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マイナス11歳、ちょうどいいやん

いつの頃からだろう、実年齢と見た目が乖離しはじめたのは。
当然、実年齢は1年ごと確実に重ねるが、見た目は2年だか3年に1歳ペース、それどころかしばらく止まっている時もあったようだ。

30歳くらいまでは、たまに童顔と言われることはあっても、若いと言われることなどなかった。
35歳頃にインターンの担当となり、20歳前後の大学生との時間が急に増え、若いエネルギーを浴びるようになったのがきっかけだろうか。

女子学生と2人で百貨店の店頭に立っていた時、百貨店の担当者が何かの相談でやって来たが、僕には見向きもせず話はすべて学生に。
え? こっち! と思って横でぴょんぴょん跳びはねてみたが視界に入らないらしく、話し終えたらそのまま立ち去ってしまった。
後で聞いてみると、学生が社員、僕がバイトに見えていたらしい。
その頃すでに、実年齢と見た目の乖離が始まっていたのだ。

しばらくは実年齢マイナス5歳くらいの年齢を言われることが多かったが、そのマイナス幅がぐんぐん大きくなっていく。
職場で年齢不詳と言われ、高速バスの乗車時に学生証の提示を求められたのが40歳を過ぎた頃。
実年齢の半分の見た目っていったい…

最大で25歳若く見られた。
もはや威厳も貫禄も風格も、まとめてどこかに忘れてきたらしい。
実年齢を聞いた人の多くが、今年いちばんの驚きと言う。
僕のことを10歳ほど年上の人と思っていた学生が、実は自分の父親より年上だったと知ってショックを受けたりもしていた。
さすがにそれは少し考えてしまう。

このままいけばマイナス30歳、40歳と不気味ゾーンに突入するのではないかと心配したりもしたが、さすがにそれはなかった。
次第に見た目が実年齢を追いかけはじめ、50歳を前にしてついにマイナス5歳くらいと言われるまでに追いついてきた。
ふん、これがリバウンドというやつか? ここからの転落は一気なのか?

10月から島で他社の事務所に間借りして勤務しているが、昨日そこの社長に廊下で呼びとめられた。

「へんいちさん、いくつ?」
――51です。
「え! 若い!」
――いくつに見えてました?
「40ぴったりくらいかと思ってた」

うふふ。

その会社の総務では、僕は「若い男の人」と言われているそうだ。

やほほ。

新入社員からも、ありえない肌つやと言われているが、20代と比べれば疲れた肌なのはもちろんのこと。
ぱっと見、「くたびれた若者」と思われているということだろうか。
それは少々複雑ながら、でも実年齢を聞いてから「元気な年寄り」と思われるのであればいいことかもしれない。

マイナス11歳、ちょうどいいやん。

(2021/10/21記)

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