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やっぱり時計は常に正しく、が正しい

ずっと前、うちの時計が狂っている、いや、わざと狂わせていると書いた。

小さな子供がいるうちでよくやる、わざと少し進ませておいて時間に余裕を作るあの戦法だ。
子供が余裕をもって小学校に行けるように5分だけ進ませていたものが、10分進み、上の記事の時点では13分も進んでいた。
もう小学生もいないのに。

どんどん進みがちなその時計の習性をすっかり会得し、誰も時計を正そうとはしない。
13分はその後20分になり、果ては25分に。
12:25を指していても、正しくは12:00ちょうど。
13:00を指していても、正しくは12:35だ。

12:00の電車に乗るには11:55に家を出ればいいのだが、瞬時に脳内変換。
11:55ということは家の時計では12:20。
12:20に家を出れば12:00の電車に間に合う、が家の常識だった。
慣れればさしたる苦痛もない。

ややこしいのは炊飯器の時計がまた独自に狂っていることだった。
家の中は狂った時間が支配しているので、当然炊飯器もそれに合わせる。
だが、おっとりした炊飯器はそこから20分遅れ、でもタイマーで合わせた時刻よりなぜか10分早く炊き上がる。
もう何時にセットすればよいか、誰にも分からない。

そして家の時計が止まった。

諦めて脚立を出し、壁から時計を外して電池を替える。
針は、迷うことなくあっさり正しい時刻に合わせた。
10年来の狂った時計はついに世間と同じ時間を刻みはじめた。
どうやら時計が20分、25分と進むのを許していたのは、なんだかんだいって脚立を出すのが面倒だっただけかもしれない。

時計が正しくなった翌日。
僕は電車に乗り遅れた。

――あかん、乗り遅れたわ。
そんなLINEを家族に入れた。

しばらくして家族からもLINE。
――うわ、電車乗り遅れた。

家中、大混乱。
やっぱり時計は常に正しく、が正しい。

(2023/10/25記)

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