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「幻想郷世界 II」こぼれ話 (11)

続きです。前回はこちら。

第1回から読まれる方はこちら。

※ 記事の特性上、同一動画へのタイムスタンプを用いたリンクが複数貼られます。あらかじめご了承ください。


第3楽章「VALSE」(続)

#58 デザイアドライブ

3拍子化ゾーンが続きます。

前半(29:45~)の金管アンサンブルについては、前作の「緑眼のジェラシー」が念頭にあって、どこかに入れたいなと思っていました。
華々しいコラールにはなりませんでしたが、これはこれで良いかなと思います。

後半はメロディがオフビートな上に、1小節遅れでの追っかけが入ってくるので、響きはけっこう複雑になっていますね。

最後のブリッジ部分は、Aaug → A/C# → A7sus4 → Bbm7という進行なので、小節線を跨ぐところでいきなり裏切られる感じです。


#59 色無き風は妖怪の山に

ここは全体に2小節遅れの追っかけが入り続けるのですが、最後にそれがなくなって、ベースラインが下降していくところ(30:45~)がお気に入りです。

メロディの進む向きに対してベースラインが逆行していくというのは、クラシック的にはよくある動きですね。
もちろんオーケストラとも相性が良いです。


#60 逆転するホイールオブフォーチュン

テンポを増して勢いよく、スケルツォ的に。
この曲の前半も、2小節遅れでの追っかけを入れてあるのですが、メロディラインと同じ動きをするので、メロディがロングトーンになるところ以外はあまり存在感がありません。

後半は、同時進行で逆行型の対旋律が入るようになります。

こちらは非和声音が多かったりして、意外と目立ちますね。


#61 空中に沈む輝針城

冒頭の鬱屈とした雰囲気(31:22~)は、最高にうまく書けました。
ファゴットとコントラファゴットが最低音域で抑圧する中で、ポツンと浮かんでいるチェレスタが怪しさ満点です。
そのあとに刻みで入ってくる弦も、オフビートでつけてくる大太鼓も、最後にB音だけの連打になって全休止が入るのも、たいへん良いです。
原曲の陰鬱さを、余すところなくアレンジできたと思います。

主部は低音のいない状態から始まるので、冒頭との対比が際立っています。
中間部はワルツの雰囲気を維持するため、3拍子化しました。

そのあとに入ってくる対旋律は、原曲にあったものですね。
後半部ではメロディのリズムが同じになるので、一体化してしまいます。


#62 リバースイデオロギー

ラストは豪奢なワルツで締めます。正邪のキャラに合っているかどうかは、あまり考えない方向で。
ここはもちろん前作のラストを意識していますが、それに加えて、過去作の「亡き王女の為のセプテット」のワルツアレンジも参考にしました。

この曲の初期版では、繰り返しの回数が1回少なく、e-mollへの転調後もワンコーラスで終わっていました。

しかしまあ、これだと明らかに語り足りないですよね。d-mollの部分とe-mollの部分の接続もイマイチで、連続性が感じられない。

というわけで、ワンコーラス伸ばしたのが次の版です。

やはりこちらの方が、話の流れが分かりますね。ベースラインにもバリエーションが出ていて、ドラマ性が上がっています。
ここから打楽器を整理したのが完成版(32:34~)ですね。

このあたりの修正には、前掲の「亡き王女の為のセプテット」のときの経験が生かされた感じです。
あれのときも話の流れに説得性を持たせるために、展開部を伸ばしたり、クライマックスにワンコーラス追加したりしていました。

この曲も、e-mollに入ってから2小節遅れの追っかけが追加されています。

ただこれは対旋律と言うよりは、内声を埋めるための音が退屈にならないように、メロディをなぞって動かしている、というくらいの意味ですね。
旋律としてはほとんど聴こえてこないと思います。

終結部では「リバースイデオロギー」を回想しつつ、次の楽章の調性を準備します。ラストのメロディがビオラに出てくるのが、また渋いですねえ。


次回は4楽章に入ります!


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