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「社員の味方!」はNGですか?  ~PARTNERに込めた想い~

こんにちは

VISION PARTNER メンタルクリニック四谷 副院長の "堤 多可弘"(note , twitter) です。

さっそく2回目のブログ行ってまいります。

院長に引き続き、「精神科医かつ産業医」の我々から、今回は産業医として、さらには”PARTNER”としてのお話です。

1.社員の味方はNG? ~産業医の中立性~

産業医になりたてのころ、勉強を進め、経験を積むにつれて、臨床医との様々な違いを実感し始めました。

そうして学んだことの一つが産業医の基本姿勢です。

産業医は、「産業医学の専門的立場から独立性・公正性をもってその職務を行う」のが基本姿勢です。

独立性は、様々な思惑に縛られない、忖度しない、と理解できます。

公正性もわかります。従業員にとっても、企業にとってもアンフェアにならないこととすんなり理解できます。

一方、厚労省はこんな言葉を使ってます。「産業医学の専門的立場から、独立性・中立性をもって、、、、」(参照はこちら

この「中立性」が私に大きなクエスチョンを投げかけました。

中立ってことは、どちらの側にも立ってはいけないということ?

これって会社はもとより、「社員の味方はNG」ということでしょうか?

駆け出し産業医だった私はかなり悩みました。

中立=「社員の味方はNG」となってしまうと、目の前の社員さんに対してドライな対応しか許されないのか?

臨床医として「目の前の患者さんのことを全力で考える」と教わり、そのスタンスでやってきた精神科医でもある私のなかである種の矛盾が生じ、どうふるまってよいのか迷いが生じます。

(産業医の中でもこの「中立性」に関しては様々な意見や解釈があります。今回はあくまで私のとらえ方です。)

2.意見は中立・助言は全力

それでも業務を続けていき、いろいろと勉強も重ね、経験も積んでいったとき、一つの自分なりの答えを見つけます。

それが

「意見は中立・助言は全力」というスタンスです。

意見はどちらに肩入れすることもなく、プロフェッショナルとしてフェアに述べます。

中立というより公正という言葉の方がイメージが近いかもしれません

復職が十分可能と判断すれば、当然復職可と意見する。

復職が時期尚早であればご本人にも明確に伝えたうえで意見をする。

本人の意思を十分に尊重したうえで、働くという文脈の中での健康状態を見極めて意見をします。

もちろん、本人にも会社にもオープンです。

これは意見の話です。

じゃあ助言は?

その答えはこうです。

助言するときは、めいっぱい社員さんに肩入れします。

復職のために必要なもの、例えばちょっとした考え方や人間関係のコツ、生活リズムの整え方や必要と思われる治療など、時間が許す限りアドバイスします。

精神科における治療と助言の線引きには気を付けながら、産業医として最大限の助言をします。(ご存じかもしれませんが、産業医は原則、診断・治療はしない立場です)

この「意見は中立・助言は全力」というスタンスを意識するようになってからは、産業医としての仕事が一段と楽しくなりました。

なぜなら精神科医として持っていたスタンスとも全く矛盾しなくなったから。

そして我々が掲げている”PARTNER”という言葉に込めた想いとも矛盾しません。

伴走者としてビジネスパーソンを支え続ける。そんな想いです。

3.おわりに

独りよがりかもしれませんが、このスタンスを見つけてからは産業医としても精神科医としても自分の出せる価値も大きくなったと思っています。

産業医として生み出せる価値は、社員さんにも会社にも還元できると思っています。

社員さんが助言によってより良く働くことができるようになれば、本人の人生にはもとより、結果的に会社にもメリットがあるからです。

精神科医として生み出せる価値は、クリニックを訪れてくださる患者さんに還元できると思っています。

薬に頼れない産業医業務の中で磨かれた助言のスキルが精神科の一般の治療、つまりクリニックの治療の中でもとても役立つようになっているからです。

4.最後のオチ

最後の最後にオチになりますが、数カ月前、こんな文献の一説にあたりました。

「産業医は産業医学の専門家として、常に独立性を保持しなければならない。これは労働者側と経営側の両方に責任を持つことを意味することに留意すべきである。(平成10年11月 健康開発科学研究会の産業医の倫理綱領)」

これは独立性についての文章ですが、要するに

「どちらかに偏らず、でも双方に専門家としての責任をもって全力でやるべし」と20年以上前に規定されていたんですね。

自分のやってきたことが多分間違いでないと安心した一方で、まだまだ勉強不足だなと実感した瞬間でした。


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