見出し画像

ホンモノの名刺

昨日は近くの大学で就活セミナー。
おそらく自宅から2番目に近い大学だ。
先日の札幌のような遠方があるかと思えば、このご近所ぶり。
そうやって世界はうまくバランスを取っているのだろう。

特色のある私立大学。
キャンパス内は留学生であふれかえっている。
飛び交う言語はもはや何語か分からない。
世界は英語と中国語だけで成り立っているわけではないのだ。

セミナー前に、担当教授の研究室を訪れる。
独房のような狭い部屋に大量の本、いい具合の根城だ。

セミナーを手配する企業から支給された名刺を渡す。
そこに書かれているのは、決して僕には繋がらない東京の連絡先。
名刺交換の慣習に穴を開けないためだけの、まったく無意味な紙きれだ。

教授と講演の段取りを打合せ、要点を再確認する。
就活に臨む学生の現状、足りないもの、今日伝えたいこと。
よし、ここを重点的に話そう。

昨日は2限と3限の担当。
1コマ目を全力で終えた後、学生に納得の表情が浮かぶのを見て安堵する。

合間の昼休み、担当教授と雑談する。
学内の進路支援委員長を務める教授とは、若年層に向ける目線が同じだ。
若者支援の話でひとしきり盛り上がる。

話題は移ろい、大学の話、研究の話になったところである言葉が耳に残る。
ん? いま淡路島とおっしゃいました? え? 地域活性化?
自分と共通する話が、イモ掘りのようにズルズルと出てくる。
え、(へんいち)さん、愛媛で村おこし? 最後は淡路島で地域循環?
2コマ目がさらに絶好調の講演となったことはいうまでもない。

僕は帰り際、自分のホンモノの名刺を教授に渡した。
——これ、この場では渡してはいけないことになってるんですけど。
「ぜひいただきたいので、こっそり受け取りますね」

(2024/6/6記)

サポートなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!