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心の中でそっとがんばってと言うしかなかった

生まれつきニオイが分からないという人と仕事をする機会があった。
若い女性だ。

いたってふつうにしていたので、そんなこととはつゆ知らず、たまたまそんな話になって、え!?となったのだ。
しかし、本人はどこ吹く風、タバコを吸う人が前にいてもまったく臭わないので得だとか、カキ氷はすべて同じ味になるのでその日の気分で色で選ぶとか、サバサバとおもしろおかしく聞かせてくれた。

なるほどそれならそんなに問題ないかと思いかけた矢先、汗をたっぷりかいたときに自分のニオイに気づけない、それがいちばんツラいんだと語ってくれ、若い女性にとってそれはそれは大きな問題なんだろうと思った。

出てきたマイナス面は結局その話だけで、生まれつきだから苦しんだこともないとは言う。
が、幼少期にも思春期にもきっといろんなツラさがあっただろうから、それらを乗り越えて今日を迎えたことは想像に難くない。
明るくふるまうその気丈さも生まれついてのものなのか。

陳腐な言葉を口にはできないから、心の中でそっとがんばってと言うしかなかった。

(2017/7/27記)

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