見出し画像

"転調が印象的な曲"特集【Music-Con-Text】vol.25

「Music-Con-Text(以下MCT)」は、音楽家(音楽を作る人・歌う人)が作る新しい音楽メディアです。素敵な音楽はたくさんあるけど埋もれてしまいがちな昨今、バズっているバズってない、古い新しいに関わらず、音楽家がいいなと思った音楽を紹介する音楽メディアを目指しています。毎週月曜日夜21時更新予定。noteマガジン「Music-Con-Text」をフォローしてお待ちください。

マガジンをフォローしてね!

"転調が印象的な曲"特集

今回は「転調が印象的な曲特集」です!音楽を作る人にとっては転調はなじみぶかいと思いますが、リスナーの中には"転調"ってよく聞くけど具体的にどういったことかよくわからん、なんとなく変わってるのはわかるけどなー、って感じの方も多いと思います。今回は音楽家の目線から"転調"を特集しました。ちょっとテクニカルな話もあるかもしれませんが、読んで、曲を聴いてみてください!それではどうぞ!(sumeshiii)


✏︎Hibiki Bison の"転調曲"

純愛ラプソディ / 竹内まりや

スローなブギにしてくれ(I want you)/ 南佳孝

Hibiki Bisonです、個人的な意見と、自身の恥ずかしいエピソードを書きます。近年強く思うことが、音楽の要素の中で “コード進行” だけが過剰に重視されているということです。転調への流れ、また細かく挿入される部分転調など、曲を分析する上でコード進行はもちろん非常に重要なトピックだと思います。しかし、音楽はコード進行だけではありません。メロディ、歌声、歌詞(世界観)、リズムなど、多様な要素が合わさって完成するものです。またキーにはそれぞれ固有の特徴、印象があると聞きました(この辺は音響心理学を専門にされている方が詳しいかもしれません)。歌詞やメロディ、リズム、それぞれにマッチした調があり、それを「転じる」のは非常に挑戦的なプロセスなのだと思います。(最近コード進行ばっかりに注目して、なんか適当に転調してくる曲多くない!?)  

私が好きな転調を挙げさせていただきます。まず「純愛ラプソディ / 竹内まりや」です。ラストサビの前、V7のドミナントからトニックに戻る間で、「ソラシドレミファ」で転調するこのキュートさ、めちゃくちゃ素敵と思いました。シンプルですが曲の雰囲気が非常に効果的に入れ替わります。もともとの調の雰囲気を損なわずスムースで印象的な転調で、本当にびっくりするくらい素敵だと私は思います。そして強調したいところは、歌詞の世界観の移り変わりが転調によって感じられるということです。悲劇の脇役的存在から、過去も含めて愛せるより深い女性の像が浮き彫りになるように個人的に感じました。  

南佳孝氏の「スローなブギにしてくれ(I want you)」もすごく好きです。Vaugで転調、ピアノとオルガン、そして南氏の歌声が洒落ていますね、最高です。 転調することは意外と簡単です、DAW上ではMIDIを一個か二個か上に上げれば簡単に転調できます。しかし、その転調にどんな意味があるのか、どれだけの音楽的な推進力や深みが含まれているのか、自分自身考えて曲を作りたいなと感じるトピックでした。  

最後に、友人に言われた大切な言葉があります、ずっと大切な言葉です。「お前の曲の転調は、ドヤ顔が見えるから寒い」。

▼Hibiki Bison の楽曲紹介

水色の期待 feat. やどりりな

改めて聴いて攻めたMIXしたなぁと感じています。 また、自分の意思で転調した曲ってあまりないのだなぁと今回の記事を書いて思いました。


✏︎橙ミャオ の"転調曲"

Music-Con-Textをお読みのみなさま、こんにちは!
「作曲ねこ」なる肩書で活動している、橙ミャオと申します!

作曲家たちはなぜ楽曲を『転調』をさせるのか?転調はいったい、楽曲にどんな効果をもたらしているのか? みなさまもこんな疑問を持ったこと、一度はあるとおもいます。ありますよね。あるんです。この場は一旦あるっていうことにしておいてください……。

さておき、そんな疑問に対する(あくまでわたしの、ですが)ひとつの回答はこちらです。 「音楽における転調とは、いわば映画やアニメ作品における『シーンチェンジ』である」

この考えかたはわたしが制作した楽曲にもきっちり色濃く反映されているので、 まずは今回のメインディッシュの前に、橙ミャオ制作(作編曲)の楽曲を聴いていただきましょう。

「鼓拍 - Full Brave」
アツい歌唱と重厚なアニソン・特撮系ハードロックサウンドが特徴のこの楽曲ですが、
Aメロ入り(0:27)、Bメロ入り(0:40)、Bメロ途中(0:58)、サビ入り(1:07)、
それぞれの箇所で上へ上へと転調をしていくことで、見える景色・シーン・主人公の視点をコントロールしています。 このように、特にいわゆる歌モノ、と呼ばれる作品において、 「シーンチェンジとしての転調」はかなりメジャーな手法として使われている印象です。

じゃあ「マイナーな手法としての転調」もあるの?というおはなしになってくるわけですが、 ようやくここからが本題!そうしたあまり一般的でない転調を組み込んだ、 「転調が印象的な曲」をご紹介します! こちら極めて長い曲のため、まずは冒頭70秒ほどを聴いてみてくださいね。

「Steely Dan - Aja」
稀代の完璧主義者たち、スティーリー・ダンによる怪作「エイジャ」。
いやこれ、そもそもどこで転調してるの?そう感じたかたもいると思いますが、 この短い間に最低7回(解釈によってもっと多い回数にジャッジしうる)の転調を行っています。
「山の中から浜辺へのシーンチェンジ」なら誰もがシーンチェンジに気付くけれど、 「よくわからないところからよくわからないところへのシーンチェンジ」だとそもそもシーンチェンジを認識できない、いわばそんな寸法だとでも言いましょうか。

「調が転ずる」ためにはそもそも本来、「いまはこの調にいますよ!」ということを明確に言えなければいけないわけです。 しかしこの曲は「明確な調」が希薄な時間が多く、ほぼつねに曖昧な調のまま"なんだかよくわからないところ"を次々と映していくような、そんな楽曲に仕上がっています。

じゃあこの曲って、そもそも転調しているって言えないんじゃないの?
いえ。見た目にはそう見えないだけで、実際アカデミックに紐解いていけば「転調と呼ばれているものと同じ構造を持ってはいる」んですよね。だから転調はしている!と言わざるを得ない。だけど一般的に言われる転調とあまりに意味合いが異なる……一体なんなんだ、何者なんだこいつは?

小難しいことをいろいろ捏ね繰り回しましたが、
つまるところこの曲は「『転調』という発想の限界」を突き付けている楽曲なのだ、とわたしは解釈しています。この曲を真に理解したくば、ポップミュージックの常識は捨てろ。そんなある種モダンアート的な問いを突き付けられているようにすら感じるのは、果たしてわたしの思い違いなのかどうか。

もっとも、転調とはなんだ?みたいな、そんな哲学じみた小賢しい思考を抜きにして、 スティーヴ・ガッドのドラムスやウェイン・ショーターのサックスプレイを浴びるだけでも、その迫力に心酔できることでしょう。 50年近く前の作品ですが、未だに「早すぎた天才」と称される妖怪じみた曲。その理解し難さに、もしよければわたしといっしょに挑んでみませんか?


✏︎Akatsuki’s Music Room の"転調曲"

こんにちは、Akatsuki’s Music Roomです。
今回は『転調が印象的な曲』ということで、本題に入っていこうと思うんですけど。 転調の中にも分かりにくい転調があったり逆にメチャクチャ分かりやすい転調もあります。 そして自分は転調なら転調で分かりやすいのが好きだったりします。 

最終的に音源が見つからず、楽曲のリンクが貼れなくて残念ですが、このアルバムの中にあるDouble Cast という曲が凄く好きです。 Aメロとかは普通に8ビート刻んでるんですが物語が進むにつれどこか不安定になっていくそして3拍子の部分が唐突に現れて主人公の内面まで映し出す。
そういう物語テイストな作品です。
自分は少女病さんの事が凄く好きですけど、アンサンブルとか色々複雑怪奇でコピーしようとまでは至りませんでした。 ダブルキャストこの言葉の意味を本当に理解して聴くと『あぁ、やっぱり』となります。自分がそうでした。

▼Akatsuki’s Music Room の楽曲紹介

さてと自分の曲ですが、

こちらになります。長尺作業用配信音楽第2弾になります。 それではまた会える日まで。


✏︎おまる の"転調曲"

こんにちは。ピアノ伴奏系Vtuberのおまるです。今回は『転調が印象的な曲』特集ということで、音楽理論をのらりくらりと適当に通過してしまった私が難しい分析はできないけどピアノで弾いたときに「こ、これは?!」となった曲をいくつかご紹介します。

前提として、ピアノ弾きにとっての転調は、黒鍵白鍵の場所が変わり指の運指や配置が変わって(ダンスの振り付けがちょっと変わる感じ?)指の形によってはめちゃくちゃ弾きにくい箇所が出てきたりするので急な転調は練習が必要で、転調が多ければ多いほど、演奏につかうエネルギー消費が高めになります。  

それを踏まえて、バカみたいに(ハッ…スミマセン)転調する曲を2曲紹介させていただきます。

まずは、

東京卍リベンジャーズOP
Offical髭男dism『Cry Baby』

イントロ開始わずか10秒で転調→Aメロ転調→Bメロ転調(細かく転調)→サビ転調… →最後の最後にトドメの転調

ざっと11回くらいは転調している感じです。ひとときも気は抜けません。

何度も何度もタイムリープして未来を変えようとする主人公の姿を転調で表現してる(のか…もしれないという勝手な妄想)捗りますね。

そしてこの転調を越える、エグい鬼畜転調する曲は…

カードキャプターさくらOP
坂本真綾『プラチナ』

最初に申し上げたとおり音楽理論をのらりくらりとかわしてきたためきちんとした分析知識を持ち合わせていないので、あくまでも体感での話です。

Aメロだけで4回転調してる
Bメロ3回くらい転調
サビ3回くらい転調
二番Aメロ転調→二番Bメロ転調→サビ転調→Cメロ転調→ラスサビ転調…
全部転調しとるやないかーい!

作曲者の菅野よう子さんのすごいところはめちゃくちゃ自然に美しく流れるようなメロディーとともに曲が転調していくところかなと思うのですが、弾いてる側にはめちゃめちゃダイレクトに転調が伝わります…!!耳と頭では、次にこの音に行く、とわかっていてもとっさに手が対応できないっ…エグぅと、なります。でも好き。大好きです。プラチナ。

転調というのは、気持ちとか時間の移り変わり的なものも表現してくれるものかな、と思っていて、プラチナは、カードキャプターさくらというアニメで、いろんな経験を経て成長していく、主人公さくらちゃんの姿みたいだな(という勝手な妄想)捗ります。

以上、『転調が印象的な曲』の紹介でした。

▼おまる の楽曲紹介

自分の曲紹介は今回は伴奏で参加させていただいた曲とさせていただきます。

ホム・レス
『からあげにしちゃうぞ』

なんかクセになる曲!ぜひぜひ聴いてみてください!


✏︎sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司 の"転調曲"

転調が印象的な曲、ということでこの曲を紹介します!

大江千里「Rain」

音楽的にいうと
Aメロ→転調→Bメロ→転調→サビ
となっています。

ミャオさんもおっしゃっていましたが、転調がもたらすシーンチェンジの効果を上手く使った楽曲だと感じます。まるでドラマのシーンが切り替わっていくような転調です。

歌詞と合わせてみると、
Aメロでは男女とその周りの街や他人を含めた情景描写

〜雨の夜にきみを抱きしめてた
道路わきのビラと壊れた常夜燈
街角ではそう だれもが急いでた〜

転調してBメロでは男女二人のカットになり、

きみは雨にけむる
すいた駅を少し走った

サビの転調で二人がエモーショナルにクローズアップされます。

今のうちにきみをつかまえ
行かないで 行かないで そう言うよ

その歌詞のシーンの移り変わりを、音楽でも転調を使って表現してる、というふうに聞こえます。それが無理矢理じゃなく、すごく自然に、流れるように構成されてるんですよね。

う〜〜〜〜〜ん、美しい〜〜〜〜〜〜!!!

音楽を聴く上で、転調がどういうものかなんてよくわからなくていいと思っているけど、この曲を聴くとたしかにA・B・サビで雰囲気が変わって、詩と連動して世界観が表現されているのがわかる。歌曲は音と詩だけ(正確には音だけ)なので、その音から自分だけのイメージが湧き上がって音楽体験になる、それが音楽の面白いところなんじゃないかなと改めて思います。

目の前にトレンディドラマが浮かんでるもん!(見たことないけど)

さて、今回の転調はA→Bが短三度下への転調、B→サビが短三度上への転調、ということで結果元のキーに戻ってきているだけなんですが、この短三度下がって上がる転調は、KANの「愛は勝つ」でも使われています。なんだかバブル期、平成初期の香りがする転調のような気がしますが、その原因はいったいなんなのだろう・・・!

▼sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司 の楽曲紹介

そんな短三度(上にいくだけですが)転調を使った曲がsumeshiii作でもありますので、聴いてみてね!


MCTメンバープレイリスト!随時更新中!

MCTに記事を書いているメンバーのオリジナル曲プレイリストがあります!記事と合わせて楽しんでね!プレイリストはメンバーが増えると随時更新されていきます。時々チェックすると曲が増えてるかも・・・?!

Apple Music

Spotify

Artwork by 詩川天楽


参加したい音楽家の方、募集!

参加者募集

音楽家(楽曲制作をする人、作詞をする人、エンジニア、そして、歌う人)で、この企画に興味ある、参加してみたい、という方はぜひsumeshiiiのX(Twitter)や、Discord知ってる方はDiscordまで、ご連絡ください!運営Discordサーバーを制作しましたのでご招待します。

sumeshiiiのX(旧Twitter)はコチラ↓↓
https://twitter.com/araki_s_sumeshi

まずは1曲、特集内容にそった自分のおすすめ曲をコメントしてみるというだけでも大丈夫ですので、ぜひ参加してみてください!やってみて合わなかったら読む専に徹底しても大丈夫ですし、抜けても大丈夫です!音楽の紹介コメントって結構楽しいし、それを各自ばらばらにあるよりかはコンセプトの元にまとまってたほうがより効果があると思うのですよね・・!そんな意図もMCTにはあります。

今後の展望

今回特集記事で書いたような、楽曲紹介コメントを書いてくれるメンバーを募集して、記事を定期的に出していけるようにできたらいいな、と思っています。

そして、現在はsumeshiiiのnoteに投稿していますが、MCTに参加してくれるメンバーが増えれば、その中からご自身が編集長として各自で特集を組んでご自身のnoteで公開するという方がどんどん出てきたらいいなと思っています。(なのでnoteのマガジン機能を使います!)そうすることで、ご自身の音楽と記事を紐付けることができ、記事の閲覧者が増えるほど自身を宣伝する機会が増えていくことになると思っています。それがMCTの最大の狙いです。

さらには、ライブ配信と連動してみたり、Spotifyのプレイリストやポッドキャストの連動もしてみたいし、さらにその先はコンピレーションを作ったりなど、より広がりがある展開ができると考えています。最初は音楽家限定にしていますが、そのうち、ライターの方のコーナーやリスナーが参加する企画などもできたらいいなとも思っています。


バックナンバー

Music-Con-Textの詳しいコンセプトや、sumeshiiiが立ち上げた理由、理念などはこちらの記事に書いてありますので、合わせて読んでみてください!

他にもこちら!

毎週 月曜日夜更新予定!マガジンをフォローしてお待ちください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?