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数年間他人の口を見ずに過ごした反動は大きい

皆がマスクを着けるようになって早や数年。
果たして本当にマスクに絶大な効果があるものか、さらには今もなおマスクを続けなければならない状況なのか、素人にはよく分からない。

ただ、社会的常識としてすっかり定着したのは確かだ。
感染状況が小康状態だからか最近マスクのない人が増えているが、一時的にせよ常識だからマスクを着けない人に対する目は当然厳しい。

僕はそんな人を見て、マスク着けろよ!とまでは思わない。
思わないが、人の口を見るのがどうもためらわれるようになった。
口が感染源にしか見えなくなり、嫌悪感が先立つのだ。

あそこからウイルスが飛び出して飛沫として広がる…
神聖な口をそのような目で見てしまうようになったのがとても残念だ。

数年間他人の口を見ずに過ごした反動は大きい。
久々に口を見るとギョッとしてしまうのだ。

***

大学の頃、血気盛んな男子たちは、女子の話で盛り上がる。
スケベと言われようとも、やはり裸の話だって出る。
裸はふだん隠されているから見たくてしょうがなくなるのだし、隠している下着すら見たい対象にまで崇め祀られるのだと。

ある友人が言った。
もし法律が変わって、小指を隠さなくてはならなくなったらどうなる?
公衆の面前で小指を晒せば公然わいせつの罪になるのだとしたら、と。

たぶんそれが数年も続けば、あの子の小指が見たいとギラギラするだろう。
何かの拍子で小指を見てしまったときには、興奮して鼻血すら流すかも。
グラビアには下着を着けた小指が並び、袋とじには無修正の小指が…
そんな話をしてゲラゲラ笑いながら、確かにそうだろうと思った。

***

マスクに隠された口は今は感染源としての扱いだから、魅力はない。
しかし今のこの感染症がスペイン風邪なみに過去の語り草になったら?
それでもなお、皆が社会的常識としてマスクを着け続けていたら?

ランチでマスクを外すのをドキドキしながら見るのだろうか。
口を見たら、キュンキュンするのだろうか。

口が魅力あるものに返り咲くことをただただ願うばかりだ。

(2022/4/26記)

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