まりだ。批評として書かれたものと同じ場所に主観にかなり依存した感想が書いてあるのだ。
あくまでエロゲー批評空間は雑多な評価の集まりであり、そしてその雑多さにこそ価値がある場所なのだ。

同人誌という形にして出すのは、個人的な感想ではないものを、人に向けて書かれたものを、誰かの目を既に通されたものを送る手段なのだ。同人誌である価値は、確かに、ある。

同人誌という手段を用いて、美少女ゲームというひとつの島宇宙の内圧を高めていきたい。
美少女ゲーム文化の外部に価値を提示する以上に、内部にいる人にこの作品の、この作家の価値を示していきたい。そしてその価値を同人誌として定期的に発刊し、頒布しつづけることでまた別な新しい共通の価値観を作っていきたい。

文化外部にいる人に対して価値を示すのは、既に多くの人がやっている。そういった試みが実のところうまく行っているかどうかは別だ。
なら別の方向を取ろう。もう十分に触れている人に、すでに多くを知っている人に、そのような自信ある態度で人と語り合う姿を見せ付けよう。

デカい態度をしている人がいるのも、初心者に優しい人がいるのとは別の重要さがある。そう考えているからこそ、批評という形式を選び、同人誌として完成させたい。

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どのような文章を求めるか、とりあえず書いておきたい。

読んだ人に「出会い」を与えるもの。
それまで中身を知らなかった作品と出会わせること。あるいは遊んでいる人を驚かせるような読みを示すこと。

こういうものにしたい。

具体的な話をしよう。

批評とはどのようなものか。
たとえば価値付けにかかわるもの、ノエル・キャロルのいうような。私にとっての批評はそういうようなものだ。これは一般的に想像されるような批評のあり方とこれはズレるだろう。しかし、ある作品を批評し、その作品の観賞を人に勧める(あるいはその逆をする)のに価値付けは効果的な手段だ。
作品を、あるいは作家を評するなら、このような批評が望ましい。

作品の、作家の価値を伝えるのに手段を選ばないでほしい。
よく「ネタバレなしでこの作品の面白さを伝えられない」というのを聞く。もし寄稿するときにこの点で悩むのなら、「ネタバレしてでも面白さを伝えてくれ」と言う。もっとも大事なのは作品の価値を人に伝えることである。

次点で作品を適切に観賞する方法を伝えることだ。
適切な作品のカテゴリーを指し示す、そのカテゴリーを好む人を引き寄せ、地雷だと思っている人に警告する。例えば『WHITE ALBUM2』はヒューマンドラマであり、ラブストーリーだ。真剣なドラマを好む人には勧められるし、甘い萌えラブコメを求めている人には勧めない。
もちろん評判のあり方とは別の方法を示すのもありだ。ぜひ新しい観賞のやり方を示してほしい。

要は作品や作家と正しく出会わせてほしいってことだ。
一番に作品と作家があり、真摯に向き合って語り、示す。その立ち向かい方にこそ、新しい読者を産む契機がある。

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長くなったが、私が自分がなぜこの企画を立てて人を集めたのか、どのような記事を求めているのかをできるかぎり伝えたつもりだ。

だが、もしあなたが書いたものが私の求めるものと違うからと言って寄稿を躊躇う必要はない。できるかぎり寄稿を受け付けていくつもりだ。それにこの同人誌も今回限りというつもりはなく、半年から一年くらいのペースで出していくつもりだ。このプロジェクトは継続してやっていきたい。だから今回の締切に間に合いそうにないのなら、次の機会にぜひ寄稿してほしい。

企画用のアカウントを開設しました。今後告知などはこのアカウントでやっていく予定なので、フォローお願いします。

終わりに

この記事では読みたい人以上に書きたい人に送るものとなった。これは、論考を読む人にも語る側へと回って欲しいからだ。そのために作品の、作家の、カルチャーの内へ内へと向かうように仕向けたい。
極論、私は美少女ゲームカルチャーがこの先残るかどうかなどどうでもいいのだ。誰かがいた形跡を残せればいい。美少女ゲームに取り組む人それぞれが、何かしらの形で残すきっかけを作りたい。だからこそ、語りの場を作り内圧を高めていきたい。
そのような何かを遺す力が人へ伝わっていくのを祈って、この記事を終わりにする。

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