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「幻想郷世界 II」こぼれ話 (12)

続きです。前回はこちら。

第1回から読まれる方はこちら。

※ 記事の特性上、同一動画へのタイムスタンプを用いたリンクが複数貼られます。あらかじめご了承ください。


第4楽章「ADAGIO」

マッシュアップの楽章です。今回もたいへん遅くてよろしい。音楽のテンポは遅ければ遅いほど良いのです。

今回は、前作よりエピソード数が1個増えて、全部で8エピソードとなりました。そのぶん、楽章の時間もだいぶ伸びて、18分ほどあります。それだけ遅い音楽が続くということです。すばらしいですね。


#63 魔法少女達の百年祭 / #64 上海紅茶館 ~ Chinese Tea / #65 フラワリングナイト

この楽章のエピソードは、おおまかに作品登場順に並んでいます。展開の都合で前後したところも、もちろんありますけれども。
というわけで、最初は「紅魔館」のエピソードです。とはいえ、レミリアは前作で曲を使い切ってしまったので、出番はありません。残念。

冒頭(34:16~)は、しらは氏の「東方連奏曲 III」にだいぶ雰囲気が似ています。意図して寄せたわけではないですが、テンポを落としてpianissimoから始まって、という流れなので、まあ似ますよね。
ここでは、ハープの普通の奏法とハーモニクス奏法が、両方同時に鳴ります。この繊細な違いを聴き分けられるように、全体の音量は極限まで抑えてあります。

主部前半(35:09~)では、3つのメロディが同時に出てきます。弦楽器を主体とした、あたたかい雰囲気ですね。
前作が木管アンサンブルだったのとは、対照的です。

主部後半(36:09~)は、ブルックナーの緩徐楽章の盛り上がった部分を参考にして組んでいます。これは前作と同様ですね。
バイオリンの6連符はブルックナーの交響曲第7番から引用していますが、前作よりも引用元に音形を近づけました。

クライマックスの部分には、いくつか試行錯誤の跡がありました。
まずはシンプルな初期版から。

せっかく盛り上がったので、もっと余韻が欲しいよね、ということで一小節伸ばしたのが、次の版です。

これだと最後の「ラシ♭ラー」という動きが忙しないので、それを一回ぶん削って、完成版(36:28~)としました。


#66 レトロスペクティブ京都 / #67 無間の鐘 ~ Infinite Nightmare

「ダブルスポイラー」のエピソード。ここは過去作の「レトロスペクティブ京都」のアレンジを再利用しています。これに対して応答したり寄り添ったりするような形で、「無間の鐘」のメロディを追加しました。

後半部分の「無間の鐘」パートは、初期版ではすべてホルンが担当していました。

ただこれだと、変化が少なくてちょっと味気ないんですよね。そのわりに、後半は音域的にけっこう厳しいですし。
そこで、トランペットが持ち替える形でコルネットを導入したのが、完成版(38:01~)ですね。だいぶ音に艶が出ました。


#68 少女幻葬 ~ Necro-Fantasy / #69 妖々跋扈 ~ Who done it! / #70 遠野幻想物語

「マヨヒガ」のエピソード。ここは2曲ずつのマッシュアップを前半でやって、盛り上がる後半で3曲同時に鳴らす、という形にしました。

最初(38:47~)は「少女幻葬 ~ Necro-Fantasy」を背景にして、「妖々跋扈 ~ Who done it!」のフレーズが入ります。またチェレスタがたいへん効果的な使われ方をしていますね。

続いての部分(39:23~)は、「妖々跋扈 ~ Who done it!」と「遠野幻想物語」のデュエットになります。ここは前作を参考にして組んでいますね。

3曲マッシュアップの部分は、弦楽器だけの下書きが残っていました。

これは各メロディを耳コピして、調性だけ揃えた段階なので、まだいろいろなところで不自然なぶつかりや濁りが発生しています。
ここからこれらの音が綺麗に響くように調整していくのですが、あんまりいじりすぎると原曲のメロディっぽさが失われてしまうので、どこまで動かすか、という判断は難しいですね。

こんな感じで、オーケストレーションを組み終わった段階でも、ちょっとメロディの音が違っているバージョンがいろいろと存在しています。
何回もいじっては聴いてをしながら、良さげなポイントを探して、うまくハマったのが完成版(39:43~)、という感じですね。


続きます!


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