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【Vtuber独占インタビュー】雪藍【現役女優】

 VIRTUAL LOGUEが企業の後援を受けず活動する個人勢Vtuberに独占インタビューを敢行する企画、

INTERVIEW with the V

 今回は、現役女優Vtuberとして歌や演技で幅広くご活躍される雪藍さんをゲストにお迎えします。

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※今回のアイキャッチはなんと雪藍さんのお手製です。

なぜVに?

――Vtuberになろうと思ったきっかけを教えてください。

 実はわからないんですね、これが。

――!?
 
 考えなしに見切り発車しがちで。(苦笑)

 Vtuberになるときも「よし!」と思ったその日にはボイスサンプルを収録してikuyoan先生に企画書を提出していました。

――ちなみにボイスサンプルはどんな内容を?

 普段のリラックスタイムの過ごし方を紹介する2分程度の内容でした。デザインを担当していただいたikuyoan先生も「実際の声やしゃべり方を参考により具体的なデザインに落とし込んだ」とおっしゃっていましたね。

 おかげさまでデビュー後も「姿と声が一致する」と評判で。……ボイスサンプルのときはもう少し格好良かったんですけれど(笑)

――お話をうかがっていると「思い立つ日に咎めなし」という感じです。

「幸運の女神には前髪しかない」
 という格言をいつも心に留めています。

 ご紹介に与りました通り私は「現役の女優」でもあるのですけれど、女優のお仕事でもオーディションを始めとした役を頂くチャンスには迷わず飛び込むことにしています。

 オーディションに受かるか自信がなくても、役をやれるか不安でも、挑戦しなければ可能性はゼロです。

 手を伸ばさなければチャンスは永遠に掴めません。

 そして、その”とき”を過ぎてしまえばチャンスを掴む機会は二度と巡ってはこないかもしれない。

 だからこそ、思い立ったら即行動しますし、常日頃から自分を磨き、鍛え、いつ目の前に現れるかわからないチャンスに向かっていつでも走り出せるように準備しています。

――最近はテレワークの推進でマイクに向かって喋る機会が以前より格段に増えました。ぜひプロから読者へ「発声」や「滑舌」の指南をしていただけませんか。かくいうわたしも「滑舌の悪さ」には困らされています。

 まずは自分の口の構造を知るところからですね。私なら「舌が大きいせいでくぐもった声」になりやすいとか。あとは、現代の日本人はそもそも歯と歯の間をしっかり開けてしゃべらないので、そのへんの意識付けも大事だと思います。

――なぜしっかり開けてしゃべらないのでしょう。

 コロナの影響でマイク越しに人と接する機会が増えたというのはひとつの原因ですね。手元のマイクに向かってしゃべっているとどうしても独り言のようなしゃべり方になりがちです。

 あとは、小声でボソボソしゃべると自分の「本心」を隠せるというのもあるかもしれません。日本人は恥ずかしがり屋なのでハキハキとした明朗なしゃべり方に苦手意識を持っているようにも見受けられます。コンビニ店員の「しゃーせー」なんか代表例ですね。

 ちょうど滑舌について解説した5分前後の動画を投稿しているので、滑舌にお悩みの方はよかったらご覧になってください。


――いまの動画をはじめ最近は「現役女優」という強みを生かしたコンテンツが非常に目立つ雪藍さんですが、デビューからしばらくはご自身が女優だということは伏せてらっしゃいました。

 初期の頃はあくまでも「鬼の戦士」というキャラクターを前面に押し出して他のVtuberさんと似たような活動をするつもりでした。私の中に「Vtuberは自身のキャラクターを生かして活動するもの」という先入観があったせいです。

――初期のアーカイブを見ると結構とっ散らかった印象があります。

「Vtuberはゲームをやるもの」
「配信頻度が何より大事」

 という先入観で平たく言えば「迷走」していました。自分でも「しっくりこない」という配信をずっと続けていたので当時はなかなか辛かったですね。自分でも納得のいかない配信をして、しかも、数字が取れるというわけでもないんです。

 他のVtuberさんが同じゲームを軽妙なトークを交えながらずっと上手く楽しそうにプレイしているのを見ては「向いてないんじゃないか」と自信を喪失する日々で……。

――配信で「お芝居」をなさろうとは?

 自分の中で「Vtuber」と「お芝居」がなかなか素直に結びついてくれませんでした。

 私の活動基盤は長時間のお芝居をしっかり見せるドラマや映画です。You Tubeの視聴者層には「長過ぎる」んじゃないかと不安で。もしやるならそれこそテレビ並のクオリティが必要なんじゃないかと勝手に思い込んでいました。

――どんなきっかけで女優路線に舵を切ることに?

 禰好亭めておさん主催の『Vtuberを発掘せよ』への参加が大きな転機になりました。

 各々の専門分野を持った個人勢Vtuberが一同に介したあの企画を見たとき、

「私も女優をやっていいんだ!」

 と思えたんです。

――『Vtuberを発掘せよ』への出演から配信内容がガラリと様変わりしました。

 鬼の戦士という「キャラクター重視」の路線から現役女優という「タレント重視」への路線変更は私にとっていわば第二のデビューでした。自分自身の「本当にやりたいこと」がようやくできるようになったんです。生まれ変わったような気持ちがしました。

――活動の方針がようやく固まったのですね。

 Vtuber活動では自分の「やりたいこと」に素直になるのが大事なんだと痛感しました。他のVtuberさんを見て「こうするべき」と活動の幅を無意識に狭めるのはよくありませんし、自分の納得のいかない活動をしながら浮き沈みする数字と睨めっこしているといずれ心を病んでしまいます。半年間の迷走期は私も本当に胃が痛かった……。

 客観的な評価ももちろん大事ですけれど、今の私にとって一番大事なのはやっぱり「自分が納得のいくコンテンツ」を作れるかどうかです。私には「お芝居」という「独自の強み」があったことをあらためて「再発見」させられた半年間の迷走期でした。

――今は伸び悩んでいるVさんもふとしたきっかけから「自分の殻」を破って素敵な才能を見せてくれるかもしれませんね。

 私もまだまだ手探りの段階なのでなんとも言えません。でも「なんの取り柄もない人はいない」というのが私の持論ですね。

――最初の段の最後にこれまで話していない話題についてお話してください。好きなケーキの種類でもいいですよ。

 好きなケーキはチョコレートケーキです。ラズベリーソースがかかっているやつが好きですね。

――私はやっぱりチーズケーキが好きですね。


なぜ女優に?

――昔からお芝居はお好きだったんですか?

 子供の頃は教室の片隅で本を読んでいるようなあまり目立たない子供でした。夏目漱石の『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』が好きでしたね。あとは『ハリー・ポッター』なんかの児童文学も読んでいました。

 だから、というわけでもないですけれど、芸能界のきらきらしたおしゃれな雰囲気にはあこがれを感じていました。子供心に「映画女優になったらクラスの人気者になれるのかな」なんて思ったりもして(笑)

――どんな映画がお好きでしたか?

 キャサリン・パターソン原作の『テラビシアにかける橋』ですね。

 少年少女が近所の橋を渡った先に空想の王国「テラビシア」を作り、そこで遊んでいるのが前半のストーリーです。

 夢か現か分からない楽園と現実の対比、
 そして突然訪れる少女の死という悲しい現実。

 全てを乗り越え成長した主人公はまた少女を思って楽園につづく橋をかけるんです。

 台風の日曜の退屈な午後を潰すために観始めたのですが、観終える頃には「私もこんな仕事がしたい」とテレビの前で感涙にむせていました。

――本格的にお芝居を目指したのはいつ頃に?

 中学生の頃にアニメを観て沢城みゆきさんや朴璐美さんにあこがれたのがひとつの転機でした。実際にお芝居の舞台に立ったのもこの頃ですね。

 名門進学校を支配する「既存の価値観」からの逸脱を許さない窮屈な雰囲気に「これ以上ここでは生きられない」と息苦しさを感じて生まれて初めて両親にわがままを言いました。

「お芝居がしたい」

 と。

 実際にお芝居の勉強をし始めるとようやく「自由」になれた気がしました。子供の頃に鏡の前でごっこ遊びをしていたのを思い出したりして。演じることや表現することや何かを突き詰めることがとことん好きなんだと思います。

――どんなごっこ遊びをなさっていましたか?

 個人の趣味の範囲でネット声劇をやっていたのもあるいは「ごっこ遊び」と呼べるかもしれませんね。

 著作権フリーの台本を使ってSkypeによる読み合わせをするイメージです。社会人から学生まで幅広い年齢層で集まってお芝居をするのは楽しかったですね。みんなお芝居が大好きな人たちで。

 そんなわけで、ネット上でずっと「声」の活動をしてきた経験もあってVtuberになるのにも抵抗はまったくありませんでした。

――学生時代は他にどんなことを?

 お芝居だけでなく、日本舞踊、狂言、歌、ダンス、アクション……と沢山の実技の勉強をしていました。

 座学では特に演劇史の授業が好きでしたね。

 演劇の原点と言われている「ギリシャ悲劇」から歌唱と舞踏の要素を併せ持つ「喜歌劇(オペレッタ)や近現代に成立した「不条理演劇」などなど戯曲を読むのと同時に作品が作られるに至った時代背景についても詳しく学びました。
 
 比較的近代のものですと「セールスマンの死」や「ガラスの動物園」で有名なテネシー・ウィリアムズ……。

 最近の日本の戯曲で一番衝撃的だったのは「ブルーシート」ですね。東日本大震災の直後に作られた作品なのですが……本当に凄いです。ネット購入もできますので是非とも読んで欲しいですね。

――古典の名作でお好きなものはありますか?

 特にチェーホフですね。
『三人姉妹』
『ワーニャ伯父さん』
『桜の園』
 どれも文章が美しくて大好きです。

 たとえば、三人姉妹ならこの幕切れの台詞。

(イリーナ)
「やがて時が来れば、どうしてこんなことがあるのか、なんのためにこんな苦しみがあるのか、みんなわかるのよ。でもまだ当分は、こうして生きて行かなければ……働かなくちゃ、ただもう働かなくてはね……」

(オーリガ)
「ああ、可愛い妹たち、わたしたちの生活は、まだおしまいじゃないわ。生きて行きましょうよ! 
ああ、あの音楽の響き!
あれを聞いていると、もう少ししたら、なんのためにわたしたちが生きているのか、なんのために苦しんでいるのか、わかるような気がするわ。……それがわかったら、それがわかったらね!」

――海外留学もご経験されたそうですね。

 詳しくはお話しできないんですが、海外の演技学校への短期留学で「身体の使い方」「感情解放のメソッド」「映像のお芝居」などの勉強をしました。

 いちから脚本を書いてカメラアングルや演出も考えて、自分が出演する五分程の一人芝居の短編作品を作るんです。この作品作りがまたとても面白いのですが、今ここでお話することは事情があって残念ながらできません。

 海外のやり方を勉強して、お芝居も生でたくさん観て、刺激にもなりましたし、世界が広がりました。

 留学から帰ってきてしばらくたった今も女優の仕事で出演した映画が海外の映画祭で受賞したり、女優としてノミネートされたりとありがたい機会が多々あるのですが、その映画祭で各国のノミネート作品を観ているととても刺激を受けます。

 世界にはこんなにすごい表現やお芝居をする人達がいると毎度思いますね。

 視野を広くすることや、アンテナを張り巡らせることの大切さを改めて感じます。

――あらためてお芝居にのめり込むようになったきっかけについて教えてください。
 
 学生時代に踏んだ舞台で「私がこの役やるの?」という役を割り振られたことがあったんです。私よりずっと年上で夫も子供もいるご婦人の役でした。私にはもちろん夫も子供もいないから役作りはすごく考えさせられました。夫役とも子供役とも相談に相談を重ねて。

 私は「依代」があると演技に入り込みやすいので「家族の写真」を撮って肌身離さず持ち歩いたりもしましたね。暇なときにじっと家族の写真を眺めてどんな思い出があるのか想像してみたりして。そのときに感じた匂いや肌のぬくもりを想像すると本当に「家族」のことが愛しく感じられるんです。

 お芝居の幕が上がると、私は「妻」であり「母」でした。舞台の上に役の家族ではなく本当の家族がいると思いました。夫や子供と目が合うと心の底から愛おしくて仕方がなかったし、泣くシーンでは心の底から泣きました。

――泣くシーンはどんな?

 迫害された妻と子供を守るために夫が死ぬシーンでした。

 夫婦であり母であるという関係性なので、恋人が亡くなるのとはまた違う切なさがありました。夫を犠牲にしたくないけれど、まずは子供を守らねばという気持ちや、夫の「妻と子供を守る」という覚悟を受け止めて、つらい気持ちをこらえて死地に行く夫を見送りました。

「いつかどこかにいた私」

 として役を「生きる」役者の醍醐味を味わった瞬間でした。

――お芝居の魅力とは?

 役者は観客の心を揺さぶってその人の人生に影響を与えられる仕事です。単純に「面白かった」とポジティブな感情を得て映画館や劇場をあとにする人もいれば、たとえば史実を扱った作品に触れて「歴史の裏にこんな人たちがいたんだ」と歴史上の事件や人物に興味関心を持つ人もいます。

 お芝居を「観る前」と「観た後」で観た人の人生をほんの少しでも変えられたらいいなと思います。配信も同じですね。私の配信を観た人の人生に少しでも何かをプラスできれば幸せです。別に「人生を変えるほどの何か」を与える必要はなくて「ほんの少し元気が出た」というのでもいいんです。人をそんな気持ちにさせることができるならお芝居をやる理由には充分なんじゃないかなと思います。

――Vtuberと「女優」という個性をどう結びつけていきますか?

 女優のお仕事を通じて日本の劇壇は新規のお客さんを界隈の外から呼び込まなければならない段階なんじゃないかとずっと考えていました。映画館も劇場もコロナ禍の影響で今や存続すら危ぶまれる状況です。

 でも、そんなときだからこそ家にいながらお芝居を身近に感じられるようなイベントを「Vtuberの女優」として発信していきたいと思います。ゆくゆくは「現役女優のVtuberなら雪藍だ」とご指名を受けるようになれたら素敵ですね。

活動を振り返って

――これまでの活動を振り返っていかがですか?

 二ヶ月前に女優であることを告白してから「生まれ変わった」のが今の私です。ようやくやりたいことを自覚して「私」が私らしく楽しく活動できるようになりました。そのぶん大変なことも増えましたけれど、女優という芯があるからどんな困難にも真っ直ぐぶつかっていくことができます。

 迷走期は迷走期で「女優じゃない自分に何ができるのか」を考えるよい機会になりました。結局は一周回って「やっぱり自分の核はお芝居だ」というところに落ち着いたのですが、半年間あれだけ悩んで迷走し続けたのが今の女優路線への揺るぎない自信に繋がったように思えます。

――今現在取り組んでいることについて教えてください。

 現役女優のVtuberとして「歌」や「演技」など自分の経験を活かしたコンテンツの発信に力を入れています。真面目な「講座」や普段の撮影の「裏話」だけではなく、演技経験のある「俳優」「声優」を集めたバラエティ番組や「クリエイター」との対談番組も活発に配信中です。

 即興演劇バラエティ番組『AD-Lib-V』は「お芝居やVTuberをより身近に楽しめるものに」をコンセプトに俳優Vtuberや声優Vtuberが視聴者からの「お題」に沿った「3分間の即興芝居」をお見せする定期企画です。
「巨大冷凍庫に閉じ込められて」
「魔王がはたらくコンビニで」
「メイド喫茶の控え室で」
「動く点pの世界で(!?)」

 など様々な……本当に様々な「お題」に苦しめられながら演技派Vtuberがたのしくお芝居をしています。ぜひ実際に配信を観て「即興(アドリブ)」だからこそのライヴ感をお楽しみいただければと思います。


 対談バラエティ番組『小料理屋雪隠れ』は、ゲストのクリエイターのタレント性を私が深堀りして視聴者に広めていく対談番組です。
「催眠音声の製作者」
「漫画家」

 など多種多様な専門分野をお持ちのクリエイターをゲストにお呼びして対談形式でご紹介していきます。貴重なお話が聞けるのはもちろん、配信中に視聴者と一緒に作品を作ったりもしていく予定なので、この記事をお読みの読者のみなさんにもぜひご参加願いたいですね。


 あとは、前回のインタビューでも取り上げられた「犯罪学教室のかなえ先生」とのラジオも配信中です。

 深夜ラジオのノリでゆるく聞けると評判なので、もしお暇ならBGM代わりにでも配信を流していただけると嬉しいですね。Twitterでその回のテーマに沿ったマシュマロも募集しています。読者のみなさんからの応募をお待ちしています。

 他にも「現役女優」の持ち味を生かした新企画をたくさん準備中なので、よろしければTwitterをフォローして情報の公開をお待ちください!

――人生は自己の完成を目指す旅です。雪藍さんはこれからどこへ向かいますか?

 開拓者精神を忘れずつねに情熱のおもむくがまま新天地を目指して全力で走っていきます!

――本日は素敵なお話をありがとうございました。

 ありがとうございました!


雪藍

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現役女優Vtuber。

即興演劇バラエティ番組『AD-Lib-V』を始めとする各企画の主催を筆頭に、クリエイターとの対談、歌、朗読、ゲーム配信、雑談、と多種多様な分野で活躍中。

あなたはおいしいコーヒーを飲んでもいいし、たのしい歌を聴いてもいいし、わたしをサポートしてもいい。