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え? なに、引き立て役?

K君とは幼稚園で大の仲よしだった。
彼の家に泊まりに行ったり、僕の家にも彼が遊びに来たり。
K君の家はシュッとして洗練され、3軒長屋のボロアパートに住んでいた僕は、そんな彼に遊びに来てもらうことが子供心に恥ずかしかった。

K君は小2になって突然転校することになった。
転校の日、校庭でK君は学年中の女子にわぁっと囲まれる。
そこで初めて、K君が女子からモテモテだったことを知る。
女子の輪にもまれながらも相好崩さずツンとしたままのK君を、僕は少し離れた場からただ眺めていた。

小5、小6で仲のよかったT君は、急に背が伸びて大人びた印象にはなったものの、中身は勉強が苦手でやんちゃな少年のままだった。
僕に人生初のあだなをつけたのも彼だし、僕のおでこが広すぎると定規で測ったのも彼だ。

ある日、女子と話す中でT君が学年イチでモテることを知る。
また、か。
彼をかっこいいとか優しいとかの目で見たことがなく、僕にとってはただのやんちゃな少年だったから、ただ驚いた。

小4でS君が転校してきた。
公立ではなかったので転入というのは極めて稀で、小学6年間でそのS君ただ1人ではなかっただろうか。
S君は引っ越して来たわけでもないのに100mと離れていない隣の小学校から転入してきたのだ。
全校生が電車に乗って通学してくるなか、学校から家が見えそうなほど近くに住んでいたS君はそれだけで珍しかった。

中学になってS君と同じクラスになった。
寄ってく?と訊かれ、興味のあった僕は学校帰りについていったが、そこは「お好み焼き・S」と書かれた傾きそうなバラックだった。
K君もT君もだが、お金持ちの社長令嬢や開業医のボンボンばかりの同級生の中、僕がS君に強い親近感を覚えたのはいうまでもない。
仲よくなるのに時間はかからなかった。
S君も僕に同じにおいを嗅ぎとったのかもしれない。

部活も同じ陸上部だったし、帰りに駅の噴水に座って恋バナに花を咲かせたり立ち食いのきしめんを食べたりして、毎日が楽しかった。
ハイレベルでハイスペックの友達に少々疲れていた僕は、自分と同じレベルだろう友をやっと見つけた思いだった。
さすがにこいつはモテモテにはならないだろう。

しかし、いやそして彼もまた、そう、またしても相当にモテた。

え? なに、引き立て役?
僕は常にもっともモテるヤツのそばにいた。
モテるヤツに好かれるのか、モテるヤツを好くのか。

幼少期にほぼ女子として育てられた僕は、もしかすると誰よりも男子を見る目を持っていたのかもしれない。

(2023/7/22記)

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