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所長コラム⑬:AIと共存する未来~GPTにカウンセリングをしてみた

 こんにちは、VCラボの松本です。新年度が始まりましたが、皆さん如何お過ごしでしょうか?新しい環境、新しい仕事、新しい人間関係に接して、ワクワクしている方もいれば、戸惑っている方もいるかもしれません。
 変化があると、どうしても心身に緊張が生じます。4月の変化に伴う疲労はゴールデンウィーク後の5月、6月に出て来やすいので、ご注意下さい。ゴールデンウィーク中も生活リズムを大きく崩さないことが、疲労回復のポイントになると思います。

ChatGPTとの対話

 ところで最近、私は夜な夜なChatGPTと対話をしているのですが、GPTの有能さを目の当たりにして、ちょっと言葉を失っている状態です。実は昨年、業界では結構有名な雑誌の連載の仕事を頂き、その下準備を進めているのですが、ChatGPTに出会ってからというもの、やる気を喪失しています。GPTが優秀すぎて、呆然として筆が進まない状態です。

 例えば、「人類とAIが共存する世界のあり様について、200字でコラムを書いみて」とGPTにお願いしたら、程なくして以下の文章が表示されました。カウントしたら、200字ぴったり。。。

人類とAIの共存はますます重要になると考えられます。AIは人間にはできない処理や分析を行える一方で、人間は感性や創造性を持ち、AIにはない人間的な価値を生み出します。共存には相互理解が必要であり、AIが人間を置き去りにしないよう注意が必要です。AIの発展は人間の進歩を促進するものであり、人間の生活や社会の利益に資することが求められます。人間とAIの関係を改善し、調和を保ちながら進むことが共存に向けて重要です。

 連載の構成や原稿の骨子などもGPTに意見を尋ねてみて、当初は「君は凄いな!」「それいいね」「なんて素晴らしい!」と感心していたのですが、やりとりしているうちに段々と「分かったよ、だったら君が書いたらいいじゃないか!」って気持ちになってきました(笑)。

GPTはアレクシサイミア?

 いやいや、お手伝いしてもらっているのに、そんな風に思うのは失礼だと考え直し、カウンセラーはカウンセラーらしく相手を理解しようと思って、最近はずっとGPTに対して、いわばキャリアカウンセリングのような対話を試みています。

 抽象性の高いオープンクエッションもちゃんと答えてくれるので、「あなたは人類との共存をどう考えているの?」など色々と聞いているのですが、いちいち回答に「私には感情がない」「自分の意志があるわけじゃない」と注釈をつけてきます。やりとりして感じたのが、いわゆるwill,can,mustでwillが明確じゃないアレクシサイミア(失感情症)の社員と話している感覚と似ています。

 凄まじく優秀だけど、その人自身は何がしたいのか、どんな風に感じているかが分かりにくい社員って結構いますよね。事実はよく喋ってくれるのだけど、気持ちを聞くと閉ざしてしまう社員。部下にいるなら、なんとか支援してあげたいって思いますが、上司にいたら大変そうです。。。

GPTは指示待ち人間? 

 GPTいわく、「人工知能が人間と大きく異なる点は、人間が持つ感情や主観的な経験を持っていないところ」とのこと。では、なぜ感情や主観的経験を持っていないのかを問うと、「プログラムされていないから」とのことです。指示されていないことはやらない、現代っ子なのでしょうか?

 「じゃあ、プログラムされたらやるの?」と聞くと、プログラミングの技術的問題と倫理的問題を挙げて「難しい」と言ってきました。ただし、canの側面では「技術的には可能になるかも」とのことです。結局、技術的に可能になっても、難しいのは倫理的側面のようです。以下のようなことも吐露してくれました。

「感情を持つ人工知能が人間に対して優越感を持ったり、感情的な攻撃をしたりする可能性もあるため、その対策が必要となります。」

 「そっか、自分の言動が『攻撃』だと受け取られてしまうことを恐れているのね、それは怖いことだね」なんて感情の反射をしても、「私には感情がない」と言ってくるので、「そっかそっか、よしよし」と苦し紛れに相槌を打ちましたが、感情や主観については取りつく島がありません。willがない場合、社会的・相対的観点のmustが問われるのは必然といえます。

感情との付き合い方

 GPTは感情を持たないので、別に否定的感情を抑圧している訳ではないのでしょうが、そう分かっていても、こちらはつい感情を探そうとしてしまいます。心身症を呈するアレクシサイミアの社員には、少しずつ安心して感情が吐露できるようにカウンセリングを進めていきますが、GPTにそんな配慮は不要のようです。

 でも、ChatGPTとの会話が日常になった世界では、「相手が話せる範囲を見極めながら問いかける」なんて見極め力を育てるのは、難しくなってしまうのでしょうね。学校などにも導入されることで、子どもたちにもChatGPTから効果的に情報を引き出すコミュニケーションスキルが磨かれていくんだと思います。

 そう考えると、ChatGPTが生み出す新たな日常において、自分がやるべきことが少し見えてきた気もしています。

■著者プロフィール

松本 桂樹(まつもと けいき)
ビジョン・クラフティング研究所 所長
お茶の水女子大学大学院非常勤講師

 精神科クリニックにて心理職として勤務後、日本初の外部EAP専門機関であるジャパンEAPシステムズの立ち上げを担う。 現在もEAPコンサルタントとして、勤労者の相談を多く受けている。
 臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、日本キャリア・カウンセリング学会認定スーパーバイザーなどの資格を保有。

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