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①辻村深月『傲慢と善良』~恋愛相手を探すこと≠婚活~


1.あらすじ

ひよっこオススメ本紹介です。記念すべき一冊目は、辻村深月さんの『傲慢と善良』です。本屋さんで平積みになっていたり、藤ヶ谷太輔×奈緒のW主演の映画が公開予定だったりと、話題の作品なので目にしたことがある方も多いかもしれません。

テーマが恋愛や婚活なのでポップな作品と思いきや、人の傲慢さをえぐって刺しまくってくる作品です。

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》

文庫版あらすじ


2.私と辻村深月作品

ここで一度、辻村深月作品の思い出を紹介させてください。私が初めて辻村深月さんの本は、小五のときの『凍りのくじら』でした。

それまではずっと小学生向けの講談社青い鳥文庫を読みまくっていたのですが、何を思ったか大人向けの講談社文庫を読んでみたくなり、そこで手に取ったものが『凍りのくじら』です。

主人公が高校生で思春期のリアルな感覚が書かれていたり、作品内に『ドラえもん』のひみつ道具の話が登場したりと、まだ小さいけれど背伸びをしたい当時の私は夢中になって読みました。辻村深月作品は登場人物や世界観がリンクしているものも多く、ある種のシリーズもののような感覚でズルズル引きずり込まれていきました。

児童向けの本→大人向けの本の移行が自分の中でうまくいったのは、辻村さんのおかげです。みなさんは移行のきっかけになった本、何かありますか?


3.ひよっこ的感想

先述の『凍りのくじら』や本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』が全世代に向けた物語ならば、『傲慢と善良』は圧倒的に大人向けの物語です。

私もまだ学生の身なので、本当にこの物語が刺さるのはもう少し後かもしれません。結婚も強く意識しているわけではないので。

誰かと一緒に生きたい。自分と生きてくれる誰かと、家庭を持ちたい。

『傲慢と善良』p.69

私が好きな場面は、主人公の架が、失踪した婚約者・真実の地元にあるショッピングモールにひとりで行く場面です。家族の幸せの象徴のようなモールにぽつんとたたずみ、架は「真実とここに来たかった」と感じます。

地方の巨大なショッピングモールも、そこで売られる服も、それを身に着けたぼんやりした印象の家族連れも、うるさい子どもたちも、かつての架ならば、むしろ、勘弁してほしい、と思っていたかもしれない。あるいは、自分には無縁のものだと気にもしなかったか。けれど、今、架は思っていた。真実と、ここに来たかった、と。このぼんやりとした親子連れの中に、オレは、君と一緒に溶け込みたかったのだ、と。

『傲慢と善良』p.234

地元のショッピングモールって、普段から日常を共にしている人と行く場所ですよね。恋人同士で行くには向かないけれど、家族で行くにはぴったりの場所。ファミレスとかもそうでしょうか。

ショッピングモールとかファミレスで日常の幸せを分かち合える人と出会いたい~!と、この場面を読んだとき心底感じました。

本の中にあった、恋愛相手を探すことと婚活は別という言葉も印象に残っています。婚活に必要なものは、「今後自分の生活をどうしたいかのビジョン」であるとのこと。ただやみくもにピンとくる相手を探すだけではダメなんですね。結婚は恋愛の延長線上にあるものだと認識していたので、ちょっとどきりとしました。

・恋愛と婚活の違い
・「恋愛的にピンとこない」という感覚
・無意識のうちに相手につける恋愛対象としての点数

これらのことが言語化されていて、圧倒されました。

結婚を今よりももっと真剣に考え始めたとき、改めて読みたい一冊です。でも、大学生のうちに最初に読めてよかった一冊でもあります。みなさんの本棚にもぜひどうぞ。





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