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レジリエンスについて

レジリエンスってなに?

子どもに身につけさせたい能力で、『レジリエンス』という言葉を最近良く耳にすることが増えました。

レジリエンスについて、いろいろ本を読んだりした上での、私の解釈です。間違っていたら、私の責任ということで…

レジリエンスとは、ストレスに対する回復力や、受け流し力(弾性)を指します。
ストレスに対して折れない強い心、ではなく、ストレスを受けても回復する力、です。
バネのようなと例えられることもありますが、私は風にあおられながらも折れない柳のほうがイメージに近いです。

人間、どれだけ努力しても、傷つくことはあります。
些細な言葉で傷つくこともあれば、抗えない天災が起こることもあります。
肉親との死別も、いつか必ず訪れます。

回避できる心の傷は回避するに越したことはないですが、全てを排除することはできません。

親にできること

親が、いくら子どもの環境を整えても、子どもに四六時中ついて回り、子どもを傷つけるものをあらかじめ取り除いてあげることはできません。
それよりも、子どもには「傷ついても立ち直る力」を持たせたいです。
親は、普通は子どもより先にこの世を去ります。
親が死んだ後も、子どもが笑って生きていけるようにしておくことが、親の役割ではないでしょうか。

レジリエンス、どうやって身につける?

①子どもの安全安心基地になる
逆説的に聞こえるかもしれませんが、まず親が子どもにとって「絶対に安全で安心できる基地」になることです。
公園で、遊ぶ親子の様子を観察すると、それが見えてきます。

幼い子どもは、初めての場所で戸惑い、最初は親の体の一部に触れています。
子どもが「その場所」に安心感を抱くと、少しずつ親から離れ、遊び始めます。
親が見える範囲にいるか振り返り、時折親の元に戻りながら。
親から離れる距離が少しずつ延び、振り返る頻度も減り、それでもなにか珍しいものを見つけると、親に報告しに戻ってきます。なにかに驚いたり、怖くなったりすると親の元に駆け戻って抱き着くこともあるでしょう。

子どもが行動するには、安心という心のガソリンが必要です。
親を振り返ったり、親の元に戻ったりすることで、子どもは「安心」を補給しているのです。
子どもの安心タンクがいっぱいになったら、子どもは自然と外の世界に興味を持ち、探索を始めます。

②子どもがトラブルに巻き込まれたら

保育園や学校で子どもがケンカをして帰ってきた、なにかトラブルを起こした、トラブルに巻き込まれたときは、レジリエンスを育てる絶好のチャンスです。
親が最初にすべきことは、原因を聞き出して解決を図ることではなく、子どもを安心させて、心の安全を感じさせることです。
子どもは経験値が少ないので、失敗した経験も少ないのです。
そのため、すごく落ち込んだり、自分はダメだと思いこんだり、自暴自棄になったりします。
大人として、子どもに「失敗しても大丈夫なこと」「この世は終わりにならないこと」を教えてください。
そして、リカバリの方法を一緒に考えてみてください。
また、子どもから見ると取り返しのつかない失敗でも、家の中はいつも安心できる場所であることも、合わせて伝えてください。

③日頃からチャレンジさせる
普段から、リカバリ可能な失敗をしておくことも、レジリエンスを育てるのに役に立ちます。
家事は特にお勧めです。
火や刃物を使うときは親の目の届く範囲でやるルールにすれば安心です。

失敗をしたときにすぐ報告するスキル、困ったときは助けを求めるスキルは、社会人になっても必要とされます。
親は、失敗を子どもに報告されたときは絶対に怒らず、前向きに対応することが肝心です。
責めると子どもは、失敗を隔したりごまかしたりします。

親は、「子どもは失敗するもの」と心づもりをしておき、子どもにすかさず「ドンマイ!」や「大丈夫だよ~」と言える準備をしておくと良いです。

④柔軟な思考を身につける
一方から見ると失敗に見える事象も、違う見方をしたら発見かもしれません。
「絶対」こうだ、または「こうあるべきだ」という考え方は、レジリエンスを弱めます。
こうかもしれないけど、ああかもしれない。こうとも考えられるという見方ができれば、「失敗したけど、次に活かすことができる」「嫌なことがあったけど、そのおかげで良い出会いがあった」とプラスに転じることができます。

離別家庭の子どものレジリエンス

私がレジリエンスという言葉を知ったのは、発達障害の子どもたちの療育について調べていたときでした。
その中には「発達障害の子どもは定型発達の子どもに比べ、不器用さや特有のコミュニケーションのため、大人に叱責されることが多いため、レジリエンスを身につけることが重要」という文脈でした。

両親の別居や離婚で子どもは傷ついています。
昔に比べ、離婚する家庭は増え、好奇の目にさらされたり、からかわれたりすることは減っていますが、全く影響がないとは言い切れません。
離別家庭の子どもには、発達特性の有無にかかわらず、レジリエンスが有効なのではと考えています。

特に、離別した両親が「夫婦」としての関係は破綻したけれど、「親」として一定の関係性を保つ姿は、一番の見本になるのではないでしょうか。

まとめ

不幸そうな顔をして、常に愚痴を言っている人には、常に不幸が降りかかり、機嫌よく楽しく暮らしている人が常に幸運に恵まれているとは考えにくいです。
短いスパンで考えると、不運が集中してやってくることもあるでしょう。
戦時下や天災など、個人の力ではどうしようもない不幸もあります。
そんな中でも、日々の暮らしに楽しみを見つけ出せる存在は、実は子どもです。
レジリエンスは、元々子どもが持っている力です。
大人は、その力を信じ、延ばすことにサポートするぐらいの気持ちで良いと思います。

レジリエンスを育む方法は、ほかにもたくさんありますが、一番身近にいる親がレジリエンスを意識して振る舞うことで、子どもは随分変わると思います。

親が子どもの安全安心基地になり、見守ること。
見守っていることが子どもに伝わること。
チャレンジを応援すること。
失敗したときのリカバリ方法を教えること。

これぐらいで十分ではないでしょうか。

参考文献

0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる 

入門的総覧的資料です。レジリエンスの基本的な知識には十分です。
0歳~6歳と書いてありますが、最後の「事例から見るレジリエンス」には幼児から中学生の子どもの悩みを取り上げ、アドバイスや対応、その後の変化が記されています。
実はこの章が一番おもしろいです。



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