「幻想郷世界 II」こぼれ話 (16)
続きです。前回はこちら。
第1回から読まれる方はこちら。
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第5楽章「FINALE」(続)
#90 ピュアヒューリーズ ~ 心の在処
ひとつめの山です。前曲でオーソドックスに盛り上がってからのこの曲なので、なんというか、「破壊的な展開」を作るのにだいぶ苦労しました。
冒頭の部分はいろいろ書き直しているのですが、途中で参考文献としてベートーヴェンの交響曲第6番を組み入れました。
というわけでその冒頭、残っている初期版はこんな感じです。
まだ打楽器を入れる前の段階ですが、最初からトランペットとトロンボーンの掛け合いになっているので、前半8小節と後半8小節の差があまりないんですよね。冗長な感じになってしまっています。
そのあとの接続部は、ほぼ弦楽器しか書いてない段階ですが、ここも刻みがずっと鳴っていて、息の長いメロディとはちょっと合わない感じ。
打楽器が入りましたが、根本的な問題は未解決ですね。
接続部の方も管打が入っていますが、やはり刻みがずっと鳴っていてくどいな、という印象です。
ここでは、先述したようにベートーヴェンの交響曲第6番を参考にして、メロディを全弦楽器が主体になるように書き直しています。これで前半部分から金管の成分が抜けて、メリハリがつきました。だいぶ完成形に近づいています。
接続部の方は刻みが減って金管が整理されたので、これでOKですね。完成版(57:28~)とほぼ同じです。
ところが、このあとに何故かこんなのが来ます。
前半部分を高音域と低音域に分けて交代させているのですが、これは余計でした。推進力がなくなってしまっています。
ということで、ひとつ前の段階に戻して打楽器を調整したのが、完成版(57:06~)ですね。
さて、続いてはコラールの部分。ここはブルックナーの交響曲第9番より、補筆された第4楽章を参考にしました。
この部分の初期版はこちら。
参考文献のとおり、メロディはすべてトランペットに割り振っていますが、同じことを2回繰り返すのもあって、ちょっとくどいんですよねえ。
というわけで、金管を一旦消して、最後まで組んだのが次です。
前半は金管がなくても骨子は完成しているのですが、後半はだいぶ違っていますね。
3コーラス目はメロディがバスに行って、ベースラインが上声に来る形で入れ替えているのですが、上声が半音下降するのはだいぶ不思議ちゃんな感じです。4コーラス目もゼクエンツがなく、さらっと終わっています。
前半はメロディの主役がホルン → トランペットと交代するように、金管が肉付けされました。これで完成ですね。
後半も金管打楽器が入ってきていますが、やはり3コーラス目の不思議ちゃんな感じは残ってしまっています。
3コーラス目、半音下降の上声がなくなり、裏メロがトロンボーンで補強された上で、さらに保続音のティンパニが入りました。だいぶ破滅的な音色になっていい感じですが、最後のシロフォンはいただけない(笑)なんでそこでそんな軽い音を持ってくるんだ(笑)
4コーラス目はゼクエンツが追加されて、ドラマチックになりましたね。
ということで、3コーラス目のシロフォンをグロッケンに替えて、完成版(57:51~)です。
この曲は、原曲に十字架音形が入っているので、
最後はアーメン終止で終わります。
#91 ラストオカルティズム ~ 現し世の秘術師
ここから2曲は推移的な谷の部分です。黄昏作品をこの部分に持ってくるのも、前作と同様ですね。
最初の部分(58:48~)、保続低音の上にチェレスタだけが浮いているというアイディアは、過去作(未完成)の「魔法少女まどか☆マギカ」メドレーから流用しています。
主部のワルツ(59:12~)でちょっとだけ入ってくるフルートの対旋律は、1小節遅れのいつものやつですね。メロディがロングトーンになると、途端に追っかけを入れたくなります(笑)
静かなホルンによる中間部のあとに、ワルツがa-mollで帰ってきますが(60:07~)、ここでの対旋律は、前とは違う自由なものに入れ替えられています。
このへんの雰囲気はとても好きです。やはり3拍子はいいものだ。
ここの部分、対旋律が入っていない段階の中間ファイルが残っていました。
やっぱりちょっと寂しいですよね。
最後のつなぎに変なのが入っているのは気にしない(笑)
#92 今宵は飄逸なエゴイスト (Live ver) ~ Egoistic Flowers.
軽く、そして軽やかに。5楽章はとにかく音楽が重たくなりがちなので、軽くできるタイミングは貴重です。
この曲、原曲は結構しっかり歌っているのですが、そういう役回りをさせたかったので、かなり抜いたオーケストレーションにしています。
コラール(61:01~)から弦楽四重奏につながっていく、というのは前作と同じアイディアなのですが、軽くしたいという要請があるので、コラールもさらっと流すように処理していますね。
弦楽四重奏の部分(61:25~)はもちろん、しっとりとした雰囲気になっています。ここはすんなり書けました。
前作もそうでしたが、各声部がけっこう積極的に動くんですよね。弦楽四重奏という編成は、ホモフォニー的にやると途端につまらなくなってしまうと個人的には思っているので、ポリフォニー的に処理しています。
途中で寄り添うファゴットが最高。
続きます!
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